AIでオンラインショッピングがより便利に!
ECサイトにおけるAI活用の可能性

ECサイトにAIを活用することによって、個々のユーザーの趣味嗜好に合わせたショッピング体験を提供でき、サプライチェーンも最適化できるなど、さまざまな可能性が開けてきます。では、実際にAIを導入することで、オンラインショッピングはどのように変わるのでしょうか?ECサイトにおけるAI活用の可能性について解説します。

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AIの活用でオンラインショッピングが変わる

ユーザーにおすすめの情報を提供できる

ECサイトの顧客データや閲覧履歴などの情報をAIが分析することによって、一人ひとりのユーザーにとっておすすめの情報を提供することができるようになります。たとえば、ECサイト上でユーザーが閲覧している商品と同じメーカーの商品や、商品の周辺機器などをおすすめすることで、ユーザーの関心を高め購買率をアップさせることができます。

「チャットボット」がサイトからの離脱を減らし、顧客満足度を高める

AIを活用することによって、ユーザーからの質問に「チャットボット」がリアルタイムに答えてくれるので、サイトからの離脱を減らし商品購入に結び付けることができます。迅速で効率的な顧客サービスを提供することで、ユーザーの満足度も高まります。

「不正検知システム」がECサイト上の不正行為を防止する

AIの機能を活用すると、ECサイト内での不正行為を検知し、事前に防止することもできます。そのひとつが、ユーザーがクレジットカードで商品を購入したときに、不正利用か否かを事前に確認できる「不正検知システム」です。
EC事業者を狙うクレジットカードの不正使用は年々増えており、サイト運営者にとって脅威となっています。これまで不正検知は人の目で確認していましたが、不正検知システムを使うことによって、人間よりも正確に不正を検知できるようになります。担当者も必要なくなるので、業務コストを削減できます。

ECサイトにパーソナライズな体験が求められる理由

一人ひとりに合わせた顧客体験がユーザーの満足度を高める

オンラインショッピングにAIを活用する最も大きなメリットは、一人ひとりに合わせた顧客体験が、ユーザーの満足度を高めることです。たとえばブティックに買い物にいったときに、店員さんから自分に似合う服をすすめられ、「それに合わせてこんな小物はどうでしょうか?」と提案されると、そのコーディネートが気に入って両方とも購入することがあります。
自分のために店員が服や小物を選んでくれることに、お客様はとても満足し、「またあのお店を利用しよう」と思うようになります。このようなパーソナライズな経験が、AIの進歩によってリアルの場だけでなく、ECサイト上でもできるようになりました。

潜在顧客の獲得につながる

ECサイト上にパーソナライズな体験ができる仕組みをつくることによって、潜在顧客の獲得につながります。ECサイトの利用者がパーソナライズな体験を求めていることは、すでにさまざまな調査でも明らかです。
 アドビシステムズ株式会社が2019年に行った調査によると、日本の回答者の約6割(57%)が、「実店舗かオンラインかを問わず、パーソナライズされたエクスペリエンスを期待している」と答えました。「コンピューターより人とやり取りしたい」と答えた人は、わずか23%に過ぎず、人と人とのコミュニケーションにはこだわっていないことがわかります。
 商品の購入においてユーザーが求めているのは、人との触れ合いよりも、パーソナライズな体験だということでしょう。「自分は大切にされている」という体験をECサイト上で提供し続けることによって、ユーザーはそのサイトのファンになり、リピーターとなってくれます。

売上がアップする

パーソナライズされた体験を提供することによって、ユーザーがECサイトに滞在する時間は長くなり、結果的に売上アップにつながります。たとえばAmazonでは、ユーザーによってトップページの表示を変えて興味を惹きつけることで、コンバージョン率の向上を図っています。
 また、アパレルサイト「BAYCREW’S STORE」(株式会社ベイクルーズ運営)では、ユーザーが閲覧する商品と類似した商品を「このアイテムに似ているアイテム」として表示し、いろいろな商品を比較しながら選べるようにしています。ユーザーの関心度の高い商品を複数表示することで、購買意欲を刺激し、売上アップにつながります。

【参考】アドビ、消費者のデジタル体験に関する調査結果を発表

サプライチェーンの最適化

在庫管理

ECサイトの運営にとって、サプライチェーンの最適化は重要な課題となっており、コストの削減や効率的な運用を図る上でAIは欠かせない存在となっています。たとえば在庫管理にAIを導入することで、AIカメラを使って在庫状況をリアルタイムで把握することができます。在庫状況を見える化することによって、滞留在庫の検知や発注ミスの防止にもつながります。

需要予測

ECサイトで販売する商品の在庫は、少なすぎると欠品になり、多過ぎると経営を圧迫します。そのため、AIによる需要予測は、適正在庫を知る上で必須事項といえるでしょう。商品の仕入値や売値・購入者の数・属性といった情報をAIが読み込み、集計・分析することで、過剰在庫を抱えるリスクを最小限にすることができます。
的確な需要予測を行うことができれば、売れるとわかっている商品を大量に仕入れてボリュームディスカウントの交渉もでき、より利益を出しやすくなります。

画像認識・音声認識の活用

AIが画像を認識して、ユーザーが求める商品を提案

AIによる画像認識や音声認識の技術を活用することも、ECサイトの運営においては大きなメリットをもたらします。画像認識では、ユーザーが求める商品画像をAIが認識し、それに近い商品を提案することができます。
たとえばユーザーが雑誌などで「こんな服が欲しい」という画像を見つけたときに、それをスマホで撮影してECサイトに送ると、それをAIが認識して類似商品を提案してくれるというサービスもあります。

AIがユーザーの声を認識し、希望に沿った商品を表示

AIが音声を認識することで、ユーザーの希望に沿った商品を提案することもできます。たとえばユーザーがECサイトの検索ボタンを押しながら、「人気の赤いバッグが欲しい」と話しかけると、赤いバッグが人気順に表示されるといった形です。
残念ながら日本は、音声操作にまだ慣れていないこともあり、海外に比べて音声認識機能の活用は進んでいません。しかし音声認識は、インターネット上で最も気軽にコミュニケーションをとれるツールなので、今後普及していくことは間違いないでしょう。ボイスコマースを通じて、企業がさらにパーソナライズされたショッピング体験を提供できるようになる日も、そう遠くはなさそうです。

今後ますます進むECサイトのAI活用

AIのめまぐるしい進歩に、まだ日本のユーザーやECサイト運営者の意識が追いついていないといった感もあるAI活用ですが、今後はそのメリットが認識されるにつれて、ますます進化していくことでしょう。

ユーザーにパーソナライズな体験を提供でき、効率的な在庫管理や需要予測を行い、満足度の向上や売上アップにつなげることができるECサイトのAI活用。今後はチャットボットや画像認識・音声認識などの技術を使うサイトと使わないサイトでは、コンバージョン率に大きな開きができてくるのではないでしょうか。

この記事を書いた人

ビジネス・テクノロジスト 貝田龍太