2025年に突入するとされる「2025年の崖」。これは日本のビジネスに大きなリスクをもたらす可能性がある概念です。経済のデジタルトランスフォーメーション(DX)は避けられない課題であり、日本の企業はレガシーシステムの問題を抱えています。この問題にどう向き合うべきか?
この記事では、「2025年の崖」の意味、問題の原因、および解決に向けたヒントを詳しく解説します。
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2025年の崖とは
「2025年の崖」とは、経済産業省が提唱した概念で、日本の多くの企業が直面する重大な課題を指します。特に注目されているのは、レガシーシステムがビジネスの足かせとなり、DXの推進を妨げるリスクです。2025年以降、こうした問題が顕在化すれば、企業は競争力を失い、日本経済全体にも悪影響を及ぼす可能性があります。
経済産業省のレポートでは、2025年までに現状のITシステムの多くが陳腐化し、維持コストが急増することが予測されています。このまま対策を講じなければ、年間12兆円以上の経済損失が発生するとされています。
【参考】レガシーシステムとは。「2025年の崖」との関係や脱却方法なども説明|ZAC BLOG|企業の生産性向上を応援するブログ|株式会社オロ
大きな原因は「レガシーシステム」
「2025年の崖」の主要な原因は、企業が長年使用してきた「レガシーシステム」の存在です。これらのシステムは、時代遅れの技術や設計に依存しており、以下のような問題を引き起こします。
・柔軟性が欠如しており、ビジネス環境の変化に対応することが難しい
・古い技術に精通した人材の不足により、維持管理コストが増大する
・最新のセキュリティ基準に適合していないシステムが多い
このように対応が難しいことやセキュリティリスクの増大も無視できません。
レガシーシステムとは
レガシーシステムとは、最新の技術ではなく、古い技術で構築されているシステムのことです。
具体的には、1980年代に多くの企業が導入した、メインフレームやそれを小型化したオフコン(オフィスコンピューター)といったコンピューターを使ったシステムを指します。
1990年代後半から2000年にかけて、企業の多くが標準化された仕様、もしくは公開されている技術を用いたオープン系のシステムに移行しました。しかし、この移行時期に開発されたオープン系システムも、すでに20年以上が経過し、現代では古くなりつつあります。これらのシステムは最新技術に対応しにくく、レガシーシステムに含まれることも珍しくありません。
これらのシステムは、一時期のビジネスニーズに応じて導入されたものの、現在では時代遅れとなり、企業の成長を妨げる要因となっています。
レガシー化の原因
レガシーシステムは、古い技術や設計が残るITシステムを指しますが、そのようなシステムが生まれる背景には、以下のような複数の要因が複雑に絡み合っています。それぞれの要因を詳しく見ていきましょう。
1. 短期的な視点でのIT投資
企業は、直近の課題を迅速に解決するために、短期間で成果が出るIT投資を優先する傾向があります。このアプローチでは、長期的な視点や拡張性を考慮した設計が後回しにされることが少なくありません。
2. 長期間の使用による技術の陳腐化
一度導入されたシステムは、業務プロセスに深く組み込まれるため、簡単には置き換えられません。その間に、テクノロジーは急速に進化しますが、既存のシステムは古い技術のまま取り残されます。
3. 人材不足による課題
新しい技術に対応する人材の育成や採用が追いつかないことも、レガシーシステムが温存される一因です。特に以下のような状況が問題を深刻化させます。
4. コスト制約による現状維持
新しいシステムへの移行は、多額の投資を必要とします。多くの企業にとって、コストの問題は避けて通れない大きな課題です。
レガシーシステムは、短期的な利益を優先する姿勢、技術革新のスピード、人材やコストの制約といった要因が絡み合い、生まれるものです。その解決には、長期的なIT戦略の策定や、人材育成への投資、そして経営層による意思決定が不可欠です。企業が競争力を維持するためには、レガシーシステムの課題を早期に認識し、計画的に対応していくことが求められます。
レガシーシステムからの脱却を阻む要因
レガシーシステムの問題を解決するには多くの課題がありますが、以下のような要因がその障壁となっています。
・移行の複雑さ: 現行システムの分析やデータ移行が困難。
・コスト負担: 新システム導入には多額の初期投資が必要。
・経営層の理解不足: システム更新の重要性が十分に認識されていない。
・既存業務への影響: 移行中の業務停止リスクが懸念される。
では、どうすればレガシーシステムから脱却できるのか?
その方法をご紹介します。
レガシーシステムから脱却する方法
企業がレガシーシステムの課題を克服し、効率的で柔軟性の高いIT基盤へ移行するためには、計画的かつ段階的な取り組みが必要です。以下に、具体的なアプローチを詳しく解説します。
1. 現状分析と評価
まずは現在のシステムの状況を正確に把握し、改善すべきポイントを明確にすることが重要です。
取り組みの具体例:
・システムの老朽化状況を把握する
・システムの構築時期や技術的な課題(性能の限界、保守性の低下など)を洗い出し
・ビジネスに与える影響を分析する
・レガシーシステムが業務効率やコストにどのような影響を及ぼしているかを評価
(例えば手作業が増えている箇所や、顧客対応の遅延などを特定)
詳細な現状分析には専門知識が必要な場合も多いため、内部リソースが不足している場合は外部支援の活用も検討しましょう。
2. 専門家やコンサルタントの活用
レガシーシステムの移行や改善は専門性が求められるため、外部の知見を活用することが効果的です。
活用方法:
・ITコンサルタントを雇用し、移行計画の設計や課題解決をサポートしてもらう。
・ベンダーと協力して、クラウドソリューションや最新技術の導入を具体化する。
・他企業の成功事例を基に、自社に適した最善策を模索する。
外部専門家の支援を受けることで、内部リソースの負担を軽減し、移行計画を迅速かつ正確に進めることができます。
3. マイグレーション(移行)計画の策定
システム移行には計画的な準備が必要です。急ぎすぎるとリスクが増すため、慎重に進めるべきです。
具体的な手順:
①データの移行計画
現在のシステム内のデータを整理し、新システムに移行する際の整合性や安全性を確保します。
②新旧システムの並行運用
完全移行の前に、一定期間新旧システムを並行して運用し、不具合やデータの不一致を解消します。
③テスト環境の構築
実際の移行前にテスト環境で動作確認を行い、問題を事前に発見します。
移行計画を成功させるには、関係部門間の連携が不可欠です。IT部門だけでなく、現場の意見も反映することが重要です。
④モダナイゼーションの実施
単なる置き換えではなく、最新技術を活用してシステムの価値を最大化することが求められます。
クラウドコンピューティング、SaaS(Software as a Service)など
システムの保守性や拡張性のために必要に応じて技術を採用していくことがおすすめです。
⑤経営層の理解と支援の確保
経営層の協力がなければ、大規模なシステム変更は進められません。そのため、経営陣に対してDX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性を訴える必要があります。
データや具体的な事例を示し、レガシーシステムの課題を明確に伝えましょう。
⑥段階的な移行でリスクを軽減
レガシーシステムからの移行を成功させるためには、段階的なアプローチが重要です。
まず、業務全体を一度に移行するのではなく、システムをモジュールごとに分割し、一部の業務から少しずつ新しいシステムに切り替える方法を取ります。この手法により、大規模な混乱を防ぎながら進めることが可能です。
「2025年の崖」を乗り越えよう
「2025年の崖」は、企業がDXを推進する上で避けて通れない課題です。レガシーシステムの存在がビジネスの成長を妨げる中、現状を正確に把握し、計画的かつ戦略的に移行を進めることが求められます。
専門家の知見を活用し、経営層の理解を得ながら段階的な移行を進めることで、企業は「2025年の崖」を乗り越え、持続可能な成長を実現することができるでしょう。