
2025年、ブロックチェーン技術は金融・AIとの融合や税制改正、企業向けサービスの拡大など、多方面で急速に発展しています。特に、リスク管理やガバナンスにとどまらず、ステーブルコイン、AIエージェント、実世界資産(RWA)のトークン化など、さまざまな分野で実用化が進んでいます。本記事では、最新の動向や技術の違い、基本用語までをわかりやすく解説します。
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ブロックチェーンの最新トピック
2025年後半、ブロックチェーン業界は税制改正や金融・AIとの融合、企業向けサービスの拡大など、多方面での進展が見られます。
日本では特に、暗号資産(仮想通貨)の税制が大幅に見直され、個人投資家の負担軽減と市場の健全化が同時に進みました。
また、エンタープライズ分野では金融、AI、エネルギー、医療などさまざまな領域でブロックチェーンの活用が加速しています。
日本の暗号資産税制改正
日本政府は2025年後半、暗号資産取引の税制を大きく改定しました。
従来の総合課税(最大55%)から、株式や投資信託と同様の申告分離課税(約20%)へ移行しています。
これにより、個人投資家の税負担が軽くなり、市場の活性化が期待されています。
さらに損失繰越制度も導入され、3年間の控除が可能になりました。
また、金融商品取引法の適用も進み、暗号資産発行者への情報開示義務やインサイダー取引の禁止など、規制強化も進行中です。
さらに、暗号資産を組み入れた投資信託(ETF)の国内解禁も現実味を帯び、投資環境の多様化が進んでいます。
金融との融合とステーブルコイン
日本円にペッグしたステーブルコインの登場により、既存金融との融合が加速しています。
たとえば、SBIホールディングスや三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)などが自社でステーブルコインを発行・運用する計画を発表。
その結果、送金や決済にかかるコストと時間が大幅に減り、企業間取引や個人送金がより便利になっています。
金融機関はブロックチェーンを活用して新しいサービスを展開し、不動産や債券、エネルギーなどの実世界資産(RWA)をトークン化することで、資産の流動性向上と透明性の強化を実現。
この動きがDeFi(分散型金融)の成長を後押ししています。
これにより、企業の資金調達や投資環境が大幅に改善され、グローバルな資金調達の道も開かれています。
海外のブロックチェーン活用事例
海外においてもブロックチェーンの実用化が急速に進展しています。
特にウォルマート中国ではVeChainのブロックチェーンを導入し、食品トレーサビリティを強化しています。
利用者は商品のQRコードをスキャンするだけで、製造元・物流情報・検査記録などを即座に確認できます。これにより、食品の安全性と透明性が大幅に向上しました。また、H&MやCOSなどのファッションブランドも、サプライチェーンの可視化や持続可能性の証明にVeChainを活用しています。欧州や米国では、RegTech(規制テクノロジー)のほか、物流や医療データ管理へのブロックチェーン導入が進んでいます。
市場規模と今後の展望
2025年のエンタープライズブロックチェーン市場は、国内だけで約7,247億円に達する見込みです。
プライベートブロックチェーンの普及や中小企業による採用が市場成長を支えており、今後は住宅賃貸契約や公共料金の支払いなど、活用領域のさらなる拡大が見込まれます。
これらの動向は、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)や業務効率化、新たなビジネスモデルの創出に大きく貢献しています。ブロックチェーンは、今後も社会インフラとしての存在感を高めていくでしょう。
ブロックチェーンの技術動向
ブロックチェーン技術は、企業のDXや業務効率化を中心に多様な分野で急速に普及しています。
その応用はAI、金融、エネルギー、医療などの領域まで広がり、産業構造全体に影響を及ぼし始めています。
AIエージェントとの連携
AIエージェントがブロックチェーン上でウォレットを保有し、自律的に取引や契約を行うケースが増えています。
金融、サプライチェーン、ヘルスケア、クリエイティブ、環境などの分野で自動化と効率化が進み、AIとブロックチェーンの融合が新たなビジネスモデルを生み出しています。
BaaS(Blockchain as a Service)の普及
企業が自社でインフラを構築せずにブロックチェーンを活用できるBaaS(Blockchain as a Service)の導入が広がっています。
東芝デジタルソリューションズの「DNCWARE Blockchain+」など、マネージド型サービスの拡充により企業の導入ハードルが大幅に下がっています。
実世界資産(RWA)のトークン化
不動産や債券、エネルギーなどの実世界資産をブロックチェーン上でトークン化することで、取引の透明性と効率性が飛躍的に向上しています。
投資家との信頼関係も強化され、グローバルな資金調達が容易になっています。
分散型エネルギー取引と電子カルテ保護
企業や家庭の太陽光発電・蓄電システムをブロックチェーン上で取引できる分散型エネルギー取引所が登場しています。
また、医療分野では電子カルテ(EHR)の保護や管理にブロックチェーンが活用され、患者データの安全な共有とアクセス制御が可能になっています。
ブロックチェーンは今後も、企業のDXと業務効率化を支える社会インフラとしての役割をさらに強めていくでしょう。
技術の進化とともに、新たなビジネスモデルの創出が期待されています。
実用化が進むプライベートチェーン

2025年、ブロックチェーン技術は金融機関や大企業を中心に、パブリックチェーンからプライベートチェーンへの移行が急速に進んでいます。
プライバシー保護や高速処理、コンプライアンス対応を目的に、機関特化型のプライベートチェーン導入が進んでおり、業務効率化やリスク管理の強化が期待されています。
決済専用チェーンの台頭
大手決済会社や金融機関が独自のプライベートチェーン上でステーブルコインを発行するケースが増加しています。
特にKlarnaは、StripeとParadigmが開発した「Tempo」上でステーブルコインを発行し、高速決済と機関間の信頼性確保を実現しています。
さらに、ゴールドマン・サックスやBNPパリバなどが参画する「Canton」ネットワークも、複数の金融機関が参加できる相互運用型プライベートチェーンとして注目されています。これらのチェーンは、各機関のプライバシーとコンプライアンス要件に応じて設計され、取引の透明性とセキュリティを両立しています。
セキュリティと法規制対応
プライベートチェーンは関係者のみがアクセスできるよう厳密に権限制御されており、機密性とセキュリティの双方が強化されています。
また、GDPRなどの法規制にも適合し、企業秘密や個人情報の保護手段として高く評価されています。特に、金融機関や医療機関では、監査証跡の管理やデータの安全な共有を目的に導入が進んでいます。
業務効率化と中小企業への拡大
プライベートブロックチェーンは、サプライチェーン管理、契約管理、電子カルテ管理など、さまざまな業務領域で効率化を実現しています。
特に中小企業(SMEs)での導入が進み、コスト削減と業務自動化が加速しています。
サプライチェーン領域では取引履歴の改ざん防止とリアルタイム在庫管理が実現し、契約管理では契約書のデジタル化と自動更新が進展。電子カルテ分野でも患者データの安全な共有とアクセス制御が可能になっています。
今後の展望
プライベートチェーンは、住宅賃貸契約や公共料金との連携など、適用領域のさらなる拡大が見込まれます。
企業のDX推進や法規制対応、効率化ニーズを背景に、2025年以降も導入加速が予測されています。特に、金融、医療、物流、公共サービスなど、多様な分野での活用が期待されています。
新しい技術動向
イーサリアム財団は複数のL2(レイヤー2)ロールアップを統合する相互運用性フレームワークを開発中で、2025年10月に設計文書が公開されました。
これによりL2間の資産移動がトラストレスかつ効率的になり、DeFiエコシステムの活性化が期待されています。
また、Googleクラウドは金融機関向けにPythonベースのスマートコントラクトを提供する新たなL1チェーン「GCUL」を発表しており、CMEの実証実験では決済コスト削減効果が確認されています。
エンタープライズブロックチェーンのトレンド
2025年時点では、エンタープライズブロックチェーンの主な用途はリスク管理やガバナンスにありますが、ステーブルコイン、AIエージェント、RWA(実世界資産)のトークン化といった新領域でも実用化が進みつつあります。
これらの取り組みは既に実証段階を超え、本格的な運用・事業活用フェーズに移行しています。
- ステーブルコイン
日本では3メガバンクが連携し、TIS、Fireblocks、AvaLabsなどと協働してステーブルコインの発行・事業化を推進しています。
これにより既存金融との融合が進み、決済や資産管理の効率化が期待されています。 - AIエージェント
AIエージェントがブロックチェーン上でウォレットを保有し、自律的に取引や契約を行うケースが増加しています。
金融、サプライチェーン、ヘルスケア、クリエイティブ、環境など、業務効率化や自動化への応用が進んでいます。 - RWA(実世界資産)のトークン化
不動産、債券、エネルギーなどの実世界資産をブロックチェーン上でトークン化することで、取引の透明性と効率性が大幅に向上しています。
RWAトークンはDeFiや投資市場の改善を促し、企業の資金調達や投資家との信頼関係を深める役割を果たしています。
BaaSの普及やAI・IoTとの連携が進み、ブロックチェーンは業務効率化と新たなビジネスモデル創出を後押ししています。
ブロックチェーンの基本用語と技術
ブロックチェーン技術は、暗号資産や金融分野から企業の業務改革まで、幅広い領域で実用化が進んでいます。
ただし、「パブリックチェーン」「プライベートチェーン」「NFT」「サイドチェーン」「Web3」といった用語を理解していないと、最新の動向を正確に読み解くのは難しいでしょう。
ここでは、ブロックチェーンの基本用語と技術的な違いを整理して解説します。
パブリックチェーンとプライベートチェーンの違い
ブロックチェーンには大きく分けて「パブリックチェーン」と「プライベートチェーン」の2種類があります。
パブリックチェーンは、誰でも参加できるオープンなネットワークで、代表的な例としてビットコインやイーサリアムが挙げられます。
参加者が分散しており、改ざんが極めて困難なため、透明性と信頼性が特徴です。
一方、プライベートチェーンは特定の組織や企業のみがアクセスできるクローズドなネットワークで、金融機関や大企業で多く採用されています。
プライバシー保護、高速処理、コンプライアンス対応に優れ、業務効率化やリスク管理を支える仕組みとして注目されています。
パブリックチェーンは透明性と信頼性に優れ、プライベートチェーンは効率性と制御性を強みとしています。
ブロックチェーンのキーワード
ブロックチェーン技術には、暗号資産やトークン、DeFi、NFT、サイドチェーン、Web3など、多くの重要な概念があります。それぞれの意味と役割を理解することで、ブロックチェーンの活用方法がより明確になります。
- 暗号資産(仮想通貨)
ブロックチェーン上で管理・取引されるデジタル資産です。代表的なものにビットコインやイーサリアムがあり、投資や決済手段として利用されます。透明性が高く、金融やビジネス分野で注目されています。 - トークン
ブロックチェーン上で発行されるデジタルな証明書や権利を指します。暗号資産だけでなく、株式、ポイント、ゲームアイテムなど多様な資産をトークン化できます。
用途に応じて「ユーティリティトークン」(サービス利用権)や「セキュリティトークン」(投資権)などに分類されます。 - DeFi(分散型金融)
ブロックチェーンを基盤とした金融の新しい仕組みで、銀行や証券会社を介さずに取引・貸付・投資などを自動的に行うことができます。
高い透明性と信頼性を持ち、誰でも平等に参加できる点が特徴です。 - NFT(非代替性トークン)
NFTは1つ1つが唯一無二の価値を持つデジタル資産です。アート、ゲームアイテム、不動産などに活用され、所有権や希少性を証明できる点が特徴です。 - Web3
ブロックチェーン技術を基盤とした分散型インターネットの概念です。中央集権的なWeb2とは異なり、ユーザー自身がデータの所有権を持ち、安全で自由なオンライン環境の実現を目指します。 - サイドチェーン
メインブロックチェーンと並行して稼働する独立したサブネットワークで、メインチェーンの負荷を軽減し、異なるブロックチェーン間での相互運用や資産移転を可能にします。
レイヤー1とレイヤー2の違い、その特徴とメリット
ブロックチェーンのレイヤー1(L1)とレイヤー2(L2)は、それぞれ異なる階層と機能を担う仕組みです。
L1は基盤となるネットワーク、L2はその性能を拡張するレイヤーとして設計されています。
レイヤー1(L1)の特徴
レイヤー1は、ブロックチェーンの基盤となるネットワークです。
代表例として、ビットコインやイーサリアムが知られています。
この層では取引の記録や資産管理、スマートコントラクトの実行が行われ、高い信頼性と堅牢なセキュリティを備えているため、改ざんが極めて困難です。
そのため、多くのプロジェクトやサービスの基盤として採用されています。
レイヤー2(L2)の特徴
レイヤー2はレイヤー1上に構築され、取引処理の高速化や手数料削減を実現する拡張的なネットワークです。
代表的な例として、イーサリアムのOptimismやArbitrumが挙げられます。
L2はL1のスケーラビリティ問題を補完し、処理性能とユーザー体験を大きく向上させる役割を果たしています。
レイヤー1とレイヤー2の比較
- レイヤー1はネットワークそのものの基盤で、取引の記録、資産管理、スマートコントラクトの実行を担う。
- レイヤー2はL1の上に構築され、取引処理の高速化・コスト削減・スケーラビリティの改善を目的とする。
- レイヤー1は堅牢さと信頼性、レイヤー2はスピードと柔軟性が強み。
- 両レイヤーを組み合わせることで、信頼性と効率性を両立したシステムを構築できる。
企業や個人は、用途に応じてL1とL2を使い分けることで、より効率的で安全な取引・サービス環境を構築できます。
「暗号資産」から「企業のインフラ」へ

ブロックチェーンは今後も、企業のDXと業務効率化を支える社会インフラとして重要性を一層高めていくでしょう。
技術の進化により、新たなビジネスモデルの誕生が加速すると見込まれます。
2025年以降もブロックチェーンの進化は、産業全体に大きな影響を与えるでしょう。
