
「地方でITエンジニアとして働くのって現実的にどうなの?」と不安を抱く方は少なくありません。かつては求人の少なさやキャリアの停滞を懸念する声がありましたが、リモートワークの普及や地方企業のDX推進により、その状況は劇的に変わりつつあります。
現在では、地方でもITエンジニアの求人は増加傾向にあり、地域の産業を支える重要な役割を担うフィールドが広がっています。また、大手都市部企業がリモートワークを前提に地方在住のエンジニアを積極的に募集しており、都市部と遜色のない収入やスキルアップの機会を得ることも十分可能です。
本記事では、地方のITエンジニアの仕事環境とメリット・デメリットについてわかりやすく解説し、地方で理想のエンジニアキャリアを実現するための最新情報と具体的な働き方の選択肢をお伝えします。
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地方でのエンジニアキャリア:多様な働き方と選択肢
近年、リモートワークの普及や地方企業のDX推進により、地方でエンジニアが活躍できる環境が急速に整備されています。都市から離れてもキャリアを築く選択肢が増えています。
地方でのITエンジニア求人の実際
近年、地方におけるITエンジニアの求人は増加傾向にあり、2025年の統計では福岡、札幌、仙台などの地方主要都市で求人倍率が3倍を超える地域が多くなっており、エンジニア需要が大きく伸びています。
これは、地方企業のDX推進やAI技術導入の加速、さらにはリモートワークの浸透が背景にあります。都市部企業の案件に地方のエンジニアが参加可能になったことも求人拡大の大きな要因です。
かつての「求人が少ない」というイメージは大きく変わり、専門性の高い人材はより重宝され、地方ならではの活躍の場とキャリア形成の可能性が広がっています。
地方でエンジニアとして働く主な方法
地方のIT企業や事業会社のIT部門に就職・転職する
地方にあるIT企業や非IT業種のIT部門に就職する方法です。例えば、地方の製造業や観光業を営む企業が自社の業務効率化や顧客向けサービスのIT化を推進している場合、IT部門でのエンジニアの需要が高まっています。
具体例としては、鳥取県の農業向けスマート農業システムの開発・導入や、地方の観光業が予約システムや地域情報アプリを作成している事例があります。こうした地域密着型プロジェクトでは、自分の技術が地域の産業活性化につながるため、やりがいを強く感じられます。
都市部に比べ求人数は少ないものの、特定のスキルや経験を持つエンジニアは重宝され、地域にとって不可欠な存在となることが多いです。たとえば、都会でWebアプリ開発経験がある人が地方の業務システム刷新を任されるケースなどが挙げられます。
リモートワークの求人に応募する
都市部のIT企業やスタートアップがリモートワークを前提にエンジニアを募集するケースが増えています。地方に住みながら都市部企業のプロジェクトに参加でき、報酬やキャリア面でのメリットが大きいです。
現実の例としては、東京のIT企業の大規模クラウド開発にリモート参画しつつ、地方の自然豊かな環境で生活するエンジニアが増えています。また、副業・フリーランスとしてオンラインの専門プラットフォームで案件を獲得し、地方にいながら多様なプロジェクトを掛け持ちする人もいます。
このスタイルは技術力維持やスキル更新にも有利で、最新技術トレンドを逃さず取り入れられる点が特徴です。
フリーランスとして独立する
さらなる自由を求める場合は、フリーランスで活動するケースも一般的です。地方で暮らしながら都市部のリモート案件を請け負うほか、地域のIT化支援など地方特有のニーズに特化した案件を獲得することも可能です。
例えば、地方の中小企業向けに業務効率化システムをカスタマイズ提供したり、地元自治体のデジタル施策支援を行ったりするパターンがあります。個人事業主として地域の経済活性化に貢献しつつ、フレキシブルな働き方を実現できます。
地方で働くメリット
- 生活コストの大幅削減
例えば、東京23区の平均的なワンルーム家賃が8~10万円するのに対し、地方の同規模賃貸は3~5万円程度が多いです。これにより年間で100万円以上の節約が可能で、収入が多少低くても生活の質が保てます。 - ワークライフバランスの向上
地方の企業は通勤ラッシュがなく残業も少なめな傾向があります。例えば、地方の中小IT企業では19時までに退社することが多く、家族や趣味の時間を充実させやすい環境です。 - 地域貢献と自己実現の実感
地方のIT化が急務である一方、人材が不足しています。都市部での経験を地域の課題解決に活かすことで、地域にとって欠かせない存在となり、大きなやりがいが得られます。 - 生活環境の豊かさ
自然豊かな環境でストレスが少なく、通勤時間も短縮されるため、集中した作業がしやすいです。北海道や九州など四季折々の自然を楽しみながら働く例もあります。
地方で働くデメリット
- 求人数が少ない
都市部に比べ求人が限られ、希望する職種や分野が見つけにくい場合があります。最新技術に特化した専門職の案件は特に少なくなりがちです。 - 年収水準はやや下がる
地方のIT企業の年収は都市部に比べて10~20%程度低い傾向がありますが、リモートワークやフリーランスを活用すれば都市部と同等の収入を得ることも十分可能です。 - スキルアップの機会の限定
地方では勉強会や技術イベントが限られ、社内の同僚としか交流できないケースが多くなります。オンライン勉強会やコミュニティ活用が必須です。 - ITリテラシーの差が大きい
地方の顧客や社内メンバーのITリテラシーが低い場合、マニュアル作成や操作指導など、サポート業務の負担が増えることがあります。
地方でのエンジニアキャリアは、地域密着型プロジェクトや都市部のリモート案件、フリーランス独立など多様な働き方が可能です。生活コストの低さや働きやすさ、地域貢献の喜びといったメリットが大きい一方で、求人の少なさや技術交流の難しさなど課題もあります。地域の産業事情や求人状況を把握しながら、自分のスキルとライフスタイルにあった選択をすることが重要です。

ケーススタディ:コロナ禍でのUターンからフリーランスへ転身したTさんの場合

コロナ禍による働き方の変化は、多くのエンジニアに新たなキャリアの可能性を模索するきっかけとなりました。特に、都市部から地元など地方に移住するUターンやIターンは、住環境の快適さや仕事と生活のバランスを求める動きから増加傾向にあります。本稿では、30歳のTさんがリモートワークをきっかけに地元へUターンし、転職活動を経てフリーランスとして活躍するまでを具体的に紹介し、地方でのエンジニアキャリア成功のポイントをわかりやすくまとめます。
Uターンの背景
Tさんは都市部のIT企業に勤めていましたが、コロナ禍でリモートワークが急速に普及し、地元の実家に一時的に身を寄せることにしました。
このリモートワークの普及により、「仕事は職場で行うもの」という考え方が変わり、都市部に住む必要が薄れたことで、多くの人が生活の質を見直す良い機会となりました。Tさんもこの流れを受けて、通勤ストレスから解放され自らの理想のライフスタイルを考えるきっかけになったと語っています。
また、都市部の住宅コストが高騰していることや、将来的に結婚して子育てをするには地元の方が暮らしやすく経済的にも優れている点に魅力を感じたことで、地方での定住を本格的に意識するようになりました。
転職活動に伴い、地元の地方都市でマンションを契約。Tさんは「生活に必要なスーパーや病院、金融機関がコンパクトにまとまっているうえ、バスや電車など公共交通機関も充実しているため非常に便利。この住環境が仕事とプライベートの両立を支えています」と話しています。
地元での求職活動の進め方
Tさんは地元就職を目指し、複数の地方特化型求人サイトや転職エージェントを活用し、Uターン歓迎や地域貢献を掲げる企業を中心に求人情報を集めました。求人が限られる地方市場で効果的に情報を得るため、複数サービスで幅広くチェックしたのです。
応募先企業の研究も入念に行い、地元産業の特徴や抱える課題を理解したうえで、自己PRに長期定着意欲と地域への貢献姿勢を盛り込みました。面接では、リモートワーク経験の活用と共に、地元活性化に対する熱意を強く伝えました。
地方企業は技術力だけでなく、コミュニケーション能力や人柄も重視する傾向があり、誠実な対応が信頼獲得につながります。加えて、家族や地元コミュニティの支援が得られることも、Uターン転職成功の後押しとなっています。
さらに、地方の合同就職説明会や転職フェアに参加し、企業担当者と直接話す機会をつくることで、相互理解を深めることができました。こうした活動を通じ、地方求人の特性や面接のポイントを経験的に掴み、自身のキャリアプランを具体化するうえでも大きな糧となりました。
フリーランス転身とその後の活動
数年勤務した後、Tさんはより自由に幅広いフィールドで経験を積みたい欲求からフリーランスに転身しました。独立にあたり、都市部と地元双方で築いた人脈を整理・強化し、案件獲得に活かしています。
フリーランスとしては、都市部の大手リモート案件と共に、地元のベンチャー企業や自治体のデジタル化支援プロジェクトにも積極的に参加。こうした活動は、地元経済の活性化に直接寄与していることへの大きな誇りとやりがいにつながっています。
また、クラウドソーシングや専門コミュニティを活用してオンラインでの案件獲得を拡大。安定した収入基盤を築くと共に、多様な技術や業務経験の蓄積につなげています。
地元のITコミュニティや勉強会にも積極的に参加し、「顔なじみ」の仲間との交流を大切にしながら、スキルアップおよびモチベーションの維持にも努めています。
さらに、時間管理やタスク管理にも注力し、カフェやコワーキングスペースなど場所を変えて仕事のオンオフを切り替えながら、効果的に生産性を上げています。
Tさんの経験は、地方で充実したライフスタイルとキャリア構築を目指す方にとって、良いモデルケースとなるでしょう。
ギグワークスクロスアイティが地方DXを支援

ギグワークスクロスアイティは福岡県北九州市に新たな事業所を開設し、地域でのITエンジニア採用を積極的に進めています。北九州市立大学との産学連携を深めることで、地域の人材育成と企業のDX推進に寄与し、地域社会の課題解決を通じて地方創生の一翼を担う取り組みを展開しています。
私たちはICTを活用し、地方創生に貢献するとともに、多様な働き方を支援して地域の持続的な発展に貢献してまいります。
