【セミナーレポート】2026年、コンタクトセンターの1日はこうなる!

ギグワークスクロスアイティ株式会社は、2025年11月13日、14日に池袋サンシャインシティ文化会館にて開催されたコンタクトセンター業界の一大イベント「コールセンター/CRM デモ&コンファレンス 2025 in 東京(第26回)」にて「2026年、コンタクトセンターの1日はこうなる!」と題したセミナーを開催しました。

コールセンター/CRM デモ&コンファレンス 2025 in 東京(第26回)

スピーカー

原田 康平
ギグワークスクロスアイティ株式会社
ICTソリューション東日本統括 製品開発部
ソリューションデザイナー

入社後、損害保険業界における自社パッケージシステムの導入プロジェクト等に従事し、現場業務の改善経験を積みながら業務に関する知見とシステム導入経験を積む。オペレーターやSVが直面する実務上の課題から、業務効率の向上および負担軽減の必要性を痛感。AI技術の活用やパッケージ活用等による実務課題解決をデザインするアプローチにより、業務改善の新たな形を探求している。

AI活用の「答え合わせ」の時

近年、AI技術は急速な進歩を遂げ、コンタクトセンターにおいても、ボイスボット、チャットボット、音声認識、自動要約など、さまざまなシーンでの活用が当たり前になりました。 しかしその一方で、「AIを導入したものの、想定した効果が得られていない」「現場での活用がなかなか進まない」といった声も少なくありません。多くの企業がAI導入の初期段階を終えたいま、その成果と課題を振り返る「答え合わせ」の時期に来ているのではないでしょうか。 本稿では、AI導入がなぜ期待通りの成果に繋がらないのか、その構造的な課題を解き明かし、コンタクトセンターにおけるAI活用の「成功」の鍵を握るアプローチ、そしてその先にある「2026年のコンタクトセンターの未来像」について、具体的な事例を交えながら解説します。

顕在化する4つの課題と、その本質

現在、多くのコンタクトセンター運営において、最も深刻な課題として以下の4点が挙げられています(※出典:コールセンター白書 2024)。

  • スーパーバイザーの採用育成
  • 呼量の削減
  • オペレータひとりあたりの生産性向
  • 品質向上

これらの課題は、限られたリソースの中で、いかに効率的かつ高品質な顧客対応を実現するかという、センター運営の根幹に関わる問題です。 しかし、これらの課題を個別の事象として捉えていては、本質的な解決には至りません。これらの課題は、視点を変えれば、コンタクトセンターの業務フロー全体を構成する「4つの業務領域」における課題として捉え直すことができます。

  • 「スーパーバイザーの採用育成」 → 【スーパーバイザー支援】の領域の課題
  • 「呼量の削減」 → 【顧客対応前】の領域の課題
  • 「オペレータの生産性向上」 → 【オペレータACW(アフターコールワーク)】の領域の課題
  • 「品質向上」 → 【オペレータ問合せ応対】の領域の課題

重要なのは、これら4つの業務領域は独立して存在するのではなく、互いに密に連携しているということです。したがって、本質的な解決のためには、4つの業務領域に対し、「業務デザイン・IT設計の両面から最適化を推進する」必要があります。

なぜAI導入は失敗するのか?「点のツール」の罠

この課題を解決する切り札として「AI」に期待が集まりますが、多くの導入が期待した効果を得られていません。 その最大の原因は、顧客情報の中核である「CRM(顧客関係管理)システム」からAIを切り離し、独立した「点のツール」として導入してしまう点にあります。

例えば「呼量削減」のためにAIボイスボットを導入したものの、CRMとは連携させず、ボイスボットが受け付けた内容を結局オペレーターがCRMに手入力しているといったケースです。 AIを「点のツール」として導入すると以下のような深刻な問題が発生します。

  1. システムの分断による非効率性
    オペレーターはCRMとAIツールを個別に切り替えながら作業する必要があり、顧客情報をシステム間で手動で記録・検索しなければならない手間が発生します。
  2. 業務効率の頭打ち
    AIが対応した履歴や、音声認識がテキスト化したデータがCRMに自動連携されないため、オペレーターによる手動での転記や二重作業が発生し、AIによる効率化の効果が限定的となります。
  3. VOC(顧客の声)の断片化
    最も深刻な問題です。AIボイスボットやチャットボットが対応した履歴、電話での会話テキストデータなど、貴重な「顧客の声」がCRMに集約されません。データが分散することで、顧客インサイト(解約予兆、アップセルの機会など)をAIが活用できず、AIは単なるコスト削減ツールに留まってしまいます。

成功への道筋:CRMを中心とした「デジタル基盤」の構築

AI導入を成功に導くアプローチは、まず「目指す姿」を明確にする「業務デザイン」から始まります。各業務領域において、「呼量削減と自己解決の推進」、「対応品質の底上げ」、「処理時間の短縮」、「OPフォローの高度化」といった明確なゴールを設定します。

その上で、設定した「目指す姿」を実現するために、最適な「IT設計」を行います。

その核心は、顧客接点であるCRMを中心としたIT設計(適切なAI・ITサービスの組み合わせ)で「目指す姿」を実現することです。CRMを「唯一の情報源」として基盤に据え、そこにボイスボット、リアルタイム音声認識、自動要約、FAQ などをシームレスに連携させます。

CRMとAIが一体となった「コンタクトセンターデジタル基盤」を構築することこそが、業務プロセス全体を最適化し、結果として従業員体験(EX)と顧客体験(CX)の双方を劇的に向上させる鍵となります。

AI×CRMによる4大業務領域の変革

CRMを中心としたデジタル基盤が4つの業務領域をどのように変革するか、具体的な活用例と事例を見ていきましょう。

領域1:顧客応対前(呼量削減と自己解決の促進)

ボイスボットやチャットボット、公開FAQをCRMと連携させ、顧客の自己解決を強力に推進します。 例えば、ボイスボットがカタログ郵送受付などの一次受付を無人で完了させ、その受付データをリアルタイムでCRMに自動登録します。オペレーターは一切介在しません。

<事例:某社BPO事業部門様>

  • 課題: 資料送付などの単純受付が24時間365日対応できず、受電対応の要員不足も発生していました。
  • 解決策: CRM「デコール CC.CRM」を基盤にPBXとボイスボットを連携。
  • 成果: AIボイスボット受付データをCRMへ自動登録することで業務を効率化。時間外対応による顧客満足度向上も実現し、全体入電数の約57%を自動化することに成功しました。

AIボイスボットの活用事例動画はこちらから

領域2・3:オペレーター問合せ応対・ACW(品質向上と生産性向上)

応対品質のばらつきや、後処理(ACW)の負荷といった課題をAIで解決します。

応対中の支援(品質向上)

着信と同時にCRMが顧客情報をポップアップさせ、同時に「リアルタイム音声認識」が開始されます。オペレーターとお客様の会話がテキスト化され、AIがその内容からキーワードを自動検知。そのキーワードに基づき、オペレーターの画面に「FAQが自動でサジェスト」されます。 これにより、経験の浅い新人オペレーターでも、ベテランと同様の均一で質の高い案内が可能となり、CX(顧客体験)が向上します。

ACWの自動化(生産性向上)

オペレーターの負荷が最も大きい後処理(ACW)業務も自動化されます。通話が終了すると、AIが即座に会話内容の「自動要約」を作成し、さらに「コールリーズン(問合せ理由)」も自動判定してCRMの所定の項目に転記します。オペレーターは内容を確認・微修正するだけで後処理が完了し、ACW時間を大幅に短縮できます。

<事例:某製造メーカー様>

  • 課題: 履歴入力がオペレーターの主観に左右され、お客様の状況を正確に把握できませんでした。また、オペレーターの教育・評価を目的とした分析も進んでいませんでした。
  • 解決策: CRMにAIオプション(リアルタイム音声認識・自動要約)を導入。
  • 成果: AIで顧客の「生の声を」を数秒で正確に文章化でき、記録精度が飛躍的に向上しました。また、「応答品質スコア」機能により応対品質の数値化を実現し、データに基づいた育成が可能になりました。

AI音声認識・要約の活用事例動画はこちらから

領域4:スーパーバイザー支援(教育効率化とVOC活用)

スーパーバイザーの業務である「オペレーターフォロー」「FAQ運用」「VOC分析」をAIが強力に支援します。

オペレーターフォローの高度化

リアルタイムで全オペレーターの状況を「シートマップ」で可視化。カスハラワードやNGワードを検知すると即座にアラートが上がり、SVが能動的にサポートに入れます。 また、通話終了後には「応対品質スコア」が自動算出されます。トーク比率、会話の被り回数、沈黙回数、カスハラワード回数などをAIが数値化・グラフ化。SVは客観的なデータに基づいた効果的な教育・フィードバックが可能になります。

FAQ運用の効率化

SVの大きな負担であるFAQの作成・更新もAIが支援します。オペレーターが応対した通話の音声認識テキストに基づき、AIがQ&A(質問と回答)を推測し「FAQを自動生成」します。これによりFAQ構築の時間を大幅に短縮します。

FAQ・AI自動生成の活用事例動画はこちらから

VOC分析の戦略化

CRMを中心としたデジタル基盤の最大の価値は、ここにあります。電話(音声認識テキスト)、メール、チャット、ボイスボットなど、すべての顧客接点のVOCがCRMに一元集約されます。 オペレーターの主観を排除した客観的なVOCデータを蓄積し、AIで分析することで、これまで見えてこなかった「インサイト(新たな問題点、サービス改善のヒント)」を発見できます。SVはこれらのインサイトを関係部署にエスカレーションし、製品・サービスの改善や新たな商品開発へと結びつけることが可能になります。

まとめ:2026年、コンタクトセンターの1日

CRMとAIが完全に融合した「コンタクトセンターデジタル基盤」が実現した未来、すなわち「2026年、コンタクトセンターの1日」は以下のようになります。

<オペレーター編>

出社後、まずダッシュボードでその日の問合せ傾向を確認します。ボイスボットや公開FAQが多くの一次対応を自動処理するため、入電数は最適化され負荷は軽減されています。 有人対応では、リアルタイムのFAQサジェストにより、自信を持ってお客様を案内できます。通話終了後は自動要約とコールリーズン自動判定により、後処理(ACW)は最短で完了します。空いた時間で、ナレッジ改善のためのFAQ申請を行うなど、より付加価値の高い業務に時間を使います。

<スーパーバイザー編>

出社後、ダッシュボードと応対品質スコアでセンター全体のパフォーマンスと各オペレーターの状況を即座に把握します。シートマップでカスハラなどのアラートをリアルタイムに検知し、即座にフォローに入ります。 問題があった応対も、録音を全部聞き直すことなく、テキストとスコアで迅速に確認し、データに基づいた指導を実施します。オペレーターから上がってきたFAQ申請は「FAQ自動生成」機能で効率的にブラッシュアップします。 そして最も重要な業務として、CRMに集約されたVOCを分析し、発見したインサイトを関連部署に連携。サービス改善を主導します。

2026年、CRMを軸として連携したAIは、もはや単なる効率化ツールではなく、コンタクトセンターの価値を最大化する「最強のパートナー」となります。

デコールCC.CRMが実現する「一気通貫」の課題解決

私たちギグワークスクロスアイティは、AI搭載CRM「デコールCC.CRM」を中核に、コンサルティングからシステム導入、カスタマイズ、運用保守、さらにはBPOによる運用代行まで、業務デザインとシステム設計の両面から一気通貫で課題解決をご支援します。

PBX、ボイスボット、チャットボット、FAQシステムなど、各領域の有力ベンダーやサービスと柔軟に協業連携。お客様ごとの課題に合わせて最適なソリューションを組み合わせることで、シームレスな顧客体験(CX)と従業員体験(EX)の実現に向け、私たちがお手伝いさせていただきます。

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この記事を書いた人

XIT編集部 CRMコンサルタント 須田克美