
営業でAIを使う効果は、メールや資料の作成時間を減らすことだけでしょうか。連絡する顧客や確認事項、提案の時期を決めるには、顧客の事情や過去の商談を把握する必要があります。AIエージェントは、そのための調査や応対、担当者への引き継ぎにも使われ始めています。今後は、顧客への理解を深め、将来の相談につながる関係を保つ仕事にも役立つ可能性があります。そこで得た情報は、提案時期や顧客の選定を見直すためにも使えます。AIの役割が営業戦略の実行まで広がると、日々の営業活動はどう変わるのでしょうか。
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「作業の効率化」から「顧客理解」へ
メールや提案資料を速く作れても、それだけで商談が進むわけではありません。顧客が何に困り、なぜ導入を見送ったのかを知らなければ、次の提案も的を絞れません。AIエージェントは、顧客の調査や応対を通じて、こうした事情を把握する仕事にも使われ始めています。営業でのAI活用は、文章を書く手間を減らすだけでなく、顧客を理解し、提案を考える仕事へ広がりつつあります。
メール作成の先にある営業の仕事
営業メールをAIで作る場合には、相手の情報、伝える内容、文面の調子などを指定します。議事録の要約や提案資料の下書きでも、担当者が用意した情報を基に、AIが文章を整えます。こうした活用は、文章を作る手間を減らす身近な方法です。しかし、メールを作る前には、連絡する顧客を選ぶ仕事があります。送信後には返信を読み、次の対応を決めます。文章の作成を効率化しても、顧客ごとの経緯を調べ直す手間は残ります。必要な確認も一つずつ進めるため、顧客への一連の対応には引き続き時間がかかります。
MicrosoftのDynamics 365 Salesには、Sales Qualification Agentがあります。顧客候補が営業対象として適しているかを評価するAIエージェントです。調査を中心とするモードでは、指定された顧客候補を調べます。自社が定めた営業対象の条件に合うかを評価し、初回のメールを作成します。応対まで担うモードでは、そのメールを送信します。返信に応じた確認や継続的な連絡も行います。設定した条件に従い、顧客への対応を営業担当者へ引き継ぎます。担当者は、下書きを受け取る段階から対応するか、顧客とのやり取りが進んでから対応するかを選べます。
AIによる支援は、個別の作業から、一連の顧客対応にも広がる可能性があります。例えば、調査の結果をメールに反映します。返信で分かった内容は、顧客の記録に加えます。その記録を基に、次の質問を考えます。同じ顧客情報を使いながら、メールの作成、情報の確認、記録の更新を進める流れです。担当者は、確認できた内容と未確認の内容を把握して対話に臨めます。AIが参照する顧客情報を、あらかじめ決めておく必要があります。担当者に引き継ぐまでに、どこまで確認するかも定めます。
商談の経緯を踏まえて顧客を理解する
業種や規模といった企業の属性だけでなく、過去の相談内容も顧客を理解する手掛かりになります。導入を妨げていた事情も、確認したい情報です。同じ製品への問い合わせでも、業務量の増加に対応したい場合と、作業の負担を減らしたい場合では、質問する内容が違います。AIで顧客の発言、見送り理由、担当者の関心を整理できます。その情報を基に、次の商談で何を確かめるかを決められます。
例えば、予算上の理由で導入を見送った顧客が、その後、事業を拡大したとします。まず、過去の商談の記録と現在の状況を照らし合わせます。業務量や予算、検討方針の変化について、質問を準備できます。ただし、事業の拡大だけで購入の意思を判断することはできません。以前、導入を妨げていた事情がどう変わったかを、対話で確認します。AIによる記録の整理で、担当者が過去の資料を読み直す手間を減らせる可能性があります。整理した情報は、改めて連絡する理由を考える際にも使えます。次の提案では、以前と同じ資料をそのまま送らず、確認した変化を踏まえて内容を見直せます。
顧客がある機能を求める理由について、仮説を立てて検討できます。どのような業務上の問題が背景にあるのかを考えます。例えば、業務量の増加に対応したいのか、担当者の負担を減らしたいのかを考えます。考えた内容は、質問の順序や提案で重視する点を決める材料になります。顧客が明言した内容と、AIが推測した内容は、分けて扱う必要があります。確認済みの情報を基に仮説を立て、その仮説を対話で確かめます。対話で分かった事情を記録します。その記録を、次の提案に生かします。 担当者は、AIが整理した情報を基に顧客への理解を深められます。その後の対応でも、記録に残した経緯を踏まえて検討できます。
顧客候補の選定を営業方針と結び付ける
出張・経費管理サービスを提供するPerkでは、SalesforceのProspecting Agentを使っています。自社の条件に合う顧客候補を調査し、選定するためです。Salesforceの公開事例によると、選んだ候補にはメールで連絡しています。営業担当者には、選定理由の要約も提示されます。担当者が結果を確認し、その評価を基に選定方針を調整しています。
顧客候補の数だけでなく、選定理由も営業戦略を考える材料になります。条件に合う企業でも、提案がその企業の課題や導入条件に合うかは、実際に連絡して確かめる必要があります。候補を選んだ理由と、その後の反応を併せて記録します。どの選定条件が商談を進めるうえで役立ったかを振り返れます。自社が解決を支援できる課題は、顧客の選定条件に反映します。連絡後に分かった事情を基に、条件を調整していきます。顧客調査の結果は、その後も営業方針の見直しに役立つと考えられます。
複数の顧客の相談内容や導入条件も、重点的に取り組む業種や課題を決める材料になります。同じ業種でも、困っている業務や導入を見送る理由は異なります。提案内容は、その違いに応じて分けられます。一方、異なる業種に共通する問題が見つかる場合もあります。その課題を基準に、顧客候補を整理できます。AIは、個別の記録から共通点を抽出する作業を支援します。営業組織は、その結果を基に重点顧客を選べます。対象市場や提案内容も検討できます。調査を効率化しながら、営業方針の見直しも進められる可能性があります。

「必要なときに思い出してもらえる」顧客接点の設計

今すぐ購入する予定がない顧客に、どのような情報を届ければよいのでしょうか。将来、課題が生じたときに自社を相談先として思い出してもらうには、何を支援できる会社なのかを伝えておく必要があります。顧客の関心に合う解説や事例を届け、そのやり取りを通じて理解を深めます。AIは、顧客の関心や検討状況を整理し、次に伝える内容を考える仕事にも役立つと考えられます。
関心と検討状況に合わせて接点を作る
顧客に届ける情報は、購入を検討している段階によって変わります。まだ購入を検討していない顧客には、課題を整理するための解説や関連事例が役立つ可能性があります。製品を比較している顧客には、機能の違いや導入条件を確認できる資料が必要です。具体的な相談では、担当者が顧客固有の事情に合わせて説明します。AIで過去の問い合わせや応対を整理できます。その情報を基に、顧客の検討段階に合う資料や解説を用意できます。
HubSpot Japanが発表した「日本の営業に関する意識・実態調査2026」では、買い手による生成AIの利用状況が示されています。課題の整理、製品情報の収集、候補の選定などに利用されています。営業担当者に期待する価値としては、個別事情を踏まえた提案や、潜在的なニーズの把握などが上位に挙げられています。営業担当者には、顧客がどのような情報を得て、何を検討しているかを確かめる姿勢が求められます。顧客固有の事情は、対話を通じて把握することが重要です。
顧客への連絡では、内容だけでなく、方法と頻度も検討します。AIで、過去に関心を示した情報や、希望する連絡方法を整理できます。未確認の事項も併せて把握します。担当者は、その情報を基に次の連絡を判断します。同じ案内を繰り返す手間を減らせる可能性があります。顧客の返答から新たに分かった事情は、記録に残します。その内容を次の資料や質問に反映できます。情報提供と対話を重ね、顧客の関心に沿ったやり取りを続けます。
やり取りを続けながら必要な情報を集める
出張管理サービスを提供するEngineでは、AIエージェントVeeがGmailでメールをやり取りしています。事業者の情報を確認するための取り組みです。Salesforceの公開事例では、返信に応じて質問に答える様子が紹介されています。不足する情報の確認や、配信停止の希望への対応も行います。事業者名やドメイン、企業の状況、反応を顧客の記録に反映します。Veeはメールの文面を作るだけでなく、やり取りで得た情報を営業担当者へ引き継いでいます。
事前の調査で分かる情報に加え、顧客に確認して初めて分かる事情があります。やり取りを通じて得た情報も、次の対応を決める材料になります。返答で分かった内容を整理し、足りない情報を確認します。その経緯を残しておく必要があります。担当者は、記録を読んで、それまでのやり取りを踏まえた対話を始められます。引き継ぎでは、確認済みの内容と、まだ答えを得ていない質問を整理します。次に何を確かめるかが明確になります。
AIに確認させる事項は、営業活動の目的に合わせて決める必要があります。担当者へ引き継ぐ条件も定めます。企業情報の確認、課題の聞き取り、具体的な提案の検討では、それぞれ必要な情報が異なります。追加の相談を受けた際には、応対で得た情報を記録します。相談内容と過去のやり取りをまとめます。その情報を次の担当者へ引き継ぎます。 担当者は、対話の準備に使えます。 情報提供を続ける中で、顧客への理解も深めていける可能性があります。担当者が新たに確認した事情も、記録に加えます。その後の連絡でも、これまでの経緯を踏まえて対応できます。
課題が生じたときの相談先として覚えてもらう
顧客が課題に直面したとき、相談できる企業やサービスを思い出すのが「想起」です。LinkedInのB2B Instituteは、「メンタル・アベイラビリティ」を重視しています。Ehrenberg-Bass Instituteとの研究連携に基づく解説で示されている考え方です。関連する購買場面で、ブランドが思い浮かびやすくなる状態を指します。今すぐ購入する顧客と、将来購入する顧客の双方への情報発信を検討する際に、参考になります。顧客とのやり取りも、将来の相談先として自社を覚えてもらう機会になる可能性があります。
人手不足、拠点拡大、システム更新など、顧客の状況に合わせて、自社が提供できる支援を伝えられます。AIで過去の相談や商談を整理できます。どの状況でどのような課題が生じていたかを分類する作業にも使えます。その結果は、状況別の解説や事例を用意する際に役立ちます。例えば、人手不足への対応に関心がある顧客には、業務の負担を減らす事例を届けます。拠点拡大を検討する顧客には、業務量の変化を踏まえた解説を届けます。具体的な事例や解説を通じて、自社にどのような課題を相談できるかを伝えます。
相手に合わせて内容を変える場合も、自社がどのような課題の解決を支援できるかは、一貫して伝える必要があります。毎回異なる話題を送るのではなく、顧客の状況に合う事例を通じて、自社の支援内容を説明できます。資料の閲覧や返信の有無だけでは、自社を相談先として思い出したかは分かりません。想起は、顧客調査や相談時の聞き取りで確認します。何をきっかけに自社を相談先として選んだのかを確かめます。AIによる情報提供の支援についても、長期的な効果を確認する必要があります。その結果を、将来の相談につながるやり取りを見直す材料にします。
提案のタイミングと営業資源の配分を変える
顧客の関心や課題を把握していたとしても、適切な対応が取れるとは限りません。何を提案するかに加え、いつ提案するかも判断しなければなりません。AIで顧客の変化や過去の経緯を整理し、提案の時期を考える手掛かりにできます。複数の顧客の検討状況は、担当者の時間や施策の予算の配分にも関わります。個々の対応で得た情報を、営業組織全体の方針の見直しにも生かします。
顧客の変化を提案の手掛かりにする
HubSpotには、対象企業の行動や企業ニュースを記録する機能があります。ウェブサイトの閲覧や、特定分野の調査行動などが対象です。商談中の予算や時期に関する発言も検出します。検出した情報は、対応の優先順位を決めるために使えます。業務を実行する条件の設定にも利用できます。商談中の発言から情報を検出するには、連絡先、企業、既存案件を関連付けておく必要があります。発言した相手と、その企業の商談を関連付けて情報を扱います。
提案までの間に、顧客についての情報をAIで分析できます。分析の結果は、提案に盛り込めます。例えば、ある分野を調べ始めた企業について、過去に同じ課題の相談があったかを確かめます。事業拡大のニュースは、以前に導入を見送った理由と照らし合わせます。AIが関連する記録を整理します。担当者は、その情報を基に確認事項を決めます。企業ニュースと商談の経緯は、改めて連絡する理由を考える材料になります。用意する資料の内容も検討できます。顧客の担当者が交代した際には、過去にどこまで話し合ったかを整理します。新しい担当者に確かめる事項を準備できます。
顧客の行動や公開情報は、提案の時期を考える手掛かりになります。資料を閲覧した理由は、対話で確かめる必要があります。事業拡大に伴って何を検討しているかも確認します。AIが見つけた変化について、根拠となる情報を整理します。過去の相談との関係や、確認すべき点も整理できます。担当者は、その情報を基に連絡するかどうかを判断します。顧客が予算や検討時期を明言している場合には、その発言を優先して準備を進めます。提案の時期は、顧客の事情を踏まえて決めます。 変化の把握と確認事項の整理が、営業側の都合だけで時期を決めないためにも役立つと考えられます。
案件ごとの対応を営業資源の配分に生かす
顧客が伝えた契約更新や予算検討の予定は、提案の時期を決める手掛かりになります。その予定から逆算して、準備を進めます。まず、事前に何を確認するかを決めます。渡す資料や打ち合わせの日程も検討します。過去の相談で確認済みの内容と、未確認の内容を整理します。次の打ち合わせで確かめる事項が明確になります。AIで顧客の予定と営業側の準備状況を整理できます。担当者は、その情報を基に連絡や提案の順序を決めます。予定が変わった際には、記録を更新します。準備の順序も見直します。
営業組織では、直近の商談、顧客への継続的な情報提供、新しい市場の開拓に、時間と予算を配分します。AIで、顧客ごとの課題、検討時期、これまでの反応を整理できます。担当者は、その結果を基に対応する顧客の優先順位を決められます。すぐに提案する顧客と、将来の相談につなげるために情報を提供する顧客では、必要な仕事が異なります。顧客を分けて、それぞれの仕事を整理します。複数の顧客に共通する課題については、共通の解説や事例を用意できます。顧客ごとに資料を作る方法も含めて、準備の進め方を検討できます。
顧客ごとの情報は、営業戦略に沿って日々の対応を決めるためにも使えます。組織が重点的に取り組む課題を定め、その課題を持つ顧客候補を調べます。顧客の検討状況に合わせて連絡します。担当者は、具体的な相談や提案を進めます。そこで分かった顧客の事情は、組織内で共有します。AIは、情報の整理や対応の準備を支援します。営業組織が方針を実行し、その結果を確認する仕組みにも役立つ可能性があります。導入を検討する際には、自社の顧客情報と営業活動を確認しましょう。どの判断や対応でAIを使うかを整理します。顧客への対応の目的に合わせて、担当者が行う仕事と、AIに継続的な支援を求める仕事を検討しましょう。
顧客の反応を基に営業戦略を見直す
営業戦略を見直す際には、顧客を選んだ理由と、その後の反応を併せて確認します。Perkの事例では、担当者の評価を基に、候補の選定方針を調整しています。自社でも、商談につながった理由や、導入を見送った事情を整理できます。受注後の評価も確認します。これらの情報は、対象顧客の条件や、提供する情報の内容を見直す材料になります。担当者は、AIが整理した情報を確かめます。新たに分かった顧客の事情も加えます。こうした情報を基に、初めに決めた選定条件を見直していけると考えられます。
評価の指標は、施策の目的に合わせて選びます。メールの作成時間は、作業の効率を測る指標です。送信件数は、活動量を測るために使います。商談の進展は、問い合わせが商談につながった割合で確認できます。商談が受注に至った割合も確認します。率を比較する際は、対象となる顧客や期間をそろえましょう。受注状況と併せて、粗利益も確認します。その結果は、提案ごとに時間や予算を配分する際の判断材料になります。メールや資料の作成、顧客への連絡、商談、受注を、それぞれの目的に合う指標で評価します。評価の結果を基に、改善する仕事を決められます。
顧客との関係を保つための情報提供では、すぐに商談につながったかだけで効果を判断しません。課題が生じたときに、自社を思い出してもらえたかも確認します。再び相談を受けたかも、確認したい反応です。すぐに商談につなげる施策と、必要な場面で思い出してもらう施策では、評価する反応が異なります。顧客調査や相談時の聞き取りで、相談のきっかけになった課題や情報を確かめます。その結果は、次に届ける情報を決める際に使えます。AIは、顧客の反応と営業活動の経緯を整理します。営業組織は、その情報を基に顧客の選定条件を見直せます。連絡の方法や提案の時期も見直します。短期的な商談の進展と、顧客との長期的な関係の変化を併せて確認します。AIエージェントは、こうした見直しを継続する仕事にも役立つ可能性があります。
まとめ

AIエージェントは、日々の営業活動と営業戦略の見直しを結び付ける役割を担う可能性があります。メールの作成に加え、顧客調査や応対、情報の確認、記録の更新、担当者への引き継ぎにも使われ始めています。今後は、顧客の状況を継続的に把握し、関心や検討時期に合わせた対応も支援できると考えられます。
営業担当者は、AIが整理した情報を対話で確かめます。新たに分かった事情は記録に加え、次の顧客選定や提案に反映します。営業組織は、その情報を使って重点的に取り組む顧客や課題を選べます。担当者の時間や施策の予算を配分する際にも使えます。こうして日々の対応を営業戦略に沿って進め、その結果を基に戦略を見直します。
導入に当たっては、顧客情報をどこに記録し、次の判断にどう使っているかを確認しましょう。効果を評価する際は、メールや資料の作成時間に加え、商談が進んだかも確認します。将来の相談に向けた情報提供では、自社を思い出してもらえたか、再び相談を受けたかも確かめましょう。その結果を基に、顧客への対応を改善します。顧客への理解を深め、事情に合った提案を続けるために、日々の情報整理と対応の準備にAIエージェントを活用していきましょう。
参考文献
Salesforce:Perk Scales Call Volume 3x with Prospecting Agent
HubSpot Japan:「日本の営業に関する意識・実態調査2026」の結果を発表
