
採用活動において、「理想の人材像が曖昧」「面接官ごとに評価基準が異なる」「採用後のミスマッチが多い」といった悩みを抱える企業は少なくありません。採用市場が激化する中で、条件面やスキル要件だけで人材を探そうとしても、思うような成果につながらないケースも増えています。
こうした状況において見直したいのが、「自社で実際に成果を出している社員」に目を向けるという視点です。理想の人材を外部に求める前に、まずは社内で活躍している人材を観察し、その共通点を明らかにすることが、採用活動の質を高める近道となります。
優れた社員の行動や思考、価値観を分析し、それを採用基準や選考プロセスに反映させることで、求める人物像はより具体的になります。さらに、トップパフォーマーの特徴を育成や評価にも活用すれば、採用活動全体の一貫性を高めることが可能です。
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成果を出す社員を分析する重要性

多くの企業では、「優秀な人材が欲しい」という言葉は使われていても、「なぜその人が優秀なのか」を具体的に説明できていないことがあります。その結果、採用要件が抽象的になり、面接の判断も感覚的なものになりがちです。
一方で、すでに成果を上げている社員は、自社の業務内容や組織文化、顧客特性に適応した行動を継続的に取っています。つまり、その人の働き方や考え方を紐解くことは、「自社で成果が出る理由」を理解することにつながります。
成果を出す社員を偶然の存在として捉えるのではなく、分析対象として向き合うことで、再現性のある採用基準を構築する土台が整います。
成果を出す社員を「教材化」するとは

個人の能力ではなく、行動や思考を整理する
ここでいう「教材化」とは、特定の社員を神格化したり、その人と同じタイプの人材を探したりすることではありません。重要なのは、成果につながっている行動や判断のプロセスを切り出し、誰でも理解できる形にすることです。
例えば、以下のような観点で整理します。
・日常業務で意識している行動
・課題に直面した際の考え方
・意思決定で重視している価値観
・周囲との関わり方や工夫
これらを言語化し、複数の成果者に共通する要素を抽出することで、「成果を出す人材の型」が見えてきます。
採用基準が具体化するメリット

曖昧な評価軸から行動ベースの基準へ
成果を出す社員を分析すると、これまで曖昧だった採用基準を具体化できます。
たとえば、「主体性がある」「コミュニケーション能力が高い」といった表現を、
・自ら課題を見つけて行動している
・相手の状況を理解したうえで提案している
・数字や事実をもとに説明している
といった行動レベルに落とし込むことが可能です。
これにより、面接官ごとの解釈の違いが減り、評価のばらつきを抑えることができます。また、候補者に対しても、自社で活躍している人材像を具体的に伝えられるため、相互理解が深まります。
面接・選考プロセスへの活用

行動事例を引き出す質問設計
教材化したトップパフォーマーの特徴は、面接質問の設計にも役立ちます。
単なる「できますか」「経験がありますか」という質問ではなく、
・どのような状況で
・何を考え
・どのような行動を取り
・どんな結果につながったのか
を具体的に確認する質問を用意することで、候補者の再現性を見極めやすくなります。
成果を出す社員の行動と照らし合わせながら評価することで、感覚に頼らない選考が実現します。
成果を出す社員を教材化する際の進め方と注意点

ステップ1:成果を定義し、対象社員を選定する
最初に行うべきことは、「成果を出している」とは何を指すのかを明確にすることです。
売上や契約数などの定量指標だけでなく、プロジェクトの完遂度、顧客評価、社内への貢献度など、職種や役割に応じた観点で成果を定義します。
そのうえで、単に一時的な成果ではなく、継続的に安定した結果を出している社員を対象として選定することが重要です。
ステップ2:ヒアリングと行動観察で情報を集める
教材化の精度を高めるためには、本人へのヒアリングだけでなく、周囲からの客観的な視点も欠かせません。
具体的には、
・どのような考え方で仕事に取り組んでいるか
・困難な状況でどのような判断をしているか
・他の社員と比べて意識している点は何か
といった点を丁寧に掘り下げていきます。
加えて、実際の業務中の行動を観察することで、本人が無意識に行っている工夫や習慣が見えてくることもあります。
ステップ3:共通点を整理し、言語化する
複数の成果者から情報を集めたら、次は共通点の整理です。
一人ひとりの個性や能力ではなく、「多くの成果者に共通して見られる行動や思考」を抽出することがポイントです。
この工程を丁寧に行うことで、属人的にならない「再現可能な人材要件」が形成されます。
教材化を進める際の注意点
成果を出す社員を教材化する際には、いくつか注意すべき点があります。
まず、「完璧な人材像」を作ろうとしないことです。
成果者にも弱みや不得意分野はあります。それらを無視してしまうと、現実離れした採用基準になってしまいます。
また、特定の社員像を固定化しすぎると、多様性を損なう可能性もあります。
あくまで「成果につながりやすい傾向」として捉え、柔軟に運用する姿勢が重要です。
育成・評価制度との連動効果

採用後の成長と定着にもつながる
成果を出す社員の分析は、採用だけで完結するものではありません。
その内容を育成指針や評価基準に反映させることで、採用から育成、評価までが一本の軸でつながります。
新入社員や若手社員に対しても、「どのような行動が成果につながるのか」を明確に示せるため、成長の方向性が分かりやすくなります。また、評価基準が明確になることで、社員の納得感向上にも寄与します。
まとめ

採用活動の質を高めるためには、必ずしも外部に答えを求める必要はありません。
むしろ、自社の中ですでに成果を出している社員こそが、最も信頼できるヒントを持っています。
トップパフォーマーの行動・思考・価値観を分析し、それを教材として活用することで、採用基準は具体化され、面接の精度も向上します。さらに、育成や評価と連動させることで、組織全体の再現性と成長力を高めることが可能です。
採用に行き詰まりを感じたときこそ、「自社の社員を知ること」から始めてみてはいかがでしょうか。
【参考】https://vc-corp.net/in-house-training
【参考】https://mitsucari.com/services/columns/high-performer-analysis
【参考】https://ameand.co.jp/service/hr-pentest/contents/competency-model/