SMARTの原則とは?成果を生む目標設定の条件

日々の生活の中で、「資格を取りたい」「仕事の成果を伸ばしたい」など、私たちはさまざまな目標を掲げています。しかし、やる気があっても挫折してしまうことは少なくありません。原因の多くは、目標の立て方にあります。曖昧な目標では行動の方向性が見えにくく、続けることが難しくなってしまうのです。
そこで役立つのが、ビジネスから学習まで幅広く活用されているSMARTの原則です。これは、人材育成の核心ともいわれ、具体性・測定可能性・達成可能性・関連性・期限設定の5要素を揃えて、成果につながる目標を設計するフレームワークです。
この記事では、SMARTのそれぞれの要素と、ビジネスの現場で活かすためのポイントをわかりやすくご紹介します。ぜひ目標設定にお役立てください。

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SMARTとは?意味と5要素

SMART(スマート)は以下の5つの要素の頭文字を取ったものです。

S:Specific(具体的である)

M:Measurable(測定可能である)

A:Achievable(達成可能である)

R:Relevant(関連性がある)

T:Time-bound(期限が設定されている)

この5つの基準を満たした目標ほど、実際に達成しやすくなり、成果につながりやすくなるといわれています。では、それぞれの意味を詳しく見ていきましょう。

S:Specific(具体的である)

目標はできるだけ具体的にすることが大切です。漠然としたままでは、進む方向が分かりにくく、途中で迷子になってしまいます。「英語を頑張る」「売上を上げる」といった表現では、人によって解釈が違ってしまい、何をすべきか曖昧なままになりがちです。

たとえば「TOEICで700点を取る」といったように、達成したい状態をはっきりと言葉にします。数字や対象、範囲を明らかにすることで、自分が向かうゴールが鮮明になり、行動にも一貫性が生まれます。具体的であるほど、成功へ近づく道筋が描きやすくなるのです。

M:Measurable(測定可能である)

どれだけ進んだのかを確認できるかどうかも、効果的な目標には欠かせません。数値や量といった評価できる指標がないと、達成状況が分からず、モチベーションが続かなくなりやすいからです。

「10kmを60分以内で走る」「月に3冊本を読む」といった数値化された目標なら、日々の積み重ねが見えやすく、改善点も把握しやすくなります。達成度がはっきり示されると、小さな成功を実感しながら前に進むことができます。目に見える形での測定は、自信と継続力を育ててくれる大切な要素です。

A:Achievable(達成可能である)

目標は高ければよいというわけではありません。現実離れした目標を掲げると、「どうせ無理だ」と心が折れてしまい、行動し続けることが難しくなります。自分の現在地をしっかり把握し、「少し頑張れば届きそう」と思えるレベルが理想です。

たとえば英語初心者がいきなりTOEIC満点を目指すと、途中で壁にぶつかり挫折しやすくなりますが、「まずは600点を目指す」といった段階的な目標なら、成功の可能性がぐっと高まります。背伸びしすぎず、着実に積み重ねていける目標が、長く続ける力を生みます。

R:Relevant(関連性がある)

目標が自分の価値観や将来のビジョンと結びついているかどうかも重要です。「なぜその目標に挑むのか」が明確だと、困難に直面しても諦めにくくなります。

たとえば「海外で働きたい」という夢がある人にとって、英語学習は直接的に役立つ行動です。また、仕事のスキル向上が評価につながるのであれば、資格取得は強い動機になります。逆に、目的と関係の薄い目標は優先度が下がり、後回しにしがちです。

目指す未来としっかり結びついた目標ほど、努力を続ける意味が感じられます。

T:Time-bound(期限が設定されている)

達成までの期限がないと、行動はどうしても先延ばしになってしまいます。「いつかやる」ではいつまで経ってもスタートできない可能性が高くなります。

「3か月後までに」「年内に」といった具体的な締め切りを設定すれば、残された時間を意識しながら計画を立てやすくなり、行動のスピードも上がります。期限があることは、ゴールまでの道のりを逆算し、効率的に進むための助けにもなります。終わりが決まっている目標は、達成までの歩みを確かなものにしてくれるのです。

SMARTに沿った目標設定の例

SMARTの原則がどのように役立つのか、具体例で見てみましょう。

例えば、「来年こそは営業でいい成績を出したい」という目標は、少し曖昧で行動に移しにくいですよね。そこでSMARTに沿って整理すると、次のようになります。

S(具体的):主要顧客への提案件数を増やす

M(測定可能):提案数を前年比120%にする

A(達成可能):週3件以上の新規提案で実現できる

R(関連性):会社の売上や評価につながる

T(期限):2026年3月末までに達成する

このようにすると、「2026年3月末までに主要顧客への新規提案数を前年比120%にする」 という、行動につながりやすい目標を整えることができます。

SMARTを使うメリット

SMARTの原則を使うことで、以下のようなメリットがあります。

  • 行動が明確になるため 迷いが減る
  • 進捗を数値で確認でき 成果が実感できる
  • 目標の実現性が高まり 成功体験が増える
  • 継続のモチベーションにつながる
  • チームで共有するときにも 齟齬が生まれにくい

会社の目標管理(MBO)やOKRといった制度にも応用されており、多くの組織で実効性が認められています。

SMARTをさらに活かすコツ!

SMART目標を立てても、運用がうまくいかなければ成果にはつながりません。そこで、以下のポイントを意識するとより効果的です。

定期的に振り返る

週や月ごとに進捗をチェックし、必要に応じて目標を調整します。
「行動はできている?」「目標はまだ適切?」と問いかけることで失速を防げます。

小さな成功を積み重ねる

いきなり大きな成果を求めず、小さなゴールを設定して達成体験を増やしましょう。達成する度に自信がつき、より大きな挑戦にもつながります。

仲間と共有する

一人だとつい妥協しがちですが、同僚や友人と共有すると、責任感が高まり達成率が上がります。励ましやアドバイスをもらえることもメリットです。

SMARTで確かな成果を生む

SMARTの原則は、達成したい目標を具体的で実現しやすい形にしてくれる考え方です。目標が明確で、自分の目的と結びつき、期限まで決まっていると、行動しやすくなり、迷いも減っていきます。小さな達成が積み重なれば自信につながり、続けやすくなるのも大きな魅力です。新しい目標を立てるときは「SMARTになっているかな?」とぜひ意識してみてください。成果へ一歩踏み出す力になってくれるはずです。

【参考】https://www.kaonavi.jp/dictionary/smart-criteria/
【参考】https://www.mdsol.co.jp/column/column_122_1350.html

この記事を書いた人

ビジネス・テクノロジスト 貝田龍太