「シェアリングエコノミー」で社会が変わる!
課題とAI活用による進化の可能性

2008年に民泊紹介サービスの「Airbnb」が登場して以来、カーシェアリングやレンタルスペース、フリーマーケットなど、さまざまな分野に「シェアリングエコノミー」のビジネスが広がりを見せています。シェアリングエコノミー市場調査 2022年版によると、2022年に日本のシェアリングエコノミーの市場規模は過去最高の2兆6,158億円を記録し、2032年には最大15兆1,165億円に拡大すると予測されています。そんな大きな可能性を秘めたシェアリングエコノミーについて、詳しく解説します。
【参考】これからのマーケティングには生成AIが不可欠! マーケティングの課題とAIによる効率化の事例

シェアリングエコノミーとは

モノやスキルなどの資産と、それを使いたい個人などを結ぶサービス

民泊紹介やカーシェアのように、活用可能なモノやスキルなどの資産と、それを使いたい個人などを結び付けるインターネットサービスのことです。

これまでのビジネスモデルは、企業が消費者にモノやサービスを販売する「BtoC」や、企業が企業にモノやサービスを販売する「BtoB」が一般的でした。しかし、シェアリングサービスは消費者同士が取引をするので、そのどちらにも当てはまりません。

消費者同士がモノやサービスのやり取りをする「CtoC」という新たなビジネスモデルであり、企業は消費者同士をつなぐWebサイトやアプリなどのプラットフォームを提供するだけという、新しいビジネスのスタイルが定着しつつあるのです。

シェアリングエコノミーのサービスは5分野ある

シェアリングエコノミーには、大きく分けて5つの分野があります。

1.     空間のシェア(ホームシェア、民泊、駐車場、会議室など)
2.     移動のシェア(相乗り、シェアサイクル、カーシェアなど)
3.     スキルのシェア(家事代行、育児、知識、料理、介護、教育、観光など)
4.     お金のシェア(クラウドファンディングなど)
5.     モノのシェア(フリマ、レンタルサービスなど)

【参考】2022年日本のシェアリングエコノミー市場規模
【参考】シェアリングエコノミー活用ハンドブック

シェアリングエコノミーの代表的なプラットフォーム

シェアリングエコノミーのサービスの中でも代表的なのが、配車アプリの「Uber」と、民泊紹介サービスの「Airbnb」、シェアオフィスの「WeWork」です。それぞれどんなプラットフォームなのか、紹介しましょう。

Uber

「Uber」は、配車から支払いまですべてをスマホで完結できる配車サービスとして、2014年から日本でのサービスをスタートし、マスコミでも話題を呼びました。専用のアプリを使って簡単に車を呼べて、リーズナブルな料金で利用できるため、人気を集めています。
当初は東京都内のみで使えるサービスでしたが、現在は横浜、大阪、名古屋をはじめ、全国のさまざまな都市で利用できるようになりました。本来Uberは一般のドライバーが自分の車に乗せて移送する「ライドシェアサービス」なのですが、日本では白タク(営業許可を受けていないタクシー)の容認につながるという理由から、「タクシー配車アプリ」に留まっています。

Airbnb

シェアリングエコノミーの先駆け的な存在が、「Airbnb」です。個人の持ち家を他人に貸し出すサービスとして急成長を遂げ、民泊という新しい形の宿泊サービスを定着させました。現在は世界191カ国以上で利用されており、使っていない家や空いている部屋を貸したいホストと、民泊を利用したいゲストのニーズをマッチングさせています。

Airbnbを利用することで、サイトやアプリ上で気軽に宿泊予約ができ、ホテルよりも安い宿泊費で民泊を利用することができます。Airbnbでは民泊紹介サービスの他にも、自家用車のシェアや、個人のスキルをシェアするサービスなど、さまざまなシェアサービスを立ち上げています。

WeWork

フリーランスの専用ブースから1000名規模のオフィスまで、用途に合わせた多彩なワークスペースをシェアできるのが、シェアオフィスの「WeWork」です。WeWorkを利用することで、好立地できれいなオフィスを気軽に借りられ、自社に必要な空間を柔軟に拡大・縮小することができます。

また、WeWorkのシェアオフィスを利用すると、通常なら会社運営の経費として重くのしかかるオフィスの内装工事費や原状回復費、敷金を大幅に削減できます。さらに電気代や水道代、Wi-Fiなどのインフラ費用、プリンターやフリードリンクのサービスまですべてメンバーシップ料金に含まれているので、トータルコストを削減できます。

AI技術がシェアリングエコノミーの課題を解決

需要供給の予測と最適化

シェアリングエコノミーのビジネスモデルは、個人間の需要と供給のマッチングを行い、それによって手数料を得ることです。そのため、シェアリングエコノミーのビジネスを発展させるためには、需給予測が欠かせません。

データをもとにさまざまな予測を行うことはAIが最も得意とする分野です。AIがシェアリングエコノミーのサービスの需給予測を短時間に行い、ビジネスに最適化させることができます。

個人間のマッチングの自動化

AIを活用することで、シェアリングエコノミーのサービスの個人間マッチングを自動化することができ、より効率的に個人同士がモノやスキルのシェアをできるようになります。自動化によって人件費を削減できるので、売上アップにもつながります。
また、AIの技術を使うことによってマッチング自体の精度も高まり、顧客満足度を高めることができます。

ダイナミックプライシング

商品やサービスの価格が、消費者と提供者の間の需給バランスによって変動する「ダイナミックプライシング」は、シェアリングエコノミーのビジネスと親和性が高く、多くのシェアリングサービスに導入されています。
AIの技術を活用することによって、このダイナミックプライシングのプロセスの大部分を、自動化することができます。

評価とレビューシステムの強化

シェアリングエコノミーのサイトには、利用者からリアルな体験のレビューが寄せられます。また、利用者と提供者が相互に評価を行うシステムもあります。
こうした評価やレビューのシステムを、AIを活用することによってより強化することができます。たとえばAIの機械学習モデルや不正検出ツールを使って、やらせのない正しい評価やレビューを表示できるようになります。

不正行為の予防

シェアリングエコノミーに付きものなのが、不正行為です。シェアリングエコノミーは個人がサービスの提供者となるため、利用する側としては「本当に信頼しても大丈夫なのだろうか?」という不安が常につきまといます。
これを予防するために活躍してくれるのがAIです。顔認証などを利用した本人確認の徹底などによって、より安全安心に個人間の取引を行うことができます。身分証明書が本物であるかどうかも、AIによって判別することができます。

【参考】eKYCはAIによって自動化ができる?機械判定によるメリットとは
【参考】人工知能技術適用によるスマート社会の実現

ますます進化するシェアリングエコノミー

ミレニアル世代を筆頭として、シェアリングエコノミーの需要が日に日に高まっています。シェアリングエコノミーにはさまざまな種類のサービスがありますが、どのサービスにも共通していえることは、個人が主体となった共助の世界を目指していることです。将来的にはひとつのIDを使って、さまざまなシェアリングエコノミーのサービスを利用できる日が、くるかもしれません。

そんなシェアリングエコノミーが、社会に与えるインパクトは、計り知れないものがあります。たとえばUberの配車サービスが全国に浸透し、国内の車をうまく共有できるようになると、同じ移動量を現状の2割ほどの車の台数で賄えるとも言われています。そうなると車は売れなくなり、タクシー業界も縮小するなど、業界内でさまざまな変化が起こるでしょう。
いずれにしても、シェアリングエコノミーが今後もますます進化していくことは、間違いありません。5年後・10年後の動向に、注目したいところです。

この記事を書いた人

ビジネス・テクノロジスト 貝田龍太