採用担当者が注目する「コミュニケーション力」の本当の意味とは

就職活動や新人研修で必ずといっていいほど問われる「コミュニケーション力」。多くの学生や若手社会人が「人と話すのが好き」「相手の話をよく聞く」といった表現でアピールします。
しかし、企業が本当に求めているのは、単なる“会話の得意さ”ではありません。むしろ重要視されているのは、相手の意図を汲み取り、適切に対応する力、つまり「伝わる力」「信頼を築く力」です。

本記事では、コミュニケーション力の真の意味を掘り下げ、言語・非言語両面からの具体的なアプローチを解説します。

【参考】https://research.lightworks.co.jp/nonverbal-communication
【参考】https://www.jmam.co.jp/hrm/column/0191-communication_skills.html

コミュニケーション力とは何を指すのか

「コミュニケーション力」と聞くと、“話し上手”や“聞き上手”といった印象を持つ人も多いでしょう。しかし、ビジネスシーンで求められるこの力は、「相手と信頼関係を築き、目的や意図を共有する能力」と定義されます。言葉で考えを伝えることはもちろん、相手の立場に立って考え、的確な反応を返す姿勢も含まれます。採用担当者が見ているのは、単に明るく話せるかどうかではなく、状況に応じて柔軟に対応できる“対人対応力”ともいえるのです。

“話す・聞く”だけでは不十分──2つの力のバランス

対人関係において重視されるのは、「話す力」と「聞く力」の両立です。自分の意見を的確に伝える力があっても、相手の意図を読み取れなければ、すれ違いが生じてしまいます。逆に、聞き手に徹するばかりで自分の意見が伝わらなければ、信頼関係は深まりません。
つまり、コミュニケーションとは、情報のキャッチボール。聞く力と話す力を場面に応じてバランスよく使い分けることが、相互理解と信頼の構築につながります。

非言語の力──ノンバーバルコミュニケーションとは

私たちは日常のやり取りの中で、無意識のうちに言葉以外の情報も発信しています。
ノンバーバルコミュニケーションとは、言葉を使わない非言語的なやり取りのこと。具体的には、表情、視線、声のトーン、姿勢、ジェスチャーなどがこれにあたります。たとえば、同じ「ありがとう」という言葉でも、笑顔で言うのか、無表情で言うのかでは、相手が受け取る印象は大きく異なります。言葉と態度が一致していることが、誠実さを伝える鍵になるのです。

メラビアンの法則について

ノンバーバルコミュニケーションの重要性を示す心理学的根拠として有名なのが「メラビアンの法則」です。心理学者アルバート・メラビアンは、人が他者から受け取る情報の割合について、視覚情報(表情やしぐさ)が55%、聴覚情報(声のトーンや話し方)が38%、言語情報(言葉そのもの)が7%であると提唱しました。これは「言葉と態度が矛盾しているとき」におけるデータですが、それでも非言語の影響力が非常に大きいことは明白です。

ノンバーバル(非言語)コミュニケーションの分類と具体例

ノンバーバルコミュニケーションは、大きく「視覚情報」と「聴覚情報」に分けられます。

視覚情報について

まず視覚情報には、表情や姿勢、ジェスチャー、服装などが含まれます。
たとえば、相手の目を見て姿勢を正すことで「関心がある」「誠実である」という印象を与えることができます。うなずきや微笑みも、共感や安心感を伝える有効な手段です。反対に、腕を組んで無表情で話すと「冷たい」「防御的」という印象を与えかねません。服装や髪型といった外見も、その人の清潔感や信頼性を判断する材料として無意識に捉えられています。

聴覚情報について

次に聴覚情報には、声のトーンやスピード、間の取り方、声の大きさなどがあります。たとえば、落ち着いたトーンでゆっくりと話すことで、安心感や信頼を与えることができます。逆に、早口だったりトーンが高すぎたりすると、緊張や焦りが伝わってしまうこともあります。また、言葉の合間に適度な「間」を取ることで、余裕や思慮深さを感じさせる効果もあります。

このように、言語以外の情報は、相手に大きな影響を与えます。面接や商談といった重要な場面では、言葉の内容とこれらの非言語的要素のバランスが整っていることが、相手の信頼を得る鍵となります。

ノンバーバルコミュニケーションの効果

非言語的なふるまいは、相手との信頼関係の構築に大きく影響します。たとえば、うなずきやアイコンタクトを交えながら話を聞くと、「きちんと話を受け止めてくれている」という印象を与えることができます。また、適切なジェスチャーや表情が加わることで、話の内容に説得力や感情が加わり、伝えたいメッセージがより深く相手に届きます。
こうしたノンバーバルの活用によって、言葉以上に「誠実さ」や「信頼感」を相手に伝えることが可能になるのです。

オンライン時代にこそ問われる“伝える力”の質

近年、リモートワークやオンライン会議の普及により、対面でのやりとりが減少しました。その結果、「伝える力」の本質がより厳しく問われるようになっています。画面越しのコミュニケーションでは、表情やしぐさといった非言語の情報が伝わりにくく、相手の反応も読み取りづらくなるため、意識的な工夫が欠かせません。

たとえば、カメラ目線を心がけたり、リアクションを大きめにしたりすることで、相手に対して「話をしっかり聞いています」「あなたに関心を持っています」といったメッセージを伝えることができます。また、声のトーンや話すスピードを調整することも、安心感や信頼感を伝えるうえで効果的です。

さらに、オンラインでは「沈黙」や「間(ま)」が対面以上に気まずく感じられることもあるため、あらかじめ話の構成を意識し、簡潔かつ丁寧に説明する能力が求められます。加えて、チャットやメールといった文章でのやりとりにおいても、相手の温度感を読み取り、適切な敬語や絵文字などでニュアンスを補完するセンスが必要になります。

このように、オンラインの場面では、単に言いたいことを言うだけでは不十分です。相手に「どう伝わるか」「どう受け取られるか」を意識し、言語・非言語の両面から工夫することで、はじめて“伝える力”は真に機能するのです。デジタル環境だからこそ、コミュニケーションの質が人間関係を大きく左右する時代になっています。

まとめ

「コミュニケーション力」と聞くと、流暢に話す力や語彙の豊かさをイメージしがちですが、採用担当者が注目するのはそれだけではありません。むしろ、相手の話をよく聴き、適切なタイミングで相づちを打つ、相手の反応を見ながら言葉を選ぶといった“関係性を築く力”こそが重視されています。特に面接や職場の現場では、「言葉」と「態度」が一致しているか、自分の考えや気持ちを相手に“伝わる形”で表現できているかが問われます。
さらに、ノンバーバル(非言語)コミュニケーションの存在は見逃せません。表情、声のトーン、姿勢などの要素は、相手に安心感や信頼感を与える大きな要因となります。オンラインでのやり取りが増えている今だからこそ、こうした要素により一層の注意が求められるのです。
これからの時代に必要なのは、「話す」技術ではなく、「伝える」力。そして何よりも、「伝わったかどうか」を意識する姿勢です。それが、採用担当者の目に映る“本当のコミュニケーション力”なのです。

【関連記事】ラテラルシンキングで発想を広げる!斬新なアイデアの生み出し方

この記事を書いた人

ビジネス・テクノロジスト 貝田龍太