ChatGPTで話題沸騰!
大規模言語モデル(LLM)の威力と活用方法とは

自然言語処理技術を用いた大規模言語モデルのひとつである「ChatGPT」が公開されたのは、2022年12月。その後ChatGPTはあっという間に世界に広がり、空前のブームを巻き起こしたのだが、そもそも大規模言語モデルとはいったい何なのでしょうか。世界を驚嘆させるパワーを秘めた大規模言語モデルの登場と、その影響について解説します。
【参考】話題沸騰!GPTの歴史とChatGPTの可能性、そして利用時に気をつけるべきこととは

大規模言語モデル(LLM)とは

 

非常に巨大なデータと技術を持つ言語モデルのこと

大規模言語モデル(LLM)は「Large Language Models」の略で、非常に巨大なデータセットとディープラーニング技術を用いて構築された言語モデルのことを指します。あたかも人間が話しているかのような流暢な会話でやり取りをすることができ、その精度の高さには驚きの声があがっています。

「大規模」という名称が付けられているのは、これまでの言語モデルに比べて、「計算量」「データ量」「モデルパラメータ数」の3要素が巨大化しているからです。「計算量」とはコンピュータが処理をする仕事の量、「データ量」とはコンピュータに入力したテキストデータの量、「モデルパラメータ数」とはより柔軟なプログラムを作るためのパラメータの量を指します。

3要素を著しく巨大化させた「ChatGPT」

「精度の高さに驚いた」といえば、誰もが思い出すのが、2022年に彗星のごとく現れた「ChatGPT」です。人間の質問に対して、完璧なまでの回答を返す技術のすごさには、驚き以上に脅威を感じた人も多いでしょう。
ChatGPTもまた大規模言語モデルの一種だが、OpenAIは「計算量」「データ量」「モデルパラメータ数」の3要素を著しく巨大化することで、極めてナチュラルに優れた応答をするChatGPTを完成させることに成功しました。
他にも、Googleの「Bard」や、Metaの「Llama」など、数々の企業が大規模言語モデルの開発を進めており、自然言語処理技術の競争も激化しています。

大規模言語モデルはさまざまな用途に活用できる

大規模言語モデルは、「チャットボッド」や「文章の要約」「検索エンジン」「議事録の生成」「ユーザーの声の分析」「翻訳」など、自然言語を用いるさまざまな用途に活用できます。常に改良版が開発されており、会話の流暢さや内容の充実度においても、その進化には目を見張るものがあります。
【参考】大規模言語モデル

オープンな大規模言語モデルを活用するメリット

非常に高い精度の自然言語処理が可能

大規模言語モデルは、大量のテキストデータを学習することによって、文章生成やテキスト分析において非常に高い精度の自然言語処理能力を有しています。そのため、チャットポッドや機械翻訳などにおいて、極めて高い満足度を得ることができます。

たとえば小売業者は、チャットポッドを用いて顧客に優れた顧客体験を提供でき、売上アップにつながります。

質問に対して適切な回答を導き出すことができる

大規模言語モデルはユーザーからの質問に対して、関連する情報に基づいた適切な回答を導き出すことができます。この機能はさまざまなビジネスに活かすことができ、業務の効率化にもつながります。

たとえばChatGPTを活用して自分のビジネスの課題を質問すると、さまざまな方面からの適切なデータを得ることができ、有効な解決策を見つけ出すことができます。

膨大な価値創造の機会を生み出すことができる

大規模言語モデルの中には、今まで機械が学習していないものを予測する技術のひとつである「ゼロショット学習」の機能が備わったものもあります。これによって、人間のような思考を瞬時に理解して生成することができ、さまざまな企業や商取引に膨大な価値創造の機会を生み出すことができます。

日本語に特化したオープンな大規模言語モデル

ChatGPTやBardのように英語をベースとした大規模言語モデルだけでなく、日本語に特化した大規模言語モデルも、着々と開発されつつあります。以下の2例は、いずれも2023年に開発されたばかりのモデルだが、今後の活躍が期待されるところです。

ELYZA-japanese-Llama-2-7b

東京大学・松尾研究室発のAIスタートアップが、2023年8月に日本語に特化した大規模言語モデル「 ELYZA-japanese-Llama-2-7b」をリリースしました。Metaの「Llama2」をベースに、約180億トークンの日本語テキストで、追加事前学習を行ったものです。

Llama2をベースとした理由は、超大規模な事前学習によって、優れた言語能力や知識を備えている点にあります。そこにOSCARやWikipediaなどの少量の日本語データを学習させることで、日本語に特化した高性能の大規模言語モデルを完成させることができました。

PLaMo-13b

株式会社Preferred Networksは、2023年9月に日英2言語を合わせた能力で世界トップレベルの高い性能を持つ大規模言語モデル「PLaMo-13B」を公開しました。
同社は学習に使用できるオープンデータセットを独自に収集・加工し、1.4兆トークンの大規模な日英2言語のデータセットを作成。130億パラメータの事前学習済みモデルとして、テキストや画像、音声、映像、空間情報、ゲノム、センサ値など、さまざまな用途での活用が期待されています。2024年中に商用でのサービス提供の開始を目指しています。

【参考】ELYZAが公開した日本語LLM「ELYZA-japanese-Llama-2-7b」についての解説 : (1) 事前学習編
【参考】日英2言語対応の大規模言語モデルPLaMo-13Bを研究・商用利用可能なオープンソースソフトウェアライセンスで公開

オープンな大規模言語モデルが与える影響

検索機能の向上

大規模言語モデルを用いて検索をすることで、言葉のニュアンスが複雑な検索や、意図を伝えるのが難しい検索などに対しても、より満足度の高い検索結果を生み出すことができます。

記事作成などのコンテンツ生成をサポート

記事や広告の作成など、文章に関するクリエイティブな作業を行う場合には、大規模言語モデルがサポートできる可能性が高いです。今まで人間が行ってきた広告の文章を、大規模言語モデルが提案することで、作業効率を大幅に上げることができます。

ビジネスの効率化

これまで人間が行ってきたカスタマーサポートなどのサービスを、チャットポッドが代わりに行うことによって、ビジネスを効率化させることができます。大規模言語モデルを用いることで、あたかも人間とやり取りをしているかのような、密度の濃いコミュニケーションができます。

教育や学習をサポート

学習教材などを進めるときに、学習して理解できなかった部分を自動で補足してもらうことが、大規模言語モデルを活用することによって可能になります。また、学習をしながら「より専門的な理解を深めたい」と思ったときも、大規模言語モデルが最適な教材や参考資料を提供してくれます。

大規模言語モデルを導入するために

Huggingface

人工知能(AI)のモデルやデータを共有し、利用するためのオープンソースプラットフォームのひとつに、「Huggingface」があります。自然言語の分野などで活用される「Transformers」ライブラリや、画像や音声を扱う分野に強い「Diffusers」ライブラリ、データセットを簡単に扱うことができる「Datasets」ライブラリなどがあります。

ファインチューニング

「ファインチューニング」とは、公開されている学習済のモデルに独自のデータを追加で学習させ、新たな知識を蓄えたモデルを作り出す技術のことです。企業が大規模言語モデルの仕組みを取り入れる際に、プロバイダが提供するデフォルトのLLMにファインチューニングの機能をプラスさせることで、その企業に合ったシステムを作ることができます。

量子化・軽量化

大規模な言語モデルを導入するためには、長い期間と膨大なコストが必要ですが、モデルを量子化・軽量化し、高速化することで短い期間に低コストで導入できるようになります。そのためには、重みなどのパラメータをより少ないビットで表現する必要があります。

最近の大規模言語モデルは、精度とメモリ効率の良さを考慮する傾向にあり、2022年にNVIDIA社から発表されたGPU「H100」は2種類のFP8を導入。大幅なコスト削減と高速化が期待されています。

大規模言語モデルが変える未来

現在は大規模言語モデルの活用も限定的ですが、今後さまざまなプラットフォームが開発され、コスト削減や高速化などが進むことによって、数多くの企業が大規模言語モデルを導入できるようになるでしょう。それによって、企業の生産性向上や働き方改革につながり、日本経済が発展することに期待したいです。

この記事を書いた人

ビジネス・テクノロジスト 貝田龍太