
コールセンターの現場では、人手不足や応対品質のばらつき、記録作業の負担増、多チャネル対応の複雑化など、日々さまざまな課題が噴出しています。
こうした悩みを根本から解決し、顧客満足度と業務効率の両立を実現する切り札として注目されているのが「AI搭載型CRM」です。
本記事では、現場の課題診断から、AI搭載型CRMの最新機能・サービス比較、実際の導入ストーリー、そして自社での導入に役立つチェックリストまで、徹底的に分かりやすく解説します。
「どこから手をつければいいの?」「本当に効果が出るの?」といった疑問を持つ方にも、AI時代のコールセンター運営のヒントが必ず見つかるはずです。
AI活用による現場変革の最前線を、ぜひご一読ください。
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コールセンターAI導入診断 ― こんなお悩みありませんか?
コールセンター運営者・管理者の皆さま、現場でこんな悩みはありませんか?
AI導入の第一歩は「自社の課題を正しく把握すること」です。以下のリストで、現場の課題をセルフチェックしてみましょう。
- 人手不足が慢性化し、オペレーターの採用・育成が追いつかない
- 応対品質にばらつきがあり、顧客満足度やクレーム対応に課題を感じている
- 電話がつながりにくく、顧客の待ち時間や「あふれ呼」が増えている
- オペレーターの後処理(ACW)や記録作業に時間がかかり、業務効率が悪い
- 多様なチャネル(電話・メール・チャットなど)への対応が煩雑で、情報管理が追いつかない
- 応対履歴やナレッジが属人化し、新人教育や情報共有に手間がかかっている
- コスト削減や業務効率化を進めたいが、現場の負担がなかなか減らない
- AIや自動化に興味はあるが、どこから手を付けて良いか分からない
- 顧客データや会話内容の分析ができておらず、サービス改善に活かせていない
- セキュリティや個人情報保護の観点で、新しいシステム導入に不安がある
そのお悩み、AI搭載型CRMで解決できます!
AI搭載型CRMは、これらの課題に対して次のような解決策を提供します。
- 業務効率化:音声認識AI・自動要約・FAQレコメンドで記録・対応工数を大幅削減
- 応対品質の均一化:AIによるナレッジ自動提示・感情分析で誰でも高品質な応対を実現
- 多チャネル一元管理:全ての問い合わせを一元化し、情報の分散や属人化を防止
- データ活用によるサービス改善:AIがVOCや応対履歴を自動分析し、改善サイクルを加速
- セキュリティ・ガバナンス強化:信頼性の高いプラットフォームで個人情報も安全に管理
では、AI搭載型CRMが実際にどのようにコールセンターの課題を解決し、現場を変えていくのか、具体的な機能や導入効果を詳しく見ていきましょう。
AI搭載型CRMの進化とコールセンターの現状

コールセンター業界は今、大きな転換点を迎えています。人手不足や離職率の高さ、応対品質のばらつき、膨大な記録作業といった課題が慢性化し、従来型のCRMや自動化ツールだけでは限界が見え始めています。一方で、AI技術の進化は目覚ましく、2025年現在、AI搭載型CRMはコールセンター運営の“当たり前”になりつつあります。
AI搭載型CRMの主な機能と特徴
- 音声認識AI:通話内容をリアルタイムでテキスト化し、記録作業や後処理(ACW)を自動化。応対履歴の精度と効率を大幅に向上。
- FAQレコメンド・ナレッジ自動提示:AIが問い合わせ内容を解析し、最適なFAQやナレッジをリアルタイムでオペレーターに提示。新人でもベテラン並みの応対が可能に。
- 感情分析AI:顧客の声のトーンや発言内容から感情を自動判定。クレームや不満の兆候をリアルタイムで検知し、迅速なエスカレーションや品質管理に活用。
- 自動要約・応対履歴自動生成:生成AI(ChatGPTなど)と連携し、通話内容の要約や応対履歴の自動作成を実現。
- 多チャネル一元管理:電話、メール、チャット、SNSなど複数チャネルの問い合わせを一元管理し、情報の分散や属人化を防止。
代表的なAI搭載型CRMサービス(コールセンター向け)
- Salesforce Service Cloud Einstein
世界的CRMプラットフォームSalesforceのAIサービス。問い合わせ自動分類、チャットボット、オペレーター支援など多機能。既存のSalesforce環境との連携やカスタマイズ性が高く、大規模運用にも対応。 - Zendesk AI
カスタマーサポートに特化したグローバルCRM。AIによる自動応答、インテリジェントルーティング、会話要約、ナレッジ提案などを備え、オムニチャネル対応も強力。直感的なUIで運用しやすい。 - デコールCC.CRM
コールセンター専用に設計された国産CRM。AIによるリアルタイム音声認識や自動要約、FAQ自動レコメンド、感情分析など、現場の業務効率化と応対品質向上に強み。20年以上の運用実績と手厚いサポート体制も特徴です。 - Freshdesk Freddy AI
使いやすさとコストパフォーマンスに優れるクラウド型CRM。AIによるFAQ提案や自動応答、感情分析、応対履歴の自動作成など、中小規模のコールセンターにも最適。 - Nextiva
米国発のクラウド型CRM。AIによる通話分析、インテリジェントルーティング、SMSやチャット連携など多機能を搭載。レポートダッシュボードやIVR(自動音声応答)も充実し、柔軟な運用が可能。
AI搭載型CRMは、規模や業種を問わずコールセンターの業務効率化・品質向上に大きく貢献しています。
コールセンター現場のリアルな変化
従来はベテランオペレーターに頼っていたノウハウや応対品質が、AIのナレッジ自動提示や感情分析によって新人でも安定して発揮できるようになりました。
また、音声認識AIや自動要約機能により、オペレーターの記録作業や後処理の負担が大幅に軽減。これまで1件あたり数分かかっていたACWが、数十秒で完了するケースも増えています。
AIがVOC(顧客の声)や応対履歴を自動で分析し、サービス改善サイクルを高速化できる点は、従来のCRMにはなかった大きな進化です。
「どの問い合わせが多いのか」「どの応対がクレームにつながりやすいか」といった傾向をAIが自動で可視化し、マネジメント層が戦略的な意思決定を行いやすくなっています。
多様化・高度化するAI活用と今後の展望
2025年現在、AI搭載型CRMは単なる自動化ツールから、自律的に判断し、学習し続ける“AIエージェント”へと進化しています。
たとえば、AIがオペレーターの対応履歴や顧客属性、過去のクレーム傾向まで総合的に分析し、「次に起きそうな問い合わせ」や「離職リスクの高いオペレーター」を予測。現場の負担を先回りして軽減するソリューションも登場しています。
今後は、生成AIによる自動応答の高度化や、顧客ごとに最適化されたパーソナライズ応対、さらにはAI自身がサービス改善提案まで担う“次世代型コールセンター”の実現が期待されています。
導入時の注意点と課題
一方で、AI導入には「現場の業務フローや課題を正しく把握する」「AIの判断根拠や説明性を担保する」「セキュリティ・個人情報保護を徹底する」などのポイントも不可欠です。
システム選定や運用設計を誤ると、逆に現場の混乱やコスト増につながる恐れもあるため、段階的な導入や現場との対話を重視した運用が求められます。
AI導入を成功させるには、現場の声と経営戦略を両立させた計画的なステップが不可欠です。
AI搭載型CRMは、コールセンターの課題を根本から解決し、顧客体験と業務効率の両立を実現する“新しい標準”になりつつあります。今後もAIの進化とともに、現場の働き方やサービスの質が大きく変わっていくでしょう。
AI搭載型CRM導入のケーススタディ:健康食品・健康器具の通販事業者の場合
ここでは、AI搭載型CRMの代表例として「コンタクトセンター向けAI搭載型CRM」を導入した通販会社のストーリーを紹介します。
AI活用による業務変革が進むなか、L社がどのようにして成長の壁を乗り越え、顧客体験を進化させていったのかを追います。
事業背景と市場環境
L社は青汁やプロテイン、フィットネスグッズなど、健康食品と健康器具を主力商品とする通販事業者です。
コロナ禍以降の健康志向ブームやEC市場の拡大を追い風に、売上はここ数年で右肩上がり。2024年度は前年比120%の成長を達成しました。
一方で、競合他社の参入も相次ぎ、リピーター獲得やカスタマーサポートの質が中長期的な成長のカギとなっています。
L社ではコールセンター(40席規模)を中心に、電話・メール・チャット・FAXなど多様なチャネルで顧客対応を行ってきました。
成長の壁と現場のリアル
しかし、成長とともに現場にはさまざまな課題が表面化していました。
- 「オペレーターによって案内内容や対応スピードが違い、顧客満足度が安定しない…」
- 「新人がなかなか定着せず、教育にも時間とコストがかかる」
- 「注文や問い合わせが増えるほど記録作業が膨大になり、残業が増えてしまう」
- 「FAQやマニュアルが担当ごとにバラバラで、新しいスタッフが困っている」
- 「セールやキャンペーン時は電話が殺到し、現場がパンク寸前になることも…」
L社の経営陣は「今後さらに成長するには、顧客一人ひとりとの関係を深め、サービス品質を安定させることが不可欠だ」と痛感。
そこで注目したのが、顧客関係管理(CRM)の強化でした。
顧客関係管理(CRM)の重要性に気づく
L社の経営層は、成長の踊り場を迎えた今こそ「顧客との関係性をどう深めるか」が次の成長を左右すると感じていました。
そんな折、経営者向けセミナーで「CRM(顧客関係管理)」の概念と目的について学ぶ機会がありました。セミナーでは、「新規顧客の獲得コストは既存顧客維持の5倍かかる」「リピーターのLTV(顧客生涯価値)を高めることが安定成長の鍵」といったEC・通販業界の最新トレンドや成功事例が紹介されました。
L社の経営陣は、「これまで広告やキャンペーンで新規顧客を増やしてきたが、今後は既存顧客との長期的な関係構築に注力しなければ、競争が激化する市場で生き残れない」と実感。
「顧客一人ひとりの購買履歴や問い合わせ内容を把握し、最適なタイミングで提案やフォローができれば、リピートやクロスセルも伸ばせるのではないか」と考えるようになりました。
そこで、「コールセンターを中心に、顧客情報を一元管理し、応対品質やサービスを向上できる仕組みが必要だ」と判断。
特に、通販・EC業界でCRMシステムを導入することで得られる「顧客情報の一元管理」「パーソナライズされたアプローチ」「マーケティング業務の効率化」「LTVの向上」などのメリットに注目しました。
L社はさっそく、コンタクトセンター向けのCRM製品をリサーチ。
「自社の課題に本当に合うのはどのCRMか?」
「AIや多チャネル対応、分析機能、現場への定着性はどうか?」
複数の製品を比較検討し、現場の声も取り入れながら、導入に向けた具体的な調査をスタートしました。
CRM導入の決め手
L社は、実際にCRMを導入している他社のコールセンター事例を積極的にヒアリングしました。
「AIによる自動要約やFAQレコメンドで新人の応対品質が安定した」「多チャネル対応で繁忙期も現場が混乱しなくなった」など、具体的な効果や運用現場のリアルな声を直接聞くことで、導入のメリットだけでなく、運用上の課題や現場定着のポイントについてもイメージを持つことができました。
こうした情報をもとに、L社は「自社の成長戦略と現場課題の両方にフィットする」と判断し、コンタクトセンター向けAI搭載型CRMの導入を決断しました。
導入後の現場と営業の声
導入後は、営業部門やコールセンターのSV(スーパーバイザー)と定期的にミーティングを行い、AI機能の効果や現場の課題を継続的に検証しています。現場からはこのような声が出ています。
- 「FAQレコメンドで、新人でもスムーズに回答できるようになり、顧客対応のばらつきが減りました」
- 「音声認識AIで通話内容が自動記録されるので、記録作業のストレスが大幅に減り、応対に集中できます」
- 「感情分析でクレームやストレスの兆候が早期に分かるので、SVが先回りしてフォローできるようになりました」
- 「多チャネル一元管理のおかげで、繁忙期でも業務が混乱せず、顧客対応の質を維持できています」
また営業側からも、「顧客の問い合わせ履歴や過去の対応内容をすぐに確認できるので、提案やフォローの精度が上がった」といった声が上がっています。
コールセンター向けCRMが業務システムの中核に
AI搭載型CRMの導入によって、L社ではコールセンターだけでなく営業やマーケティング部門との情報連携が強化され、CRMが業務システムの中核となりつつあります。
顧客情報の一元管理やリアルタイム分析が進むことで、全社的な顧客体験の向上や業務効率化が実現しつつあります。
さらにL社は、CRMと売上管理システムの連携も視野に入れています。顧客ごとの購買履歴や応対内容をもとにしたパーソナライズ提案や、より精緻なKPI管理・分析を目指し、次の成長フェーズに向けた体制強化を進めています。
AI搭載型CRM導入チェックリスト

AI搭載型CRMの導入は、コールセンター業務だけでなく、営業やマーケティング、経営戦略にも大きなインパクトをもたらします。
自社の課題や目的に合ったCRMを選び、最大限の効果を引き出すために、以下のポイントをチェックしましょう。
導入検討時の5つのポイント
- 現場の課題を具体的に把握できているか?
(例:応対品質のばらつき、記録作業の負担、チャネル増加による混乱など) - AI機能で何を解決したいか明確か?
(自動要約、FAQレコメンド、感情分析、多チャネル一元管理…など自社の優先度を整理) - 現場の業務フローやシステムと連携できるか?
(既存の売上管理システム、顧客データベースなどとの連携性も要確認) - 導入・運用時のサポート体制や教育プランがあるか?
(現場の定着やトラブル対応、AI活用の研修など) - 導入後の効果検証・改善サイクルを回せる体制があるか?
(KPI設定、現場や営業との定期的な振り返り、改善提案の仕組みなど)
チェック項目をクリアできていれば、AI搭載型CRM導入の準備は万全です。
自社の成長ステージや業務課題に合わせて、最適なCRMを選択し、次の成長フェーズに向けた一歩を踏み出しましょう。
