経験よりも「伸びる資質」が重要!人材採用の本質とは

「経験豊富=即戦力」という考え方は、長年にわたり多くの企業で人材採用の前提とされてきました。即戦力人材を採用できれば、教育コストを抑え、短期的な成果につなげやすいという合理性があったからです。しかし、技術革新や市場環境の変化が加速する現代において、その前提は本当に通用し続けるのでしょうか。
過去に評価されてきたスキルや成功体験が、これからの環境でも同じように再現できるとは限りません。業務プロセスや使用するツールは常に更新され、仕事の前提条件そのものが変わり続けています。こうした状況では、経験の多さそのものよりも、変化にどう向き合えるかが成果を左右します。
むしろ、未知の課題に直面したときに学び直し、試行錯誤を重ねながら前に進める人材こそが、長期的に価値を発揮する時代です。この変化は一部の先端企業やIT業界に限った話ではなく、あらゆる業界、あらゆる職種、そして社会人全般に共通しています。
本記事では、「これまで何をしてきたか」ではなく、「これからどこまで成長できるか」という視点から、人材採用の本質を捉え直します。

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経験重視の採用が限界を迎えている理由

経験は重要な判断材料ですが、それだけでは人材の可能性を十分に見極められなくなっています。

過去の成功体験が未来の成果を保証しない時代

これまでの人材採用では、「どの業界で、どのような実績を上げてきたか」が強く評価されてきました。しかし、その成功体験は、当時の市場環境や競争状況、組織のリソースが揃っていたからこそ成立していたものです。前提条件が変われば、同じ行動を取っても同じ成果が得られるとは限りません。

むしろ、過去の成功体験に強く依存する人ほど、自身のやり方を疑えず、新しい状況への適応が遅れるケースも見られます。経験が豊富であることが、変化への対応力を弱めてしまう場合すらあるのです。経験はあくまで判断材料の一つであり、それ自体が未来の成果を保証する時代ではなくなっています。

変化が速いほど「再現性のない経験」は陳腐化する

デジタル化の進展により、業務ツールや仕事の進め方は短期間で変化します。数年前に高く評価されていた専門知識や業務フローが、すでに現場では使われていないということも珍しくありません。
こうした環境では、特定の経験をどれだけ積んできたかよりも、新しい知識を学び直し、自分のやり方を更新できるかどうかが重要になります。経験の「量」や「年数」だけで人材を判断する採用は、将来の成長可能性を見誤るリスクを高めてしまいます。

これからの人材採用で問われる「伸びる資質」とは

では、経験に代わって何に注目すべきなのでしょうか。

学び続ける姿勢がキャリアと成果を分ける

環境変化が常態化する中で、成長し続ける人の共通点は、「学び続けることを前提にしている」点にあります。新しい知識やスキルを自ら吸収し、必要であればこれまでのやり方を手放す。その姿勢がある人は、状況が変わっても成果を出し続けます。
一方で、学びを止めた瞬間から、能力は相対的に陳腐化していきます。採用において重要なのは、現時点で何ができるかよりも、これから何を学ぼうとしているか、成長に対してどれだけ前向きかという点です。

変化への柔軟性と試行錯誤を楽しめるか

伸びる人材は、変化を「脅威」ではなく「機会」と捉えます。想定外の状況に直面しても、最初から完璧な答えを求めるのではなく、まず試し、失敗から学び、次に活かすことができます。
この試行錯誤を前向きに受け止められるかどうかは、成長スピードに大きな差を生みます。採用の場では、結果の良し悪し以上に、不確実な状況でどのように考え、行動してきたかを見ることが欠かせません。

デジタル人材育成と相性の良い資質

特にデジタル分野では、伸びる資質の重要性がより顕著に表れます。

正解のない課題に向き合える思考耐性

デジタル領域の仕事では、明確な正解が用意されていないことがほとんどです。仮説を立て、検証し、改善を繰り返しながら前に進む必要があります。そのため、不確実な状況に過度なストレスを感じず、考え続けられる思考耐性が欠かせません。
過去の成功事例やマニュアルに頼れない場面でも、自分なりに考え続けられる人材は、育成の過程でも大きく成長します。この力は、経験年数以上に重要な資質です。

他者と協働しながら価値を生み出す力

デジタル人材育成は、個人のスキルアップだけでは成立しません。専門分野の異なるメンバーと協働し、意見をすり合わせながら価値を形にしていく力が求められます。
自分の知識や正解に固執せず、他者の視点を取り入れられる柔軟性は、技術スキル以上に重要です。こうした協働力を持つ人材は、組織全体の学習スピードや変化対応力を高めていきます。

面接で「伸びる資質」を見抜くための視点と工夫

だからこそ、面接での見極め方が重要になります。

スキルではなく「考え方・行動特性」を引き出す質問設計

面接では、「何ができるか」を確認する質問に偏りがちですが、それだけでは伸びる資質は見えてきません。「なぜそう考えたのか」「どのように行動したのか」といった思考や判断の背景を掘り下げる質問が有効です。
困難な状況に直面した経験や、想定外の課題にどう対応したかを聞くことで、成長力のヒントが浮かび上がります。

過去の行動から未来の伸びしろを読み取る観察ポイント

伸びる人材は、失敗や未経験の話題に対しても前向きです。できなかった理由を他責にせず、自分なりの改善点を語れるかどうかは重要な観察ポイントです。
過去の行動に表れた姿勢や価値観を丁寧に読み取ることで、入社後にどこまで成長するかを見極める精度は高まります。

「何をしてきたか」より「どう成長し続けるか」

人材採用において重要なのは、完成された能力を見極めることではなく、成長し続ける力を見抜くことです。学び続ける姿勢、変化への柔軟さ、他者と協働しながら価値を生み出す力は、経験年数や職歴だけでは測れません。
経験偏重の採用から脱却し、伸びる資質に目を向けることで、個人は環境の変化に適応し、組織は持続的な成果を生み出せるようになります。それは、デジタル人材育成をはじめとする、これからの能力開発の土台でもあります。
「何をしてきたか」よりも、「どう成長し続けるか」。この視点を持つことこそが、変化の時代を乗り越える人材採用の本質なのです。

【参考】https://www.bsearch.co.jp/media/potential-recruitment
【参考】https://next.rikunabi.com/tenshokuknowhow/potential-recruitment-point/
【参考】https://www.persol-group.co.jp/service/business/article/301/

この記事を書いた人

ビジネス・テクノロジスト 貝田龍太