仕事に意味を与えるテクニック:レイバーからプレイへの道

社会人として働いていると、ふと「この仕事に本当に意味はあるのだろうか」と感じる瞬間があります。
日々の業務に追われ、目の前のタスクをこなすことに精一杯になると、仕事が単なる「作業」や「ノルマ」に見えてしまうこともあるでしょう。
しかし、同じ仕事でも「やらされている」と感じる人と、「やりがいを持って働く」人がいます。
その違いはどこから生まれるのでしょうか。仕事の意味を考えるヒントになるのが、古くから語られてきた3つの概念「レイバー(Labor)」「ワーク(Work)」「プレイ(Play)」です。
これは、仕事が人にとってどのように“意味”や“喜び”と結びついていくかを理解するための重要な枠組みです。今回は、この3つの段階について解説していきます。

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レイバー:生活のための「やむを得ない労働」

最初の段階が「レイバー(Labor)」です。 

これは「生活のためにやむを得ず行う仕事」を指します。仕事の動機は「お金を稼ぐ」「生活を維持する」といった外的な理由が中心です。 多くの人がキャリアの初期にこの段階を経験し、上司の指示に従って働くことが多いでしょう。 自分の意思よりも「やらなければならない」という感覚が強く、仕事は義務的で、やりがいや楽しさを感じにくい状態です。

しかし、「レイバー」を否定する必要はない

とはいえ、「レイバー」は決して悪いものではありません。
むしろ、誰もがこの時期を通るからこそ、仕事の基礎体力が身につくのです。
ここで培われる「基本的なスキル」や「忍耐力」「責任感」「段取り力」は、次の段階である「ワーク」へ進むための大切な土台になります。
また、この時期に「なぜ自分は働くのか」「何のために頑張っているのか」と自分に問いを立て始めることが、成長の第一歩になります。
「レイバー」を通して得られる経験は、後に自分の“軸”をつくる貴重な材料となるのです。

ワーク:誰かの役に立つ「意味ある仕事」

次に訪れるのが「ワーク(Work)」の段階です。

この段階では、仕事の目的が「お金」から「貢献」へとシフトします。「自分の仕事が誰の役に立っているのか」「チームや社会にどんな価値を生み出しているのか」。こうした問いへの答えを見つけられたとき、仕事は単なる“労働”から“役割”へと変化します。

成果とつながりが「やりがい」を生む

ワークの段階にある人は、「自分の成果が誰かの喜びにつながった」と感じた瞬間に、仕事への誇りと充実感を得ます。

 営業ならお客様の課題を解決できたとき、事務ならチームが円滑に動いたとき。 こうした実感が、働く意味を深めるのです。 また、この段階では「ありがとう」や「助かった」といった言葉が大きな励みになります。 社会とのつながりを通じて“自分の存在価値”を感じられることが、継続的なやりがいにつながります。

プレイ:喜びと創造性に満ちた「遊ぶように働く」状態

そして最終段階が「プレイ(Play)」です。

この段階では、仕事はもはや「義務」ではなく「自己表現」としての活動になります。

プレイの段階にある人は、仕事を通して「自分らしさ」や「創造性」を存分に発揮できており、報酬や評価のためではなく「やりたいからやる」「挑戦が楽しい」と感じています。

経済的報酬を超えた“没頭”の世界

プレイの段階では、経済的な利得を超えて、「仕事そのものが楽しい」と感じられるようになります。
デザイナーが新しい表現を試すとき、エンジニアが難題を突破する瞬間、教師が生徒の成長に胸を打たれるとき。そこには“報酬以上の報酬”が存在します。
この状態に入ると、仕事は「やらなければならないもの」から、「もっと良くしたい」「自分の手で創りたい」という自発的な情熱へと変化します。
プレイは“努力と楽しさの一致点”であり、ここにこそ「働く喜びの本質」があるのです。

【参考】​​レイバー、ワーク、プレイの違い

【参考】働き方のスタイル

マネージャーが果たすべき役割とは:レイバーをワークへ、ワークをプレイへ

組織の中でメンバーが「レイバー」から「プレイ」へと成長していくためには、マネージャーの関わり方が欠かせません。

①「なぜこの仕事をするのか」を共有する

まずは、メンバーが自分の仕事の意味を理解できるように、目的や背景を丁寧に伝えることです。単に「これをやって」ではなく、「なぜ必要なのか」「どんな価値を生むのか」を明確にすることで、仕事は“指示”から“使命”へと変わります。

② 成果を可視化し、承認する

「誰かの役に立った」「チームが助かった」などの成功体験を具体的にフィードバックしましょう。小さな達成を積み重ねることで、メンバーは「自分の仕事に意味がある」と実感しやすくなります。承認は、次の挑戦へのエネルギーを生み出します。

③ 自主性と創造性を引き出す

プレイの段階に進むには、自由度が欠かせません。

「どうやるか」を任せ、「失敗しても挑戦できる」環境を整えることで、メンバーは仕事を「自分ごと」として捉え始めます。そこから創意工夫が生まれ、チーム全体の活力にもつながります。

自分自身でもできる「レイバー脱出」のヒント

もちろん、マネージャーの支援だけではなく、私たち一人ひとりにもできることがあります。仕事の意味づけは、外から与えられるものではなく、内側から育てていくものだからです。

「自分は何にワクワクするか」を言語化する

日々の業務の中で、自分が心から楽しめる瞬間を意識的に探してみましょう。「この作業が好き」「この場面で力を発揮できる」など、自分の感情を言語化することで、仕事への視点が変わります。自分の“喜びのスイッチ”を知ることが、プレイへの第一歩です。

「誰の役に立っているか」を意識する

自分の仕事が、どんな人の助けになっているのかを想像してみましょう。

お客様、同僚、あるいは未来の誰か。顔を思い浮かべるだけで、仕事に温かみと意味が生まれます。それはモチベーションの最もシンプルで確実な燃料です。

「遊び心」を持って取り組む

日常の中に、小さな“遊び”を取り入れてみましょう。

効率化の工夫をしてみる、新しいアイデアを試してみる。そのほんの少しの創意が、仕事に彩りを与え、“プレイ”の入り口を開きます。

仕事の意味は「見つけるもの」ではなく「育てるもの」

仕事に意味を感じられないとき、それは「悪い状態」ではありません。

むしろ、意味づけのプロセスが始まったサインです。仕事の意味は、他者や会社から与えられるものではなく、自分自身の中で少しずつ育てていくものなのです。

「レイバー」から「ワーク」へ、そして「プレイ」へ。その過程を意識することで、仕事はより豊かで創造的な時間へと変わっていきます。どんな仕事にも、成長の余地と喜びの芽が必ずあります。今日の業務を少しだけ立ち止まって見つめ直してみませんか?

そこに、あなたにとっての「プレイ」の始まりが、きっと見つかるはずです。

この記事を書いた人

ビジネス・テクノロジスト 貝田龍太