家電メーカー お客様相談室「繁閑差平準化への挑戦」

プロジェクト情報
- 業種:製造業(家電メーカー)
- 対応部署:お客様相談室
- 資本金:1億円
- 創業:50年以上
目次
- 1 抱えていた課題
- 2 解決に向けた取り組み
- 3 ご提供したソリューション
- 4 導入後の成果と今後の展望
抱えていた課題
お客様相談室では、オペレーターが対応履歴(ACW: After Call Work)を記録する作業に多くの時間を費やしており、オペレーター数の増加が難しい現状では、これ以上の対応件数を増やすことが困難でした。また、記録の正確性や均一性がオペレーターのスキルに依存しており、記録の抜けや誤りが後続の対応に影響を与えるリスクも抱えていました。
このような状況に加え、以下のような外部環境の変化も課題解決を後押しする背景となりました。
外的要因
・労働人口の減少や人材確保が難しくなる中、AIによる自動化・省力化に対する社会的なニーズが高まっています。
・オペレーターの負担を減らし、応対履歴作成業務を自動化することで、業務効率化と人的コストの削減が求められています。
・音声認識や生成AI(LLM)の技術が進化し、より高品質で実用的なソリューションが市場に登場しています。
内的要因
・ACWの作業時間が長く、現行のオペレーター数では対応件数の増加が困難でした。
・記録の抜けや誤りを減らし、後続の問い合わせやトラブル対応をよりスムーズに行う必要がありました。
・応対内容の記録にばらつきがあり、品質の均一化が課題となっていました。
製品の複雑性
A社の製品は種類が非常に多く、さらに販売チャネルごとに異なる製品コードが存在するため、顧客からの問い合わせ時に製品を特定するまでに時間がかかるという課題もありました。これはオペレーターの対応時間増加だけでなく、顧客のストレスにもつながっていました。
これらの複合的な要因により、A社のお客様相談室は、オペレーターの負荷増大、顧客満足度の低下、そしてそれに伴うビジネス機会の損失という悪循環に陥りかねない状況でした。
解決に向けた取り組み
今回の取り組みの目的は、AIの活用によってACWの作業時間を大幅に削減することでした。
・業務効率化: 音声認識によって通話内容が自動でテキスト化され、要約AIが応対履歴を自動作成することで、オペレーターによる手入力作業を大幅に削減する。
・記録品質の均一化: AIによる自動要約は、オペレーターの主観やスキルに左右されず、記録の品質を均一化する。
・正確性の向上: 重要な情報の抜け漏れを防止し、正確な記録によってコンプライアンス強化にも貢献する。
・顧客対応の質の向上: AIが要約したデータを活用することで、FAQの抽出やVOC(顧客の声)分析が効率化され、顧客対応の質そのものを向上させる。
この目的達成のため、私たちは以下の取り組みを進めました。
・POCの実施: 認識精度の確認のため、実環境でのPoC(概念実証)を実施しました。
・KPIの設定: PoCの結果に基づき、具体的な削減効果を測定するためのKPI(重要業績評価指標)を設定しました。
・プロンプト作成: 業務内容に合わせて、AIが最適な要約を作成するためのプロンプトを作成しました。
・辞書登録: 業務で頻繁に利用する特有の固有名詞を辞書に登録し、認識精度を向上させました。
ご提供したソリューション
私たちは、お客様の課題を解決するため、以下のソリューションとサポートを提供しました。
コンサルティング
・POCの実施: 実際の業務環境でのPoCを通して、AIの有効性を検証しました。
・KPIの策定: 導入後の効果を明確にするため、具体的なKPIを共に策定しました。
システム導入
・音声認識と自動要約: 音声認識システム「デコールCC.CRM」を導入し、通話内容を自動でテキスト化しました。また、生成AIによる自動要約機能とFAQレコメンド機能を活用し、オペレーターの業務を効率化しました。
サポート
・チューニング: 認識率をさらに高めるため、継続的なチューニングを実施しました。
・分析: 応対品質スコアを分析し、より質の高い応対を実現するための改善提案を行いました。
導入後の成果と今後の展望
主な成果
今回の取り組みにより、お客様相談室では目覚ましい成果が見られました。ACWの平均作業時間が短縮され、月間で二桁時間近い削減効果が生まれました。将来的には、ACW時間が半減することも期待されています。ACWの短縮によって、オペレーター一人あたりの平均処理件数(CPH)が増加し、応答率も大幅に向上しました。これにより、人員配置の最適化やコスト削減も実現しています。
今後の展望
お客様からは、「テキスト化されたデータを活用し、応対品質のモニタリングや分析を自動化することで、サービス向上やトラブル対応をさらに迅速化していきたい」という、今後の展望を共有いただきました。私たちは、引き続きお客様のビジネス成長をサポートしていきま