近年AI(人工知能)技術が発達し、ビジネスや社会の場で大きな役割をはたしています。
しかしながら、AIと聞いてどのような問題解決の手法を用いているか理解している人は少ないのではないでしょうか。
AIは機械学習や深層強化学習のイメージが強いですが、すべての課題において最適な解決法ではなく、非現実的なデータが必要な場合があります。特に、意思決定を得たい時の解決法として用いられるのが「数理最適化」の手法です。数理最適化の技術は知識と経験が必要なため作業に時間がかかり、条件を100%設定することができないことが問題とされてきました。しかしながら、AI技術の活用によって高度な答えを算出できることが可能になっています。
数理最適化の理解を深めAI技術を活用し、実務の効率化を目指していきましょう。
数理最適化について
近年AI技術は、判断を自動で行うことにより従来よりも適切で高度な答えを算出することが求められています。その手法として用いられているのが数理最適化で、AIの要素の一つです。
では数理最適化とはどのようなことか、メリットを含めて見ていきましょう。
数理最適化とは?
数理最適化(数理計画法)とは問題解決の手法で、因果関係や規則、必要なデータの中で最適解を導き出すものです。未来の予測値を算出する機械学習に対し、数理最適化はその予測値を使用してシミュレーションし、意思決定を自動化することをいいます。
数理最適化問題は数理計画問題とも呼ばれ、多くの問題は数理モデル(数式)として捉えられています。
数理最適化問題は、制約条件の種類などによって分類されており、線型計画問題、非線型計画問題、整数計画問題などがあります。
数理最適化のメリット
数理最適化は予測値から意思決定を自動化するため、答えまでの労力と時間を大幅に短縮できることが大きなメリットです。人力で運用計画について答えを導くには、データをもとに過程からすべて考えていかなければいけません。数理最適化を使用することにより、これまで必要だった手間と時間を削減が可能なだけでなく、コスト削減にも繋がります。
また、需要や供給の変化によって運用計画を作成しにくい事象でも、数理最適化も用いた最適化ツールを使用することにより、変動を含んだ運用計画を作成することが可能です。
数理最適化による巡回ルート(セールス)の最適化について
数理最適化問題の中で有名なのが、巡回ルート(セールス)問題です。
巡回ルート(セールス)問題は、組み合せ最適化問題で昔から多くの人が挑戦していますが、事実上スーパーコンピュータでも最適解を求めることは困難だと言われています。
しかしながら様々な解法が発案され、その解法はいろいろな分野で応用し業務の改善に利用されています。
では、巡回ルート(セールス)問題の応用例を見ていきましょう。
巡回ルート(セールス)問題とは
巡回ルート(セールス)問題とは、すべての都市を一度ずつ巡って出発地に戻るときに総移動距離が最小になるものを求める問題で、有名な組み合せ問題です。
理論上はすべての組み合せを調査すれば可能になりますが、組み合せの数が爆発的に増加するため、現実的には不可能です。
例えば10都市を巡ると組み合せ総数は181,440通りとなりますが、これが20都市になると1,216,451,004,088,320,000通り、30都市になると132,626,429,906,095,529,318,154,240,000,000通りという途方もない数になります。こうした膨大な組み合せを総当りで計算するには、スーパーコンピュータを用いても100億年以上かかると予想されます。
巡回ルート(セールス)問題を応用した実用例
巡回ルート(セールス)問題の考え方は、様々な分野で応用ができます。例えば、運送会社の配送・集荷経路の作成やコンビニなどの商品補充はまさに数理最適化による考え方です。
特に運送会社では移動中の休憩を実装したうえで荷物回収時の経路最適化ができ、大規模集積回路でも応用されています。
ギグワークスクロスアイティが提案するAI技術の活用
訪問調査は担当者の割り当てや巡回経路を決めるなど、容易ではない業務です。
従来の巡回ルートの決定はマネージャーの経験と勘が頼りで、データに基づく確実性のない物が多くありました。
そこで訪問調査業務を得意とする、ギグワークスのAI技術の活用を紹介します。
【参考】「凸版印刷とギグワークス、「AIリモート接客」で顧客の反応を可視化 _ 凸版印刷」
ギグワークスクロスアイティの強み
ギグワークスクロスアイティの強みは、最新技術を活用し、システムライフサイクルのすべてに関わる多くのプロジェクト実績があることです。
現在では、訪問業務自動化・効率化にAI技術が活用され、割り当てや巡回経路の最適化にもAI技術が応用できます。
しかしながら、案件ごとに規模や人数は様々で刻々と変化する場合もあります。こうした変化を先読みし、短いスパンでプログラムを改良していく技術が必要です。
ギグワークスは単なる最適化だけでなく、さらにフィールドを広げての対応ができるのです。
客先訪問・調査案件の具体的な事例
ひとつの事例として、複数メンバーによる客先訪問・調査案件を取り上げます。客先訪問・調査はエリア内に散らばった訪問先を、メンバーが分担して効率的に巡回する必要があります。ギグワークスでは直ちに実現できるソリューションとして、まずはk-means法によるクラスタリングを実装しました。
しかし各班の担当数を揃えたい、午前と午後で区分けしたい、といった詳細な条件があったため、随時マネージャーが割当を調整する必要がありました。マネージャーの負担は大幅に軽減しましたが、まだ経験と勘に依存した部分が残っていたため、ギグワークスでは動的計画法を応用した改良プログラムを設計・開発しました。段階的に業務負荷を軽減し、サービス全体の最適化を目指しています。
最適化導入のプロセス
数理最適化の多くはプロジェクトとして導入しています。数理最適化プロジェクトは特有の難しさがあり、設計段階では要件が決まらず、完成までに工数や時間がかかりやすいことが特徴です。
最適化導入をできる限りスムーズに行うため、ここでは導入のプロセスを紹介します。
問題整理
何を意思決定するのか、実践的なルールや制約は何か、何を「最大化」「最小化」「平準化」するかを整理しておくことが大切になります。数理最適化はデータに基づいて適切な判断をするため、目標を実現するために必要なデータを揃えておくことが大前提です。またデータの入手先と入手方法を明確にしておくといいでしょう。
最適化モデルの構築
整理した問題を数式に表します。数式は変数、制約条件、目的関数で表し、最適化モデルを構築します。構築の際、ルールや制約に基づくものであれば比較的簡単ですが、明文化されていない条件を設計段階ですべて出し切るのは不可能なことが多いため、必要な条件を洗い出していくことが大切です。
最適化モデルの検証
できあがった最適化モデルの最適解を検証します。数学的に最適解として出た結果は必ずしも現実の意思決定にはならないため、必要に応じて制約条件の再検討を行います。繰り返し行うことで、目的にあったシステムに近づけるでしょう。
システム化
検証までで納得がいくものができたら、システム化を行います。システム化すると修正が困難なため、すべての事項に問題がないことを確認しましょう。作成した最適化モデルを形式にあわせると、他のシステムに組み込んだり、並行して開発を進めたりすることが可能です。
AI技術を活用して数理最適化を
数理最適化は、AI技術を活用することで実務に大きなメリットがあります。それはコストや時間の削減だけでなく、今まで人力では解決できなかった答えを導くことが可能です。
AI技術の知的処理の高度化は今後さらに発展し、より多くの分野で応用されていくことが予想されます。
AIのコア技術でもある数理最適化を理解し、より多くの実務に応用することはどの分野においても必要不可欠になってくる時代になることでしょう。