労務管理と人材マネジメント力の違いとは?成果を出し続けるマネージャーの条件

マネージャーという立場になると、日々さまざまな役割を求められます。業務を滞りなく回し、組織を安定させることも大切ですが、それだけでは十分ではありません。成果を出し続けるマネージャーには、さらに別の力が問われます。

「部下をどう導けばいいのか」「チームをどうまとめればいいのか」

多くの管理職が直面するこの問いには、明確な答えがあるわけではありません。しかし、成功するマネージャーには共通する視点や姿勢があります。

本記事では、マネージャーとして成果を持続的に出すために欠かせない考え方と、その実践のヒントを紹介していきます。今の自分のスタイルを振り返りながら、新たな気づきを得るきっかけにしていただければ幸いです。

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労務管理とは

労務管理とは、社員が安心して働けるように整える基本的な仕組みのことです。具体的には次のような業務を含みます。

・出勤や退勤、休暇の管理

・給与や賞与の計算

・社会保険や労働保険の手続き

・就業規則の整備と運用

・労働基準法などの法律を遵守すること

これらは会社運営に欠かせない基盤であり、適切に整備されていなければ社員は安心して働けません。ただし、労務管理自体が直接的に「成果」を押し上げるものではなく、どちらかといえば「安心して働ける環境を守る」役割といえます。

例えるなら、労務管理は車における「エンジンオイルや車検」のようなものです。きちんと整備されていなければ事故やトラブルにつながりますが、それだけで車が速く走れるわけではありません。成果を加速させるには別の要素が必要なのです。

人材マネジメント力とは

人材マネジメント力とは、メンバーのやる気や成長を引き出し、チーム全体の成果を高める力です。単にルールを守らせるのではなく、一人ひとりの強みを理解し、チームが自律的に動けるように支援することが求められます。

具体的には次のような力を指します。

・信頼関係を築き、安心して相談できる存在であること

・公平かつ前向きなフィードバックを行うこと

・心理的に安心できる環境をつくること

・チームにとって分かりやすい目標を示すこと

・部下一人ひとりのキャリアを応援すること

つまり、人材マネジメント力とは「人を育てる力」であり、未来に向けてチームを成長させるための原動力です。

Google「プロジェクトオキシジェン」が示した良いマネージャーの条件

※こちらの素材は、ネガティブな内容のイメージ写真としてのご利用はご遠慮ください。(撮影ロケーションはストックフォト撮影の許可を得ております。)キャプションに「画像はイメージです」などの記載をおすすめいたします。

Googleは2009年に「プロジェクト・オキシジェン」という調査を行い、成果を出しているマネージャーの共通点を明らかにしました。その結果、次の8つの特性が導き出されました。

1.良いコーチである

2.権限を任せ、細かく管理しすぎない

3.メンバーの成功や幸福に関心を持つ

4.成果を重視し、率先して行動する

5.話をよく聞き、分かりやすく伝える

6.部下のキャリアをサポートする

7.明確なビジョンや戦略を示す

8.必要な専門知識を持ち、適切に助言できる

これらは単なる労務管理の範疇を超え、人材マネジメント力そのものです。特に「心理的安全性の確保」「キャリア支援」「コーチング」は、現代のマネージャーにとって欠かせない要素です。

【参考】プロジェクトオキシジェンとは

成果を出し続けるマネージャーに必要なこと

成果を持続的に上げるには、次のようなポイントが大切です。

1. 安心して意見を言える環境をつくる

成果を持続させるには、メンバーが自由に意見を口にできる環境が欠かせません。失敗を恐れて沈黙してしまう場では、改善や革新は生まれにくいものです。逆に、安心してアイデアを出せる雰囲気があれば、挑戦が増え、チームは自然と成長していきます。マネージャーは「否定から入らない」「小さな発言も評価する」など、日常の姿勢で心理的安全性を高めることが重要です。

2. 部下を「管理」ではなく「育てる」

単にタスクを指示して成果を求めるだけでは、チームの力は伸びません。成果を出し続けるマネージャーは、部下を一人の成長する人材として捉えます。背景を説明し、自分で判断できる余地を与えることで、部下は責任感を持ち主体的に動くようになります。ちょっとした質問やフィードバックを通じて考える力を養うことが、組織全体の底力につながります。

3. 目標を分かりやすく伝える

明確な目標は、チームを同じ方向へ導く羅針盤です。曖昧な指示のままではメンバーが迷い、成果も安定しません。重要なのは「何を・いつまでに・どの基準で」達成すべきかを具体的に示すことです。大きな目標を小さなステップに分けて伝えれば、メンバーも達成感を得やすく、モチベーションを保ちやすくなります。

4. キャリアを応援する

部下のキャリア形成を支援することは、成果と定着率の両立につながります。短期的な業務遂行だけでなく「3年後にどうなりたいか」を一緒に考えることで、社員は安心して努力を続けられます。定期的な1on1やスキルアップの機会を提供し、成長を後押しすることが、信頼とエンゲージメントを高めます。

5. 公平でオープンなコミュニケーション

成果を出すチームには、透明性のあるコミュニケーションが欠かせません。フィードバックや評価が一貫していれば、部下は安心して努力できます。さらに、意見交換を気軽に行える雰囲気をつくることで、チーム全体の一体感も高まります。特にリモートワーク環境では、雑談や小さな声を拾う仕組みを意識的に設けることが、信頼関係の維持につながります。

労務管理と人材マネジメント力の違いを理解する意味

労務管理と人材マネジメント力の違いを理解することは、良いマネージャーになるための第一歩です。労務管理は「土台」であり、人材マネジメント力は「成長を推進する力」です。

どちらか一方だけでは不十分で、両方をバランスよく取り入れることが大切です。労務管理を怠れば安心して働けず、人材マネジメント力を欠けば成果は続きません。この2つを両輪のように回すことで、安定と成長の両立が可能になります。

まとめ

労務管理は勤怠・給与・法令遵守といった基盤を整える仕事です。一方で、成果を出し続けるために必要なのは人材マネジメント力です。Googleの「プロジェクト・オキシジェン」によっても、優れたマネージャーは「コーチング」「心理的安全性の確保」「キャリア支援」「明確な目標設定」といった力を発揮しています。

労務管理と人材マネジメント力の違いを正しく理解し、両方を実践できることこそ、これからのマネージャーに求められる条件です。安定と成長を両立させるために、自分のマネジメントスタイルを振り返り、必要な力を磨き続けていきましょう。

あなたも、自分のマネジメントを見直し、チームの成長を後押しする一歩を踏み出しませんか?

この記事を書いた人

ビジネス・テクノロジスト 貝田龍太