kintoneで始める!システム内製化のベストプラクティスとは

デジタル化が進む現代、企業に求められるのは迅速かつ柔軟なシステム開発です。しかし、外部ベンダーに依存し続けるのではなく、自社でシステムを内製化し、現場のニーズに即応する体制を築くことがDX推進の鍵となっています。本記事では、クラウド型プラットフォーム「kintone」を活用し、内製化を進めるための具体的な手法や課題解決策を解説します。

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kintoneによるシステム内製化

企業が変化の激しい経営環境やデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を求められる中、「システム内製化」の重要性が高まっています。ここではkintoneの特徴と、システム内製化の課題を踏まえ、kintoneによる解決策を紹介します。

kintoneとは

kintone(キントーン)はサイボウズ株式会社が提供するクラウド型の業務アプリ構築プラットフォームです。プログラミングの知識がなくても、ドラッグ&ドロップ操作などの直感的なインターフェースにより、業務に必要なアプリケーションを迅速に作成できます。これまでシステム開発には専門技術や長期間の開発が必要でしたが、kintoneならば現場担当者自らが業務改善に適したアプリを試行錯誤しながら構築でき、IT部門や外部のベンダーに依存しない内製化を実現します。

kintoneはこうした特長により、自分たちで作る・直す・管理する文化を社内に根付かせやすく、変化対応力の高いビジネス基盤を提供しているため、多くの企業でDX推進の中核に位置付けられています。

システム内製化の課題とkintone

システム内製化とは、従来外部に依頼していたシステム開発や運用を自社で担当し、自分たちの業務に最適なシステムを主体的に作り、維持管理することを指します。 これにより現場のニーズを即座に反映できるだけでなく、コスト削減や業務改革のスピードアップにもつながります。しかし、システム内製化には多くのメリットがある一方で、現場での実現を難しくする課題も少なくありません。主な課題は以下のとおりです。

システム内製化の課題

  • 人材育成とスキルの壁:システム開発や運用に必要なITスキルや経験を持つ人材が不足しており、非IT部門の社員がノウハウを身につけるのは簡単ではありません。「内製化はしたいが、開発できる人がいない」という企業も多いです。
  • 開発リソースの確保:自社内でアプリやシステム構築・保守を行うための時間や人手を十分に確保できないケースも少なくありません。現場担当者が他の業務と兼務となることで、開発プロジェクトが停滞する危険もあります。
  • 品質担保と運用の継続:一度作ったシステムの品質を保ち、利用者が使いやすい状態を継続するには、継続的な保守やアップデートが不可欠です。しかし、チーム体制や知識継承体制が整っていないと、使い勝手や稼働率が低下しやすくなります。
  • 外部依存と費用の問題:従来の形で外部ベンダーに委託すると高い費用がかかります。一方、完全内製化には不安が残るため、運用と支援体制のバランス確保も課題となります。

kintoneによる課題解決策

こうした課題に対し、kintoneは次のような解決策を提供します。

  • ノーコード・ローコードによる簡単開発:kintoneはドラッグ&ドロップで業務アプリを作成でき、プログラミング不要です。Excel感覚の操作で誰でも直感的にアプリを設計できるため、ITに不慣れな現場担当者でもスムーズに内製化を進められます。
  • 高度なカスタマイズと直感的な操作性:フィールド追加や表示設定、処理の流れも自在に編集可能です。業務フローの変化に応じて何度でも改良を重ねられ、「現場で本当に使えるシステム」を自分たちのペースで育てられます。
  • コスト削減と導入スピード:クラウドサービスのため初期コストが低く、ベンダーロックインの不安もありません。短期間で運用を開始できるなど、迅速な業務改善に直結します。
  • 伴走支援による運用サポート:kintoneは導入企業向けの教育・サポート体制が充実しており、習熟度に応じて運用アドバイスやソリューション提案が受けられます。これにより、継続的な導入後サポートや保守支援を得ながら安心して内製化が可能です。

このように、kintoneは「技術的ハードル」「リソース不足」「運用継続性」といったシステム内製化特有の課題をまとめて解決する基盤となっています。

kintoneアプリの作り方

kintoneアプリは、プログラミング知識がなくても誰でも簡単に作成できるのが特徴です。主な作成方法は以下の通りです。

Excelからアプリを作成する方法

  1. Excelファイルを用意:アプリにしたいデータをExcelで整理します。たとえば顧客リストや売上データなど、既に使っているExcel表を準備します。
  2. kintoneポータルで「アプリを作成する」をクリック:「Excelを読み込んで作成」を選択します。
  3. アップロード・設定:Excelファイルをアップロードし、データ範囲や項目名の自動検出を確認、必要に応じて調整した後にアプリを作成します。

この方法は、既存のExcel活用から自然にアプリへと移行できるため、現場で使われているデータをそのままkintoneに取り込むことが可能です。短期間での業務IT化やチームでのデータ共有に最適です。

AIによる自動生成

kintoneには「アプリ作成AI」が搭載されており、チャット形式で作りたいアプリのイメージを伝えると、フォームやアプリ名をAIが提案します。
提案された内容はワンクリックで反映可能で、大量の選択肢追加も自動設定されます。またChatGPTなどの生成AIと連携すれば、アプリ構成案やJavaScriptによるカスタマイズコードまでも自動生成できるため、より複雑な業務シナリオにも対応可能です。
AI技術の活用によって、設計スキルがなくても高機能アプリを短時間で作ることができ、属人性を下げて組織的なイノベーションを生み出せます。

はじめから作成

「はじめから作成」を選択すれば、多様なフィールド(文字列、数値、日付、選択リストなど)をドラッグ&ドロップで好きなだけ追加・組み合わせることができます。アプリ名やアイコンも簡単に設定でき、必要に応じて必須入力や計算、自動採番、関連データの参照なども設定できます。
この方法は、業務現場の細かい要件や独自のフロー・入力ルールに合わせて自由自在にシステムを構築できる点が大きな利点です。現場の改善を繰り返しながら、理想の業務運用モデルへと進化させられます。

kintoneはシステム内製化のさまざまな課題に真正面から応え、現場主導の業務改革やDX推進を現実のものにする力強いプラットフォームです。コスト、効率、柔軟性を求める企業にとって、今後ますます活用の幅が広がることでしょう。

【参考】アプリを作成する方法

ケーススタディ:小規模ハウスクリーニング事業者の場合

ここでは、従業員数名規模のハウスクリーニング事業者であるI社が、自社の課題をもとにkintoneを導入した経緯とその効果について解説します。

I社の悩み

I社は従業員数名の小規模なハウスクリーニング業者で、地域の個人宅や小規模施設を対象に清掃サービスを提供しています。主に課題となっていたのは、顧客管理・作業報告・スケジュール管理がバラバラになっており、社内で一元管理ができていなかったことでした。 

さらに従業員の勤怠管理や備品の在庫管理も手作業や紙で運用されているため、情報の更新ミスや共有遅延が頻発。作業報告についても現場スタッフが報告書を紙やメールで送る運用に頼っており、時間がかかるうえに見落としや二重入力が課題となっていました。

こうした状況は、限られた人員が複数の業務を兼務する小規模事業者にとって大きな負担となっており、業務効率化とペーパーレス化を急務としていました。

kintone導入のきっかけ

I社がkintoneの存在を知ったのは、クラウドサービスや業務効率化に関するオンラインイベントでした。そこでkintoneを活用し、従業員自らがシステム内製化で業務課題を解決している企業の事例紹介に強く惹かれました。従業員の限られた人数でも自分たちで開発・運用できる点に大きな魅力を感じ、早速検討を始めます。

しかし、I社には専任のITスタッフや高額な開発資金はなく、リソースは限られていました。そこで、kintoneのアプリ作成AIやテンプレート機能を活用し、AIのサポートを受けながらまず顧客管理や作業報告用のアプリを試作しました。AIが提案するフォームや仕組みをベースに、スタッフが少しずつ修正を加え、スピーディに運用をスタートさせました。

導入後の効果と課題

kintone導入後、I社は次のような効果を実感しました。

  • 顧客情報、作業報告、スケジュールの一元管理が実現し、業務全体の見える化が進んだ。
  • 作業報告はスマートフォンから直接入力できるため、紙や手間が大幅に減少した。
  • 従業員の勤務状況もkintone上で管理し、勤怠集計を自動化できた。

ただし、一部の業務は完全な置き換えが難しく、デジタル化が進まない部分も残りました。

伴走支援サービスの活用

そこでI社は、kintoneの伴走支援サービスの無料相談を受けることに決めました。専任のコンサルタントが訪問やオンラインで詳細に現状の運用や課題を聞き取り、I社の実態を深く理解したうえで、どのようにシステムと業務の効率化を両立させるか提案を行いました。

I社が実現したいことは以下でした。

  • 会計ソフトとの連携:会計システムとkintoneを連携させて、手動での二重入力をなくし、データの整合性とスピードを向上させたい。
  • 顧客へのメール送信の効率化:顧客情報を活用し、一斉メール送信や配信予約、メールテンプレートによる手間の削減を実現したい。
  • 請求書の自動発行:請求情報をもとに請求書を自動生成し、発行業務の工数削減とミスの減少を図りたい。

コンサルタントは、I社の要望やリソース、コスト面も考慮しつつ、いくつかのプランを提示しました。例えば、

  • 会計ソフトとの連携を実現するための自動データ連携機能の追加:kintoneから会計ソフトへ取引データを自動転送し、入力作業を省力化する。
  • 顧客に対するメールの一括送信や配信予約機能の導入:kintoneの顧客管理データと連携し、条件に合わせた一斉送信や予約配信、送信履歴の管理を可能にする。
  • 請求書の自動生成・発行機能の実装:請求情報に基づき請求書を自動作成、PDF化しメール送付またはプリントアウトまでを自動化する。

これらは、JavaScriptによるカスタマイズやkintone専用プラグインの活用を組み合わせ、必要に応じて段階的に導入できる費用対効果の良いプランとして提案されました。I社は複数の選択肢の中からコストと効果のバランスを検討し、最適なプランを選択しました。

伴走支援のサポートを受けてシステム連携やカスタマイズを進めるうちに、これまで手作業で行っていた複雑な業務が大幅に自動化され、社内の業務効率が飛躍的に向上しました。特に請求関連の処理時間が大幅に短縮し、人的ミスも減少したことで、事務負担の軽減につながりました。

現在では、I社はさらなる業務効率化を目指し、kintoneの問い合わせフォームと連動した顧客対応チャネルの構築も検討しています。これにより、外部からの問い合わせを自動的に受付け、対応履歴も一元管理できるようにすることで、サービス品質の向上と顧客満足度のさらなる改善を狙っています。

ケーススタディから学ぶkintone導入のベストプラクティスとは

kintoneを効果的に導入するには、現場の実態に即した段階的かつ柔軟なアプローチが不可欠です。以下では、I社の事例を踏まえ、成功するためのポイントを解説します。

業務課題の洗い出し

導入の第一歩は、現場で抱える具体的な課題や改善したい業務をしっかりと明確にすることです。課題がぼんやりしたまま進めると、システムの使い勝手が悪くなったり、うまく定着せずに終わってしまう恐れがあります。例えば、顧客情報や作業報告、スケジュールがバラバラに管理されている場合や、勤怠や備品管理に手作業が多くミスや遅れが生じているケースがあります。

こうした状況を正確に把握し、どの部分の業務で効率化やIT化が特に必要かを洗い出すことが、導入計画の土台となります。

アプリの設計とユーザー参加

kintoneが提供するAI機能やテンプレートを活用して、まずは仮のアプリを作成しましょう。関係者が実際にアプリを操作しながら、報告者や承認者、管理者などそれぞれの視点で必要な機能や改善点を話し合うことが非常に効果的です。

また、既存のExcelデータを活用できるなら「Excelから作成」機能を利用することでデータ連携がスムーズになり、現場での移行障壁が低くなります。こうしてユーザーの理解と納得を得ながら、段階的にシステムを作り上げるのが成功につながります。

スモールスタートと継続的改善

単に最初から完璧なシステムを目指すのではなく、小さく始めて使いながら使いやすく改良していく姿勢が重要です。必要最低限の機能を持つアプリで運用をスタートさせ、実際の運用から得られるフィードバックを受けて、問題点や追加要望を素早く反映しましょう。

このようなスモールスタートの取り組みは、ユーザーの抵抗感を下げ、利用の定着率を高めると同時に、運用開始後の急な変化やニーズにも柔軟に対応できます。

学習機会の活用

kintoneは進化し続けており、機能や活用方法も日々変わります。定期的に公式セミナーや勉強会、オンライン講座を活用し、担当者の知識やスキルが最新の状態に保たれることが重要です。これにより、自社内での内製化体制が強化され、より高度なシステム改善や効率化が期待できます。

伴走支援サービスの活用

内製化を進めても、専門的かつ複雑な連携やカスタマイズは自社内だけで対応するのが難しい場合があります。特に外部の会計ソフト連携や、顧客へのメール一括送信、請求書の自動生成などは高度な技術が要求されます。

こうした課題に直面した際には、kintoneの伴走支援サービスを利用してみることが賢明です。専門のコンサルタントが現状を把握し、複数のプランを提案。JavaScriptカスタマイズや専用プラグインの活用を含め、費用対効果を重視しながら段階的な導入で業務の自動化・効率化を支援してくれます。

これにより、業務の工数削減だけでなく人的ミスの減少や運用の安定にも寄与します。

まとめ

kintone導入成功のために押さえるべきポイントは以下の通りです。

  • 現場の声を丁寧に拾い、具体的な課題を明確にする
  • AIやExcelを活用し、仮アプリ作成からユーザー参加の改善を実践する
  • 最初から完璧を求めず、小さく始めて継続的に改善を繰り返す
  • 定期的な学習でスキルと知識をアップデートし、内製体制を強化する
  • 難易度の高い課題は伴走支援サービスを活用し、専門支援で効率的に解決を目指す

以上のプロセスを実践することで、kintoneを用いた現場主導の業務改革やDX推進がより確実に成果へと結びつきます。

kintoneで現場主導の業務改善を実現

システムを内製化すると、現場主導の迅速な業務改善やDX推進が可能となります。kintoneはプログラミング不要で使いやすく、多様な業務に対応できる柔軟なクラウドプラットフォームとして非常に有効です。成功のポイントは、現場の具体的な課題を洗い出し、AIやExcelを活用してアプリを作りながらユーザー参加で柔軟に改善を進めること、そしてスモールスタートから運用しフィードバックを反映し続ける継続的改善の姿勢です。また、定期的な学習機会活用と、内製化で難しい課題には伴走支援サービスを利用し専門家の助言を取り入れることも重要です。これらの実践により、コスト削減と業務効率化を両立させながら、現場の変化に強いシステムづくりを実現できます。

この記事を書いた人

ビジネス・テクノロジスト 貝田龍太