今日から始める!カスタマージャーニーマップの作り方

カスタマージャーニーマップは、顧客が商品やサービスを認知し、購入し、体験するまでの全プロセスを可視化するツールです。これを正しく活用することで、顧客満足度の向上やマーケティング戦略の最適化が可能になります。本記事では、カスタマージャーニーマップの基本から作成方法、さらには活用のコツまでを、具体例を交えて詳しく解説します。

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カスタマージャーニーマップとは?

カスタマージャーニーマップは、顧客の視点で購買プロセスや接触点(タッチポイント)を整理するツールです。これにより、顧客体験の全体像を理解し、課題を特定して改善することが可能です。

カスタマージャーニーマップの重要性

顧客理解の深化:顧客のニーズや課題を明確化。
戦略の最適化:マーケティングや営業のアプローチを調整。
顧客満足度の向上:顧客の期待に沿った体験を提供する。

カスタマージャーニーマップの基本要素

ペルソナ(顧客像)
具体的な顧客モデルを設定し、行動パターンや課題を把握します。

タッチポイント
顧客がブランドやサービスに接触する全ての場面。

顧客の行動、思考、感情
各段階で顧客が何を考え、どのように感じているかを分析。

タイムライン
認知から購入、さらに推奨・再購買までの時間軸。

これらの要素を考えてカスタマージャーニーマップを作成していきます。

カスタマージャーニーマップ作成の手順

食料品店を例に具体的な手順を解説します。

手順1. 目的の設定
カスタマージャーニーマップを作成する目的を明確にします。
例: 顧客満足度の向上、離脱率の低減、新規顧客獲得プロセスの改善 など。

手順2. ペルソナの作成
理想的な顧客像(ペルソナ)を作成します。
人口統計学的データ、行動パターン、目標、課題などを含めます。
ペルソナ作成のコツは下記です。

・実際の顧客データを活用すること
・部門横断的な意見を反映すること
・ 詳細すぎず具体的な特徴を含めること

<ペルソナの例>
名前:佐藤 美香(さとう みか)
年齢:35歳
性別:女性
職業:パート(週3日)
家族構成:夫(37歳、会社員)、子供2人(小学2年生、4歳)
居住地:東京都江戸川区(マンション)
年収:世帯年収650万円

行動パターン:
 週2回程度の食料品の買い出し(主に平日午前中)
 子供の送迎の合間に買い物
 スマートフォンでレシピ検索をよく行う

目標:
 家族の健康を維持するための栄養バランスの良い食事作り
 限られた時間で効率的に家事をこなすこと
 食費の節約と食品ロスの削減

課題:
 仕事と育児の両立による時間的制約
 子供の好き嫌いへの対応
 食材の鮮度管理と使い切り

手順3.タッチポイントの洗い出し
タッチポイントとは顧客がブランドや製品・サービスと接触する全ての機会や場所のことを指します

オンライン:
 ウェブサイト:店舗の営業時間、特売情報、レシピ提案を掲載
 ソーシャルメディア:Instagram、Facebookで旬の食材や簡単レシピを紹介
 Eメール:会員向けのセール情報やクーポンを配信
 オンライン広告:GoogleやFacebookでターゲティング広告を展開
 スマートフォンアプリ:買い物リスト作成、クーポン管理、ポイント確認機能を提供

オフライン:
 店舗:商品陳列、POP、試食コーナー、レジでの接客
 電話サポート:商品の在庫確認、予約注文の受付
 イベント:季節の食材を使った料理教室、子供向け食育イベントの開催
 パンフレット:週刊チラシ、季節のレシピ集の配布
 店頭ポスター:特売情報、新商品案内の掲示

直接的:
 商品使用:購入した食材を調理・喫食する体験
 カスタマーサービス:店内での商品案内、苦情対応
 ポイントカード:利用時のポイント付与、特典の提供

間接的:
 口コミ:ママ友との会話、地域のコミュニティでの評判
 レビュー:食べログなどの口コミサイトでの評価
 メディア報道:地域情報誌での紹介、テレビの食品特集での取り上げ
 SNSでの投稿:顧客が購入した商品や料理の写真をSNSに投稿

ペルソナの場合、どのようなタッチポイントが考えられるのかを挙げていきます。

<佐藤美香さんの行動パターンに合わせたタッチポイントの例>
・平日午前中の店舗での買い物時の接客や商品陳列
・スマートフォンアプリでのレシピ検索と連動した商品提案
・子育て世代向けのSNS広告(時短レシピ、栄養バランスの良いメニュー提案)
・食品ロス削減のためのお得な情報をEメールで配信
・子供向け食育イベントの案内チラシを店頭で配布

手順4. 顧客の行動、思考、感情の記述

顧客の行動において、どのような思考か、どんな感情かを簡単に記述します。

1. スマートフォンアプリでのレシピ検索
 行動:朝食の準備中に、残り食材を使ったレシピをアプリで検索する
 思考:「今日の夕食に使える簡単レシピはないかな」「食材を無駄にしたくない」
 感情:期待(+)、少し焦り(-)

2. 店舗での買い物
 行動:子供の送迎の合間に来店し、セール品を中心に効率よく買い物をする
 思考:「特売品を買ってお得に済ませよう」「子供の好きな野菜はどれかな」
 感情:集中(+)、時間的プレッシャー(-)

3. レジでの接客
 行動:ポイントカードを提示し、商品を精算する
 思考:「ポイントはたまってるかな」「レジ待ち行列が長くて急がなきゃ」
 感情:焦り(-)、達成感(+)

手順5. タイムラインの設定

カスタマージャーニーのタイムラインとは、顧客が特定の製品やサービスに関わる際に経験する一連のステップを、時間の流れに沿って整理したものです。これにより、顧客の体験を時系列で視覚化し、理解しやすくします。

1. 認知段階(数週間前)
 SNS広告で店舗の食育イベントを知る
 ママ友から店舗の評判を聞く

2. 興味・関心段階(1週間前)
 店舗のウェブサイトで営業時間や特売情報を確認
 食べログで店舗のレビューを読む

3. 考慮段階(数日前)
 Eメールで受け取ったセール情報をチェック
 スマートフォンアプリで買い物リストを作成

4. 決定段階(買い物当日)
 子供の送迎の合間に来店を決意
 店頭ポスターで特売情報を確認

5. 購買段階(店舗内)
 店内を回り、必要な商品を選択
 試食コーナーで新商品を試す
 レジで精算、ポイントカードを使用

6. 使用段階(購買後数日間)
 購入した食材で料理を作る
 アプリのレシピ提案を参考に調理

7. 評価段階(使用中〜使用後)
 家族の反応を確認
 食材の品質や鮮度を評価

手順6. マップの作成と可視化

書き出した項目を可視化するために表にします。

<可視化の例>

作成時の注意点

1. グラフィックツールの活用:
 Excel, PowerPoint, または専門的なカスタマージャーニーマッピングツールを使用して、より視覚的に魅力的なマップを作成します。

2. 色分けの活用:
 感情のポジティブ/ネガティブを色で表現(例:緑=ポジティブ、赤=ネガティブ)
 各段階を異なる色で区別し、全体の流れを把握しやすくします。

3. アイコンの使用:
 各タッチポイントを表すアイコンを追加し、視覚的な理解を促進します。

4. サブマップの作成:
 必要に応じて、特定の段階をより詳細に展開したサブマップを作成します。

5. チーム内での共有と改善:
 マップを大きく印刷し、チームミーティングで共有します。
 付箋を使って、各メンバーのアイデアや気づきを追加します。
 定期的にマップを更新し、最新の顧客動向を反映させます。

カスタマージャーニーマップ作成のコツ

1. 実際の顧客データを活用すること
アンケート調査、インタビュー、ウェブサイトの行動データ、CRMデータなど、実際の顧客から得られたデータを使用します。これにより、仮説や推測ではなく、実際の顧客行動に基づいたマップを作成できます。

2. Excelのデータ分析ツールを利用した顧客セグメンテーション
Excelのピボットテーブルや条件付き書式を使用して、顧客データを視覚化。クラスター分析ツールを使用して、類似した特徴を持つ顧客グループを特定します。これにより、より精緻なペルソナ設定が可能になります。

3. 生成AIによる顧客行動・思考・感情の分析
顧客レビューや問い合わせ内容をAIに分析させ、共通のパターンや感情を抽出。SNSデータを分析し、ブランドに対する感情や意見を把握します。AIによる予測モデルを使用して、将来の顧客行動を予測し、マップに反映させます。

これらの方法を組み合わせることで、より正確で洞察に富んだカスタマージャーニーマップを作成することができます。

カスタマージャーニーマップの活用方法

1.顧客体験の改善点の特定
 例: 食料品店のカスタマージャーニーマップで、レジ待ち時間が顧客のストレスポイントであることが判明。これを受けて、セルフレジの導入やレジ係の増員を実施し、待ち時間を削減。

2.新規サービス・製品の開発
 例: 食材宅配サービスの開発。カスタマージャーニーマップから、平日の買い物時間確保が困難な顧客が多いことが判明。これを受けて、週間メニュー提案付きの食材宅配サービスを開発し、新規顧客を獲得。

3.マーケティング戦略の立案
 例: SNSを活用したレシピ提案キャンペーン。カスタマージャーニーマップから、顧客が料理のアイデアを求めていることが判明。Instagram上で#簡単晩ごはんキャンペーンを実施し、顧客エンゲージメントが向上。

カスタマージャーニーマップ作成ツール

1. KARTE (カルテ)  
特徴: リアルタイムの顧客行動分析が可能   
顧客に合わせた最適な提案ができる
スピーディーでフレキシブルな対応が可能 
【参考】https://karte.io/

2. Marketing Cloud (セールスフォース)  
特徴: 複数チャネルの統合管理が可能   
顧客データと購買履歴などの情報を活用   
レポート機能が充実 
【参考】https://www.salesforce.com/jp/marketing/

3. Google スプレッドシート/スライド  
特徴:無料で利用可能   
チーム間での共有・編集が容易   
シンプルな機能でカスタマイズが可能
【参考】https://workspace.google.com/intl/ja/products/slides/

4. Figma  
特徴: クラウドベースのコラボレーションツール   
視覚的に優れたデザインが可能   
無料のテンプレートあり 
【参考】https://www.figma.com/ja-jp/

5. HubSpot Marketing Hub  
特徴: マーケティングオートメーション機能が充実   
CRMと連携可能   
顧客データの分析と活用が容易
【参考】https://www.hubspot.jp/products/marketing

まとめ

カスタマージャーニーマップは、顧客体験を可視化し、行動・思考・感情を深く理解するための重要なツールです。この記事では、マップの基本要素や作成手順を解説し、食料品店を例に具体的な活用方法を示しました。

ペルソナ作成やタッチポイントの洗い出し、タイムライン設定を通じて、顧客視点の改善点や新たなビジネスチャンスを発見できます。これを活用すれば、顧客満足度向上や効率的なマーケティング戦略の実現が可能です。あなたのビジネス成長にぜひ役立ててください!

この記事を書いた人

ビジネス・テクノロジスト 貝田龍太