リモート接客に欠かせないWebRTCを解説

リモートワークを取り入れている会社の増加に伴い、ビデオ会議やボイスチャットの利用が当たり前になってきています。それらを支えているのはWebRTCというリアルタイムの通信を実現するプロジェクトです。では、WebRTCではビデオ会議やボイスチャット以外にどのようなことができるのでしょうか。

今、ますますその可能性を広げており、他の技術と融合することで、リモート接客やVRライブ配信といった様々な用途にも活用できます。

WebRTCとは

WebRTCとは「Web Real-Time Communication」の略称で、ビデオチャットやボイスチャットなどのリアルタイムコミュニケーションをWebブラウザのみで行うことができる技術のことです。これにより、物理的に離れている相手とのコミュニケーションが可能になりました。近年増えているリモートワークの環境下でも会議ができるのはWebRTCのおかげと言えます。

WebRTCに対応している対応ブラウザ

WebRTCに対応しているブラウザは、パソコンではGoogle Chrome、Microsoft Edge、Mozilla Firefox、Safari、Operaとなり、多くの人が日常使用しているブラウザで対応していると言えます。また、モバイル環境で使用するOSでは、AndroidはGoogle Chrome、Mozilla Firefox、Opera Mobile、iOSはSafariとなっています。

WebRTCの利用例

どのような場面でWebRTCを利用できるのでしょうか。
コロナ禍で様々な事柄がオンライン対応へと変わってきています。WebRTCは映像や音声などの容量が大きいデータをリアルタイムに送受信できたり、P2P(ピアツーピア)と言われるクライアント・サーバー方式とは異なり、クライアント同士が直接つながることで処理を行う仕組みを持っていたりするため、様々なオンライン対応の場面でWebRTCが利用されています。

具体例としてビジネスシーンでは、ビデオ会議、Web面接、オンライン営業などが挙げられます。その他にオンライン英会話やオンライン学習塾など教育の場面、フィットネス、オンライン配信など趣味の場面であったりと幅広く利用されています。

WebRTCを用いる活用事例

コロナ禍で非接触が推奨されるようになり、顧客の動向も変化してきています。それに対応すべく、オンラインショッピングだけでなく店頭でもリモート接客を用いることで非接触に対応できるようになってきました。

リモート接客にWebRTCの技術を用いることで、どう変化するのかを見てみましょう。

ギグワークス株式会社と凸版印刷株式会社のリモート接客

2020年9月1日より、ギグワークス株式会社と凸版印刷株式会社は協業を開始し、AIを活用した「リモート接客」システムの共同開発に着手しました。

これにより、遠隔でリアルタイムに顧客との対話ができるだけでなく、同時にマーケティングに必要なデータの取得も実現しています。

P2Pの通信網を利用することで得られるデータ

AIリモート接客では、サイネージとオペレータの間はP2Pの通信網で結ばれています。

これによって、以下の事柄が可能になります。

・販促活動のデジタル化
・接客スクリプトの自動生成
・店頭での消費行動データの収集

このように、単純に離れていても接客ができるというメリットだけでなく、接客をしながらスタッフの接客に対する顧客の反応を可視化し、それを元に接客スクリプトを生成できるというメリットもあります。こうしてできた接客スクリプトを使用し、経験の浅い販売員の接客スキルを向上させることも可能になるのです。

P2Pの大いなる可能性

WebRTCではP2Pの技術を用いることによって、大容量データ通信の高速化を図ることができます。クライアント・サーバー方式でネックとなっていたサーバーへの負荷を気にせずに行うことができるのは大きな強みです。その一方で、管理者のいないP2Pではリスクがあることも覚えておかなければなりません。

クライアント・サーバー方式の問題点

クライアント・サーバー方式では、Webサーバーの場合、クライアントからサーバーに接続して処理を実行してもらい、その結果がクライアントに返ってきます。

ここで問題になるのが、サーバーやネットワークに障害が起こった場合です。この場合、クライアントはサーバーにアクセスできなくなってしまいます。

また、クライアントに多くアクセスが集中すると、処理が遅くなったり障害が起こってしまうでしょう。

こうならないためには、サーバーを複数台用意したり、ネットワーク回線を多重化したりする必要があるため、コストもかかります。

P2Pのメリットとデメリット

P2Pはクライアント同士が分散してつながっているため、どれか一つのクライアントが停止してしまっても、システム全体が停止してしまうことはありません。また、管理者不在のため、管理コストがかからないのもメリットの一つと言えます。

一方で、セキュリティリスクがあることは否めません。クライアント同士が直接繋がっているため、ウイルスが混入しているファイルを受け取ったり、重要データを誤って送ったりしてしまうこともあります。そして、それを食い止める手段がないことも大きなリスクです。

P2P技術の可能性

NHKではロンドンオリンピックの際、P2P技術を用いたライブ配信を行い、テレビやラジオで放送されない競技をインターネット上で生配信し、低コストで安定したライブ配信を多数の視聴者に提供できたという結果を残しています。

このように、大容量のデータ通信でもP2Pの技術を活用することで、サーバーが落ちてしまう心配をすることなく進めることができます。

【参考】「ロンドンオリンピックにおけるP2Pライブ配信実証実験」

WebRTC × VR = 一段上の接客

WebRTCとVRを融合させると、一段上のサービスを提供することが可能になります。アバターを介して高速通信でのリモート接客をすることによって、消費者としては現実の世界とはまた違った楽しみ方ができます。

WebRTCとVR

WebRTCでは容量の大きな映像や音声をリアルタイムで送受信できるので、ビデオ通話やリモート接客が可能であることはお伝えしました。この技術に2Dまたは3DのVRアバターを組み合わせることで、よりエンターテイメント性の高い接客が可能となります。

VR接客の活用例

VRを活用したリモート接客にはどのようなものがあるか見ていきましょう。

デジタルサイネージを設置すれば、そこに映し出されたバーチャルキャラクターを通じてリモート接客ができます。

新型コロナウイルスの収まりが見えない中、医療機関での初診対応にリモート接客を用いれば感染リスクが下がるでしょう。また、人が多く集まる公共交通機関や商業施設での案内業務もリモート接客が可能です。タッチパネルを置くだけで対応することも可能ですが、バーチャルキャラクターを通すことで、殺伐とした病院内や公共交通機関でも温かみのある接客が可能となるでしょう。

これからの時代に欠かせないWebRTC

リモートワークがメジャーになりつつある昨今、WebRTCの存在は今後当たり前となってくるでしょう。P2Pによるデータ通信を利用すれば、応用の可能性はさらに広がります。

WebRTC導入はハードルが高いと感じるかもしれませんが、全く新しいシステムを一から構築しなくても既存のシステムに導入することができるので、コスト的にも導入しやすいでしょう。接客もリモートが当たり前になってくるこれからの時代、WebRTCを導入することで新しい世界を開らくことができるのではないでしょうか。

この記事を書いた人

ビジネス・テクノロジスト 貝田龍太