Excelで実践!顧客セグメンテーションのためのデータ分析入門

現代のビジネス環境において、顧客を理解し、適切なマーケティング戦略を立てることは成功の鍵となります。顧客セグメンテーションは、そのための有効な手法であり、顧客を共通の特徴や行動パターンに基づいてグループ分けすることで、よりパーソナライズされたアプローチを可能にします。本記事では、顧客セグメンテーションの基本概念から、実際のデータ分析手法までを詳しく解説します。
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顧客セグメンテーションとは?

顧客セグメンテーションとは、顧客を共通の特徴や行動パターンに基づいてグループ分けする手法です。これにより、各グループに適したマーケティング戦略を立てることができます。

セグメンテーションの種類

・地理的セグメンテーション(顧客の居住地、国、地域、気候など)
・人口統計的セグメンテーション(年齢、性別、収入、職業、教育レベル、家族構成など)
・心理的セグメンテーション(価値観、ライフスタイル、パーソナリティ、興味・趣味など)
・行動的セグメンテーション(購買頻度、購買理由、製品やサービスの使用方法、ブランドへのロイヤルティ)
・顧客の購買段階によるセグメンテーション(リード、見込み客、既存顧客、ロイヤル顧客など)
・利益セグメンテーション(顧客が求める製品・サービスの利益や価値、価格感度)
・使用状況によるセグメンテーション(高頻度ユーザー、中頻度ユーザー、低頻度ユーザー)
・行動変化によるセグメンテーション(新規顧客、離反顧客、復帰顧客)
・チャンネルによるセグメンテーション(オンライン顧客、店舗顧客、モバイル顧客など)

など様々な観点からグループ分けを行うことができます。
【参考】顧客セグメンテーションとは?概要や分類例、実践方法まで解説!

具体例

例えば、ある衣料品店では、顧客を以下のようにセグメント分けしました。

トレンドセッター: 最新のファッションを好む若年層
バリューハンター: セール品を中心に購入する価格重視の顧客
クラシック愛好家: 定番アイテムを好む中高年層
オンラインショッパー: 主にEコマースを利用する顧客

データ分析の必要性とは?

顧客セグメンテーションを行うためには、データ分析が不可欠です。データ分析を通じて、顧客の購買履歴や行動パターンを把握し、効果的なセグメンテーションを実現します。これにより、マーケティングの精度が向上し、顧客満足度の向上や売上増加につながります。

Excelには、データ分析のための強力なツールが用意されています。標準のアドインとして「データ分析」と「ソルバー」があります。「データ分析」ツールは基本的な統計分析を行うのに適しており、記述統計や回帰分析などが可能です。「ソルバー」は最適化問題を解くためのツールで、目標値に到達するための条件を設定し、最適な解を見つけることができます。

より高度な統計分析を行うためには、「エクセル統計」というサードパーティ製のアドインが広く使用されています。エクセル統計を用いることで、因子分析、主成分分析、クラスター分析など、複雑な多変量解析を Excel 上で実行することが可能になります。

因子分析

複数の変数間の相関関係を分析し、潜在的な要因(因子)を見出す手法です。これにより、顧客の行動を左右する主要な要因を特定できます。

主成分分析

データの持つ情報をできるだけ失わずに、少数の新しい変数(主成分)に要約する手法です。これにより、データの次元を削減し、視覚的に理解しやすくなります。

クラスター分析

クラスター分析は、データをいくつかのグループ(クラスター)に分類する手法です。これにより、似た特徴を持つデータをまとめ、セグメント化を行います。

実際に顧客セグメンテーションを作成

5ステップで作成することができます。

Step 1: サンプルデータの準備

まず、以下のような顧客データを用意します。

Step 2: データのクリーニングと正規化

・欠損値や異常値の処理
データの欠損値や異常値は分析結果に大きな影響を与えるため、処理が必要です。Excelでは、欠損値があるセルを確認し、他の値で補完したり、削除したりします。

平均値や中央値で埋める方法や、近似のデータを使うケースもあります。異常値については、グラフや統計指標を使って確認し、分析に悪影響を与える場合は修正や除外を検討します。

・各変数のスケールを揃えるための正規化
正規化とは、データのスケール(単位)を揃える処理です。異なるスケールのデータをそのまま扱うと、分析結果が歪むことがあります。

Excelでは、データを最小値と最大値の範囲で0から1に変換する「Min-Maxスケーリング」や、平均0・標準偏差1に揃える「Zスコア標準化」などの方法を使います。これにより、異なるスケールのデータを公平に比較できるようになります。

Step 3: 主成分分析の実行

次に、主成分分析を行います。結果、以下のような主成分を抽出しました。

主成分の解釈:
第1主成分: 年収と平均購入額に強い正の相関があり、「購買力」を表していると解釈できます。
第2主成分: 年齢に強い負の相関があり、「若年層の高額購入傾向」を表していると解釈できます。
第3主成分: 平均購入額に強い正の相関があり、「収入に対する相対的な購入額」を表していると解釈できます。

Step 4: クラスター分析の実行

主成分分析の結果を用いて、k-means法によるクラスター分析を行います。

k-means法によるクラスター分析は、データを似た特徴を持つグループ(クラスター)に分ける手法です。

まず、ユーザーが指定した数のクラスタ中心(重心)をランダムに設定します。その後、各データ点を最も近い中心に割り当て、クラスタを形成します。次に、各クラスタの重心を再計算し、データの再割り当てを繰り返します。これを重心が安定するまで繰り返すことで、データが最適なクラスタに分類されます。
【参考】「クラスター分析」をわかりやすく解説!やり方と事例

Step 5: 分析結果の解釈とマーケティング戦略

顧客を以下のようなクラスタに分けることができました。

ライフスタイル重視グループ (CL1):
主な特徴: 飲食やカフェ、雑貨店の利用が多い
マーケティング戦略: SNSを活用したプロモーション

実用派グループ (CL2):
主な特徴: 日用品や食料品の購入が中心
マーケティング戦略: お得な情報の提供

ファッション重視グループ (CL3):
主な特徴: アパレルや化粧品の購入が多い
マーケティング戦略: ファッションイベントの開催

高額消費グループ (CL4):
主な特徴: 高級ブランド品や電化製品の購入が多い
マーケティング戦略: VIP顧客向けイベント

家族向けグループ (CL5):
主な特徴: 子供向け商品や家族で楽しめるサービスの利用が多い
マーケティング戦略: 家族向けイベントの開催

これらのクラスターを活用することで、各グループの特性に合わせたターゲットマーケティングが可能となり、顧客満足度の向上や売上増加につながる可能性があります。また、新規顧客に対しても、その購買行動から適切なクラスターに分類し、効果的なアプローチを行うことができます。

効果的な顧客セグメンテーションのためのデータ活用

顧客セグメンテーションは、データ分析を駆使して顧客の特性を理解し、ターゲットを最適化する重要な手法です。適切なセグメンテーションを行うことで、顧客ごとに最も効果的なマーケティング施策を展開し、売上の最大化や顧客満足度の向上を図ることが可能です。データクリーニングや正規化、主成分分析、クラスター分析といったExcelで実行可能な分析手法を活用し、実践的な顧客分析を進めることが成功のカギとなります。

この記事を書いた人

ビジネス・テクノロジスト 貝田龍太