社員教育はどうあるべき?人的資本経営と認知的徒弟制から考える「学びの設計」とは

多くの企業が人材育成に頭を悩ませています。優秀な社員の動きを真似させようとしても、思うように成果が出ないという声をよく耳にします。それは、個人の資質と伸ばせる能力を混同していることや、教育を単なる研修施策として捉えていることが原因かもしれません。本記事では、事業戦略と連動した人材の配置から、個性を活かす教育の設計、さらには現場での実践的な学びを支える仕組みまで、人を無理に複製することなく組織を強くするための具体的なアプローチを解説します。

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採用と教育は事業戦略である

企業が新しい挑戦を始めるとき、最初に直面するのが人材の不足という課題です。しかし、不足を補う手段を安易に研修や教育だけに求めてしまうと、期待した成果を得られないばかりか現場に過度な負担を強いる結果になります。人材を育てる前に、まずは事業を動かすための戦力編成を戦略的に組み立てる視点が不可欠です。

チーム編成の視点から見る人材育成の限界

プロ野球のチームを思い浮かべてみてください。来シーズンに勝利を収めるために、どうしても強力な速球を投げる先発投手が必要になったとします。このとき、チームにいる野手の全員を集めて投球練習を行い、「努力を重ねれば誰でも時速150キロメートルの速球を投げられるようになる」と信じる監督はいません。現実の監督であれば、将来性のある若い投手を熱心に育成し、他のポジションから適性のある選手を転向させ、さらに必要であれば外部から実績のある選手を補強するでしょう。そして、誰をどこのポジションに配置すれば最も勝率が高まるかを総合的に考えるはずです。

ビジネスの世界でも、まったく同じことが言えます。新規事業の立ち上げ、主要な顧客層の転換、デジタル技術や人工知能の活用、あるいは海外市場への展開といった大きな経営課題に直面したとき、社内研修を行うだけで必要な人材のすべてをそろえられるわけではありません。事業戦略の実現に必要な能力や専門性、そして具体的な人数をあらかじめ算出し、採用や配置、外部人材の活用、他社との協業、さらには企業の合併や買収といった多様な手段を組み合わせる必要があります。採用と教育を別々の人事施策として切り離して扱うのではなく、事業を成功に導くための総合的な戦力編成として捉え直す視点が必要です。

経営戦略と連動する人的資本経営

近年、多くの注目を集めている人的資本経営という考え方でも、この戦力編成の視点は中核をなしています。経済産業省が提唱する人的資本経営とは、人材を単なる費用ではなく、企業の価値を生み出す資本として捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値の向上につなげる経営手法です。実現に向けて重要なのは、経営戦略と人材戦略を完全に連動させることにあります。

具体的な実践例として、総合化学メーカーである旭化成の取り組みが挙げられます。旭化成では、経営戦略の実現に必要となる人材のポートフォリオを構築するために、求められる人材の質と量を事業軸と機能軸の両面から毎年厳密に洗い出しています。その上で、現在の社内リソースだけで確保することが難しい専門人材については、単に社内での育成や中途採用だけに頼ることはしません。企業の合併や買収、あるいは将来性のあるスタートアップ企業への投資を通じた接点強化など、多角的なアプローチによって必要な戦力を迅速に獲得しています。どの能力を社内でじっくりと育てるべきなのか、どの専門性は外部からの採用で確実に確保するべきなのか、あるいは不足している領域をどのような外部連携で補うのかという問いを、人材戦略の出発点として明確に定義しています。このような組織的な仕組みが構築されて初めて、教育や研修が真の力を発揮します。

戦力配置の重要性

ある企業では、従来の対面営業に加えてデジタル技術を活用した新規のオンラインサービスを開始することになりました。経営陣はこれからはデジタルの時代だと宣言し、既存の営業担当者全員に一律で数日間のIT研修やデジタルマーケティングの講座を受講させました。そして、研修を終えた社員たちをそのまま新規事業の現場へと投入したのです。

しかし、結果は厳しいものでした。デジタル領域の基礎知識は身に付いたものの、実際のシステム運用やデータ分析といった高度な専門業務に対応できず、現場は混乱に陥りました。さらに、不慣れな業務に追われたことで、本来の強みであった既存顧客への手厚い対面営業がおろそかになり、従来の主力事業の売上まで落としてしまうという事態を招いてしまいました。

この失敗の原因は、教育の質が悪かったからではありません。事業に必要な戦力を「既存社員の教育」という単一の手段だけで解決しようとした戦略の欠如にあります。デジタルマーケティングの核心となる高度な分析業務には外部の中途採用者や専門家を配置し、既存の社員にはデジタルツールを活用して顧客との関係性をさらに深める役割を担わせる、といった明確な役割の切り分けが必要でした。既存社員をどこの領域に配置すれば最も強みを発揮できるのかを見極めることが、教育を意味あるものにするための大前提です。

【参考】人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~

【参考】経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書 実践事例集」

「資質」と「能力」を分けて教育を設計する

社内で育てるべき力を明確にするためには、個人の資質と後天的に伸ばせる能力を混同しないことが重要です。すべての社員を優秀な誰かのコピーに変えようとする教育は、現場に無理な負担を強いるだけでなく、組織全体の多様な強みを潰してしまう原因になります。一人ひとりの特性を活かしながら、組織としての戦力を底上げするための教育設計について考えていきます。

資質と能力の違い

ビジネスの現場でよくある指導の一つに、「社内で最も成果を出しているAさんのようになりなさい」というものがあります。しかし、Aさんの華々しい成果には、本人が努力して身に付けた知識だけでなく、生まれ持った性質や得意不得意が複雑に絡み合っています。教育の効果を正しく引き出すためには、まず学習によって獲得できる「能力」と、個人差が大きい「資質」を明確に切り分ける必要があります。

能力とは、専門的な知識や業務の正しい手順、ツールの操作方法、判断の標準的な型、顧客対応の基本マナー、分かりやすい文章の作成、適切な報告や連絡、論理的な問題解決の手法など、適切な学習と実務経験を積み重ねることで誰もが伸ばせる領域を指します。これに対して資質とは、大量の情報を処理するスピードや計算の速さ、タイピングの速度、身体的なタフさ、あるいは初対面の人とすぐに打ち解けられるといった対人関係の傾向など、個人の特性に依存する部分が大きい領域です。

スポーツ選手を例に取ると、この違いがより鮮明になります。どれだけ熱心に練習を積み重ねても、全員が同じタイムでマラソンを走り切れるわけではありません。また、誰もが時速150キロメートルの速球を投げられるようになるわけでもありません。日々の練習や訓練が個人の成果を高める重要な要因であることは間違いありませんが、同じカリキュラムで同じ時間をかけて訓練したからといって、全員が完全に同じ水準や同じプレースタイルに到達するとは限らないのです。学術的な研究でも、意図的な練習や訓練が成果を高める重要な要因である一方、成果に現れる個人差のすべてを練習量だけで説明できるわけではないと示されています。

ここで重要なのは、「資質がない人間はいくら教育しても育たない」と諦めてしまうことではありません。個人差を固定的な優劣として捉えるのではなく、現時点での得意・不得意や、割り当てられた業務との相性として客観的に扱うべきです。教育の本当の役割は、すべての社員を同じ型にはめて優秀な誰かの複製を作ることではありません。業務で求められる最低限の基準を組織全体で安定して満たせるように支援し、それぞれの社員が持つ独自の強みが成果につながる状態を整えることです。

優秀な社員の「結果」ではなく「行動」を分解する

多くの企業が、社内で最も高い成果を出している優秀なプレイヤーを手本にして、教育資料やマニュアルを作ろうとします。しかし、ここには大きな落とし穴が存在します。成果を出す人の仕事の進め方には、知識や経験、合理的な判断だけでなく、本人が無意識に行っている暗黙知や、持ち前の作業速度、長年の顧客との信頼関係、あるいは本人のキャラクターといった属人的な特性が混ざり合っています。そのため、その表面的な結果や一部のやり方だけを他の社員にそのまま真似させようとしても、同じ成果を出せるわけではありません

よくある現場の失敗例として、トップ営業職の社員が使っているトークスクリプトを、そのまま新人に配って使わせるケースがあります。このトップ営業職の社員は、相手の表情や口調から瞬時に感情を読み取る高い対人資質を持っており、絶妙なタイミングで冗談を交えながら契約を勝ち取っています。しかし、その資質や背景を持たない新人が同じ言葉をなぞっても、かえって不自然な印象を与えてしまい、顧客との関係を悪化させてしまうことがあります。

企業が行うべき教育とは、優秀な人の成果という「結果」を模倣させることではなく、誰でも再現できる「行動」へと細かく分解することです。例えば、優秀な社員が業務の現場で何を起点にして動いているのかを以下のように可視化します。

  • 確認のタイミング:大きなトラブルを防ぐために、どの進捗段階で周囲や顧客に確認を入れているか
  • 優先順位の基準:複数のタスクが重なったときに、何を最も重視して処理の順番を決めているか
  • 判断の根拠:顧客からの難しい要求に対して、どのような社内ルールや過去の事例をベースにして回答を導き出しているか

本人の才能や作業スピードといった属人的な要素に依存する部分を排除し、誰もが学習によって習得できる具体的な手順や思考の型を組織の知識として残していく必要があります。才能や速度を模倣させるのではなく、学べる行動を仕組み化することが育成の鍵となります。

三段階の教育設計

全員を同じ人材に育てようとする無理な教育から脱却するためには、教育プログラム自体を目的や対象に合わせて明確に切り分ける必要があります。具体的には、共通基礎教育、職種専門教育、個人発展教育の三つの段階に分けて設計することが有効です。

第一の段階は、組織の全員が共通して身に付けるべき基礎教育です。これには、企業理念の理解や、基本的なビジネスマナー、社内での報告や連絡のルール、情報セキュリティの遵守事項などが含まれます。この段階の目的は、組織の一員として業務を円滑に進めるための最低限の土台を綺麗に揃えることです。

第二の段階は、それぞれの配属先や職種に応じて求められる専門教育です。営業職であれば自社商品の詳細な知識や提案の手順、技術職であれば必要な開発ツールの使い方やコーディングの規約などが該当します。この段階では、現場の業務を一人で進めるために必要な判断の型や、標準的な業務プロセスを確実に習得させることを目指します。

第三の段階は、個人の資質や強みに焦点を当てて伸ばしていく発展教育です。標準的な業務をこなせるようになった社員に対して、さらに高い成果を出してもらうために個々の特性に応じた支援を行います。例えば、データを緻密に分析することが得意な社員にはマーケティングの高度な講座を提供し、人と信頼関係を築くことが得意な社員には顧客管理や交渉力のスキルを磨く機会を与えます。

このように教育を三つの段階に切り分けることで、組織としての統制と個人の個性の発揮を両立させることができます。すべての社員に同じ基準を押し付けるのではなく、基礎と専門性を固めた上で、一人ひとりの強みを活かすアプローチこそが、持続可能な事業の成長を支える強力な基盤となります。

【参考】Deliberate Practice and Performance in Music, Games, Sports, Education, and Professions: A Meta-Analysis

現場でしか育たない力を「現場任せ」にしない

座学での研修を終えた社員が、実際の業務をスムーズにこなせるようになるまでには、大きな壁が存在します。業務で本当に必要とされる能力の多くは、研修のテキストや手順書を読んだだけでは決して身に付かない、現場での臨機応変な判断力だからです。

現場任せのOJTから計画的な育成へ

実務の現場で求められるのは、顧客ごとに異なる細かな事情への配慮や、予期せぬ例外への対応、限られた時間内での優先順位の調整、他部署との難しい交渉、そして失敗が発生した際の迅速な立て直し方です。これらは実際の仕事という実践の場においてのみ培われます。しかし、多くの企業が「仕事は現場で体で覚えろ」という放任型のOJTに頼ってしまいます。これでは人材は十分に育ちません。単に実践の場に放り込むのではなく、適切な機会を与え、その行動を観察し、丁寧な振り返りを行わせ、改善点をフィードバックするという育成の循環を、組織として意図的に設計する必要があります。座学で基礎知識を学び、現場で実際に試し、先輩や上司と一緒に振り返ることで、初めて知識が現場の生きた判断へと昇華します。

厚生労働省が実施した令和6年度の能力開発基本調査によると、正社員に対して計画的なOJTを実施していると回答した事業所は61.1%にとどまっています。さらに、能力開発や人材育成において何らかの問題を抱えていると感じている事業所は全体の79.9%に達しているのが現状です。多くの職場でOJTという言葉は使われているものの、その実態は計画性を欠いた現場任せの教育になっており、育成に悩む企業が非常に多いことを物語っています。

経済協力開発機構(OECD)によるレポートでも、企業が社内で効果的に職業スキルを継承していく上で大きな課題を抱えている点が指摘されています。かつてのように、熟練者の仕事を見ていれば自然と技能が引き継がれるという時代は終わりました。現場の多忙化や業務の複雑化が進む現代において、熟練者に育成の全責任を丸投げするだけでは、技能の継承は到底進みません。現場での実践と、組織による計画的な支援および振り返りの時間を適切に組み合わせることが急務となっています。

問いを返すメンタリングと観察

現場での学びをより確かなものにするために、指導者による伴走、すなわちメンタリングの仕組みが注目されています。ここで誤解してはならないのは、メンターの役割は、業務の答えを新人に与え続けることではない点です。本人が自分自身の頭で考え、行動を起こし、その結果としての失敗や成功から深く学び、次の機会に自ら改善していけるように陰から支える存在こそがメンターです。新人が壁にぶつかったときに、すぐに正解を教えるのではなく、「なぜその場面でそう判断したのか」「次に同じ状況が起きたとしたら、まず何を確認するか」といった問いを投げ返すことで、本人の内省を促し、自立的な思考力を育てていきます。

過去の研究によると、メンタリングには仕事への前向きな態度や人間関係の構築、キャリア形成など、幅広い領域において肯定的な効果があることが確認されています。ただし、その教育的な効果の大きさは決して万能薬と言えるほど突出して高いわけではありません。メンタリングの制度をただ導入するのではなく、実際の業務に挑戦する機会の確保や、直属の上司による積極的な関与、適切な人員配置、失敗を恐れずに発言できる組織風土と密接に組み合わせることが求められます。

新人は、用意された研修資料以上に、日々自分のすぐ近くで働く先輩や上司のリアルな振る舞いを観察して多くのことを学び取ります。顧客に対してどのように誠実に向き合っているか、思いがけない失敗をしたときにどのように上司へ報告しているか、周囲の同僚とどのように良好な関係を築いているか、あるいは分からないことが出てきたときにどうやって調べているかといった一挙手一投足が、すべて無意識の教育として機能しています。新人に「誰の背中を見せるか」という選択は、環境設計における極めて重要な要素となります。よくある失敗例として、業務成績は優秀であっても周囲への態度が強めの先輩を指導係につけてしまい、新人が萎縮して適切な助けを求められなくなり、結果として早期の離職につながってしまうケースがあります。誰を指導者として選ぶかは、新人のその後の仕事観を大きく左右します。

認知的徒弟制に基づく「仕事の型」の獲得

どのような優れた成果を出すトッププレイヤーであっても、かつては何も分からない若手時代があり、指導してくれた先輩や師匠が存在しました。しかし、多くの活躍している人材が、当時の先輩の技能や働き方をそのまま丸ごと模倣して成長したわけではありません。仕事の進め方のテンポや、判断のスピード、顧客との特有の距離感には、それぞれの人が持つ資質やこれまでの人生経験が色濃く反映されています。どれほど素晴らしいやり方であっても、自分の資質に合わない型を無理に取り入れようとすれば、かえって動きがぎこちなくなり、成果に結びつかないばかりか、精神的にパンクしてしまう原因になります。

優れた先輩の背中から学ぶべき本質は、同じ人間になることではありません。大切なのは、「あの先輩はこの場面でこのような着眼点を持っていた。では、自分の強みや現在の置かれた状況に合わせて、どのように応用して実践できるだろうか」と主体的に思案することです。優れた先輩の動きは、そのままコピーするための正本ではなく、自分なりの仕事の型を新しく作り上げていくための貴重な材料として捉えるべきです。だからこそ、一人の優れた指導者のもとから、まったく異なる個性やプレースタイルを持った多様な人材が育つという現象が起こります。指導者が若手に引き渡すべきなのは、指導者自身が見つけ出した正解ではなく、仕事に真摯に向き合う姿勢や、判断の裏側にある論理的な根拠、指示、そして変化に合わせて学び続ける態度そのものです。そこから何を選び、どのように自分の仕事のスタイルへと変換していくかは、本人が自身の責任において考えるべき領域です。

このような育成のプロセスを説明する教育理論として、「認知的徒弟制」という考え方があります。これは、伝統的な職人の徒弟制度を現代の知識労働に応用したもので、指導者が頭の中で行っている目に見えない思考プロセスを、段階を経て学習者に身に付けさせていく手法です。具体的な流れは以下の通りです。

  1. 見せる(モデリング):指導者が実際に業務を行う様子を実演し、そのとき頭の中で何を考えているかを言葉にして伝えます。
  2. 支える(スキャフォールディング):学習者に業務をやらせてみて、難しい部分だけを指導者が適切にサポートします。
  3. 言語化する(アーティキュレーション):学習者自身に、なぜそのやり方を選んだのか、その根拠を自分の言葉で説明させます。
  4. 振り返る(リフレクション):指導者のアプローチと自分のアプローチを比較し、どこに違いがあるかを客観的に分析させます。
  5. 探索させる(エクスプロレーション):指導者のサポートを完全に無くし、学習者が自らの力で新しい課題を解決できるように促します。

この一連の流れを意識して指導を行うことで、若手社員は先輩の表面的な真似にとどまらず、自ら思考し問題を解決する力を確実に身に付けることができます。教育の最終的な目的地は、知識の詰め込みではなく、自律的に成長し続けられる人を一人でも多く増やすことに他なりません。

【参考】令和6年度『能力開発基本調査』の結果について

【参考】Creating Responsive Adult Learning Opportunities in Japan

教えるだけでは育たない

労働市場の変化や技術の進歩が激しさを増す現代において、特定の限られた業務にしか使えないテクニカルスキルだけでなく、異なる職種や環境に移行しても柔軟に活かすことができるポータブルスキルの重要性が高まっています。しかし、ポータブルスキルは教科書の知識のように一方的に教え込んで完結するものではありません。実際の現場で自ら考え、行動を起こし、数々の失敗や違和感から自発的に気づきを得るプロセスを通じて、じわじわと身に付いていく「学び方」そのものだからです。

最大の学びの場が日々の現場にあることは紛れもない事実ですが、日々の業務に追われる現場に対して「あとはよろしく頼む」と教育の重責をそのまま押し付けるだけでは、育成が進まないばかりか組織全体が疲弊してしまいます。経営や人事に求められるのは、現場に近い実践環境で起きる生々しい出来事に対して、社員が当事者としてどのように向き合い、どのように振る舞うべきかを自分自身の頭で整理できるよう、多角的な仕組みで支援することです。そして、受け入れ側の現場が無理なく指導に携わり、実践を通じた学びを最大化できるように、評価制度や業務量の調整を含めた丁寧な橋渡しを行うことです。

教育の本質は、単に既成の答えを配ることではありません。採用から配置、そして現場への継続的な支援を含む一連の人材戦略を通じて、激しい変化の中でも自ら進んで学び、周囲と手を取り合いながら事業を力強く前に進められる人と組織を創り出すことです。

この記事を書いた人

ビジネス・テクノロジスト 貝田龍太