GrokとMicrosoft Officeの連携は何を生み出すのか?進化するExcelと今後の課題

Microsoftは、Word・Excel・PowerPointのCopilotでGrokを利用できるプレビュー版を発表しました。Excelでは、1つのセルに複数の値を保持し、個別に扱えるListsも登場しています。AIへ作業を依頼する方法と、作業の対象となるデータの持ち方が同時に変わりつつあります。一方、セル内に多くの値をまとめれば、表の内容や集計の前提が分かりにくくなる懸念もあります。Officeの進化には、作業の自動化とともに、人が結果を理解し、確認できる仕組みが求められます。

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Grokとの連携でOfficeはどう変わるのか

OfficeにAIを組み込むと、文章の作成や表の編集を自然な言葉で依頼できるようになります。Grokが追加されることで、OfficeのCopilotで利用できるAIモデルの種類が増えます。その意味を考えるうえでは、モデルの回答能力に加え、回答を実際の資料へ反映し、担当者同士で確認するまでの作業にも目を向ける必要があります。AIに依頼した内容をOfficeの資料へ反映できるようになると、資料を仕上げる手順も変わっていきます。

Copilotを通じてGrokを使う

Microsoftは2026年9月、Word・Excel・PowerPointのCopilotにGrokを追加すると発表しました。提供は、新機能を先行して試すFrontier Programのプレビューから始まります。利用には管理者による有効化が必要で、初期設定は無効です。利用するモデルを組織が管理できるようにしながら、Officeで使えるモデルの種類を増やす仕組みです。

この構成では、WordやExcelが資料を編集するアプリ、CopilotがAIへ作業を依頼するための窓口、Grokがその処理を担うモデルという関係になります。利用者にとっては、普段使っているアプリでAIの支援を受けられる点が重要です。別のサービスで回答を得てから資料へ移す場合と比べ、AIへの依頼から資料の編集までを続けて行いやすくなると考えられます。資料を見ながら依頼の内容を調整し、結果を確かめる作業の進め方も変わっていきます。

Microsoftは、複数のAIモデルをCopilotで提供する方針を示しています。Grokの追加も、その方針に沿ったものです。組織は、利用するモデルの範囲を決めたうえで、対象の業務で必要とする結果が得られるかを確かめることになります。新しいモデルを採用する際には、担当者が求める出力を得られるか、既存の資料や作業の進め方に合うかを確認できます。利用できるモデルが増えれば、業務に応じてどのモデルをどう使うかを検討できます。

複数のモデルを併用する意味

外部のAIサービスで作成した文章をWordへ移す場合、内容を確認して貼り付け、前後の文章に合わせて整える作業が生じます。Excelでの処理についてAIから説明を受けた場合も、提案された処理を自分の表へ適用し、結果を確かめる手順が残ります。AIから適切な回答が得られても、それだけで資料が完成するとは限りません。回答を資料へ反映し、元の内容に合わせて整える時間まで含めて、業務の負担を考える必要があります。

Officeの編集環境で複数のモデルを利用できれば、共通の操作環境で、それぞれのモデルが業務に合っているかを検討できます。文章を作成する場合には、内容が正しいかに加え、依頼した論旨や表現が維持されているかも確認します。表の処理では、集計の条件や結果を担当者が説明できるかも重要です。モデルを評価する際には、回答の内容に加え、資料を完成させて業務で利用するまでの作業も含めて確認するのが適切です。

モデルごとの効果を比較する際には、作業の精度、所要時間、確認の負担を合わせて評価する必要があります。 生成が速くても、意図に合わず修正を繰り返すなら、その速さを十分に活かせません。逆に、担当者が成果物を少し修正するだけで利用でき、次の作業へ進めるなら、業務上の価値は高まります。Grokを利用する場合も、実際に作業を依頼し、得られた成果物が業務で求める内容に合っているかを確かめることが求められます。利用するモデルを検討する際には、仕事を完了するまでの負担にも目を向けるべきでしょう。

AIとOfficeを組み合わせる

Microsoftは9月25日、Copilot内でWord・Excel・PowerPointのファイルを作成・更新するOffice in Copilotを発表しました。Officeアプリと同期し、対話しながら編集や共同作業を続ける方向を示しています。AIの出力を受け取ってから資料を仕上げるまでを、同じ環境で進められるようにする動きと捉えられます。AIへの依頼後も、同じ資料の内容を確かめ、必要な修正を加える流れが重視されています。

仕事で使う資料には、作成した人だけでなく、確認する人や引き継ぐ人も関わります。文章が生成された後に内容を調整し、表が作られた後に集計の前提を確認するなど、完成に至るまでには複数の判断があります。編集できるファイルを共有し、同じ資料を基に作業を続けられる環境は、その判断を支える役割を持ちます。AIの支援を受けた成果物も、担当者同士で確認し、業務に合わせて仕上げる過程が重要になります。

Grokとの連携を含むOfficeの価値は、複数のAIモデルを利用しながら、同じ環境で資料の編集や共有を進められる点にあります。モデルに依頼するところから、出力を資料へ反映し、関係者が利用できる状態にするところまでが一続きになります。Microsoftの方向性からは、AIを使って成果物を作成し、編集を重ねて完成させるまでの作業をつなげようとする意図が読み取れます。利用者にとっても、モデルを選ぶ機会がどれだけ増えるか、仕事がどれだけ進めやすくなるかを併せて評価する視点が大切です。

ListsはExcelの何を変えるのか

ExcelのListsは、1つのセルに複数の値を保持し、それぞれを処理できる機能です。担当者や対象製品を1セルにまとめながら、個別の値として扱えるようになります。ただし、表の行数や列数を抑えられることが、そのまま確認や集計のしやすさにつながるとは限りません。どのような表で便利になり、どのような場面で扱いにくくなるのかを、データの持ち方から考える必要があります。

複数の値を1つのセルで扱える

従来も、担当者欄に「田中、佐藤、鈴木」と入力することはできました。しかし、そのままでは3人の名前を含む1つの文字列です。担当者を個別に集計する場合には、文字列からそれぞれの名前を取り出す処理などが求められます。Listsでは、入力時のまとまりを保って複数の値を1セルに表示しながら、それぞれを個別に識別して絞り込みや計算に利用できます。

Microsoftは2026年9月24日、Listsとともにセル内配列と入れ子の配列を発表しました。配列とは複数の値をまとめたもので、入れ子の配列はその中に別の配列を含む構造です。これらはWindows・MacのBeta Channel向けプレビューとして提供されています。また、配列を扱うためのFLATTEN、HAS、HASANY、HASALLという4つの関数も紹介されました。FLATTENは入れ子を整理する関数で、複数の値を保持する仕組みと、それを処理する手段が併せて拡張されています。

例えば、1案件を1行にまとめ、複数の担当者を同じセルに保持する設計が考えられます。案件の情報と担当者の一覧をまとめて確認したい場合には、こうした形式が役立つ可能性があります。ただし、担当者ごとの確認や集計を頻繁に行うなら、どの形式が扱いやすいかを別途考える必要があります。入力する場面では便利でも、後から別の担当者が集計する際に処理が増えることもあります。入力する人と利用する人の両方にとって、扱いやすい表を設計することが重要です。

利便性と負担の増加

1セルに多くの値をまとめられれば、表の行数や列数を抑えやすくなります。一方、値が多いセルでは、全内容を一覧で確認しにくくなる可能性があります。担当者名の入力漏れや重複を確かめる際に、表全体を眺めるだけでは判断しづらくなる可能性があります。行や列が少なく見えても、確認すべき項目まで少なくなるわけではありません。表を簡潔に見せる工夫と、中身を確認しやすくする工夫の両方が求められます。

集計する際には、何の件数や人数を求めるのかを明確にする必要があります。例えば、案件Aの担当者が田中・佐藤、案件Bの担当者が佐藤・鈴木であれば、案件数は2件、担当者の延べ人数は4人、重複を除いた人数は3人です。どの数字を求めるかによって、処理の目的が異なります。この違いは従来の表でも生じますが、セル内に複数の値がある形式では、見えているセルの数と数えたい項目の数が一致しません。「担当者数」という見出しだけでは、延べ人数なのか、重複を除いた人数なのかを判断できない場合があります。集計の前提を共有せずに処理を任せれば、人に任せる場合もAIに依頼する場合も、意図と異なる結果が生じる可能性があります。

さらに、複数の値を1セルにまとめる表と、値ごとに行を分ける表が混在すれば、共有や再利用のために形式を変換する作業が生じる場合があります。プレビュー時点では、ピボットテーブルやPower Queryに配列を扱う制約があり、グラフや検索と置換にも制約があります。既存の集計やデータ連携に組み込む際には、一連の処理を従来どおり行えるかを確かめる必要があります。Listsは入力の選択肢を広げる一方、表の設計や確認を複雑にする可能性もあります。 入力のしやすさだけで形式を決めると、その後の集計や引き継ぎの負担を見落としかねません。

データ構造の進化とAI

Grokの追加とListsの登場は、AIモデルと処理対象という2つの面からOfficeを変える動きとして捉えられます。Grokとの連携によって、Officeで利用できるモデルの種類が増えます。Listsによって、Excelのセル内で扱えるデータ構造の種類も増えます。AIへ任せる処理が高度になるとともに、処理しやすい形でデータを保持できるようになれば、作業の進め方にも影響します。

名前を並べた文字列から個々の担当者名を取り出す場合には、どこで区切るかを判断し、個別の値へ分解する手順が必要になります。最初から個別の値として保持されていれば、文字列を分解する作業を減らせる可能性があります。AIが処理を組み立てる場合にも、元のデータがどのように区別されているかは重要です。ただし、担当者を個別に識別できても、何を集計すべきかは別に検討する必要があります。値の構造が明確になっても、案件数を知りたいのか、担当者の人数を知りたいのかという目的は、利用者が伝える必要があります。

Listsを使うかどうかは、入力、閲覧、集計、受け渡しまで含めて判断するのが適切です。案件単位で情報を読む際には、担当者を1セルにまとめる方が分かりやすい場合があります。一方、担当者単位の処理では、個々の値を確認しやすい形が求められます。新しいデータ構造を採用する際には、どの作業を簡単にし、どの作業に変換や確認が必要になるかを見極めることが重要です。AIの操作能力が高まるほど、処理の対象と目的が分かる表を設計することが重要になります。

Officeの課題と今後の方向性

AIが操作を代行できる範囲が広がっても、データの意味や集計の前提を確かめる仕事は残ります。Listsのような機能によって表の構造が複雑になれば、操作を簡単にするだけでは確認の負担を解消できません。今後のOfficeには、AIへ作業を委任する仕組みと、利用者が結果を理解し、必要に応じて修正できる仕組みを併せて整えることが求められます。

データの意味と集計の前提を共有する

表に数値や項目名が記載されていても、それだけで意味が明確になるとは限りません。例えば「売上」という見出しがあっても、対象期間、単位、返品の扱いによって集計結果は変わります。こうした前提を伝えずに表を別の担当者へ渡すと、同じ数字を見ていても異なる解釈が生じる可能性があります。AIへ処理を依頼する場合にも、項目名だけで意図が伝わると考えず、何を対象にどのような結果を求めるかを明確にすることが重要です。

Listsで個別の値を識別できるようになっても、何をどう集計するかを判断する必要は残ります。担当者の延べ人数を求める場合と、重複を除いた人数を求める場合では、同じデータを使っても、集計結果が表す意味は異なります。処理そのものをAIへ任せられても、結果を何に使うかによって、設定すべき集計条件が変わります。依頼する人と確認する人が、その条件を共有する必要があります。表の構造と、業務に合わせて集計条件を決めた理由を説明できれば、結果が意図に合っているかを確かめやすくなります。

共有する表では、各項目の意味を明確にし、入力の形式や集計の単位を統一しましょう。複数の値を1セルにまとめる場合も、その形式を選んだ理由や、集計などでの使い方が分かれば、引き継ぎや再利用がしやすくなります。個々の担当者が入力しやすい形式を選ぶだけでは、別の人が使う際に解釈や変換の負担が生じる場合があります。入力から確認、集計までの流れに合わせて表を設計すれば、新しい機能を業務で活かしやすくなります。

AIの変更を引き継げる環境

MicrosoftはOffice in Copilotの発表で、Excelの変更箇所と変更理由を確認できる機能を紹介しています。AIを業務に組み込むには、編集後の結果に加え、どこをどのように変更したかが分かることも重要です。表の処理では、数式が作成されているかだけでなく、参照範囲が意図に合うか、集計の条件が保たれているかを確認する必要があります。変更箇所や理由が分かれば、担当者はこうした判断をしやすくなります。

確認を終えた資料を別の担当者に引き継ぐ際、処理を行った理由まで伝われば、その担当者も作業を進めやすくなります。元の担当者がAIに何を依頼したかを知らなくても、表の項目や集計条件から結果の意味が分かる資料が望まれます。Listsで複数の値をまとめる形式を選んだ理由や、重複をどのように扱ったかが分からなければ、変更のたびに元の意図を確認する負担が生じます。AIが作った資料も、担当者が継続して使えるように整える必要があります。

AIの効果を評価する際には、資料の作成だけでなく、確認・修正・引き継ぎにかかる時間も確認しましょう。 表を短時間で作成できても、集計の前提を調べ直す時間が増えれば、業務全体の改善につながりにくくなります。変更内容やその目的を理解でき、次の担当者も判断の根拠を確認できれば、作成後の負担を抑えやすくなります。こうした観点から、AIへの依頼を簡単にする機能とともに、結果を点検し、再利用するための情報を分かりやすく示す機能も重視すべきです。

作業の委任が進むOffice

Microsoftは、Office in Copilotに加え、作業を委任するCoworkや、継続的な作業を担うAutopilotを発表しています。Frontierでの順次展開や非公開プレビューを通じて、対話に加えて実際の作業も担うよう、利用範囲を広げる方針を示しています。また、AIの利用費用を管理する仕組みも発表しました。今後のOfficeでは、資料を作るための操作を個別に行うだけでなく、複数の作業をまとめて依頼する方法も使うようになると考えられます。

作業をまとめて任せるようになるほど、利用者は途中の操作をすべて把握することが難しくなります。そのため、作業の結果を見て目的に合うかを判断し、必要な部分を修正できる仕組みが重要になります。同時に、AIが扱える資料や操作の範囲を決め、変更の経緯と利用費用を確認することも求められます。自動化する対象を増やす際には、既存の集計や受け渡しが続けられるか、人が確認する際に必要な情報が残るかを併せて考える必要があります。

Officeの機能が増えることで、利用者が新しい処理方法を理解する負担も増える可能性があります。Listsは、その問題を具体的に考えるきっかけになります。複数の値を1セルに保持できるようになれば、入力や表示の選択肢は広がりますが、表の設計と集計の目的を共有する重要性も高まります。AIへ任せられる範囲を広げる一方で、人がデータの構造と処理結果を理解できる環境が、Officeの使いやすさを支えるはずです。操作の手間を減らしながら、利用者が仕事の内容を把握できる環境を整えることが求められます。

まとめ

Grokとの連携によって、Officeで利用できるAIモデルの種類が増えます。ExcelのListsでは、1セルに複数の値を保持し、それぞれを個別に扱えるようになります。AIへ仕事を依頼する方法と、その対象となるデータの持ち方が同時に変わりつつあると捉えられます。

ただし、Listsによって入力しやすくなっても、一覧性が低下したり、集計単位が分かりにくくなったりする懸念は残ります。表の形式が混在すれば、共有や再利用の負担も増える可能性があります。AIによる操作の代行を進めるとともに、利用者が結果を理解できるようにすることも重要です。

新しい機能を評価する際には、入力や生成の手軽さに加え、確認・修正・引き継ぎの負担も考慮しましょう。複数の値をまとめる形式が業務に合うか、集計の意味を関係者が共有できるか、変更を確かめられるかが判断の軸となります。今後のOfficeには、AIへ任せられる作業を増やしながら、人がデータと結果を理解し、必要な判断を行える環境を整えることが求められます。

参考文献

Expanding model choice in Copilot with Grok

Put multiple values in one cell with lists and arrays in Excel

What’s New in Excel (September 2026)

この記事を書いた人

ビジネス・テクノロジスト 貝田龍太