仮想通貨だけじゃない!
コンソーシアム型ブロックチェーンの可能性と未来

現在、仮想通貨などの利用において主流とされている「パブリック型ブロックチェーン」は、「データの透明性」「取引の公平性」「データの耐改ざん性」といった魅力がある一方、プライバシーがなく、悪意のあるユーザーを排除できないといったデメリットも指摘されています。それに対し、プライベート型ブロックチェーンは、パブリック型の問題とされてきた処理速度の低下を回避でき、合意形成も楽ではあるものの、透明性や公平性においてはブロックチェーンの良さが失われていると言えます。今回は3つ目の選択肢、コンソーシアム型ブロックチェーンについて見ていきましょう。

【関連記事】ブロックチェーンがより実用的に?エンタープライズブロックチェーンとは

仮想通貨だけじゃない?コンソーシアム型ブロックチェーンとは

ブロックチェーン技術を活用することで、特定の機関に集中していたシステム構築や運用、データ品質の担保などに対する責任やそれに伴う様々なコストを分散できます。そのため、仮想通貨だけでなく、業界・企業間を跨いだ業務連携システムの構築において、コンソーシアム型ブロックチェーンの活用が期待されています。

パブリック型とプライベート型の良さを合わせ持つ!

コンソーシアム型ブロックチェーンとは、複数の管理者が存在するブロックチェーンを指します。複数の企業や組織が運営することで、改ざん耐性や分散性など、パブリック型ブロックチェーンの利点を享受しつつ、プライベート型の処理スピードを併せ持つことが可能です。また、信頼された者同士でネットワークを形成するため、セキュリティや障害に対しても高い耐性があり、より安全な取引ができます。

高い公平性と安全性をもつコンソーシアム型

コンソーシアム型のメリットとして、管理者が複数存在しルール変更についても一定数以上の合意が必要なため、一管理者による恣意的な運用を避けられる点があります。また、セキュリティや耐障害性もプライベート型に比べると強固です。さらに、身元が明らかな企業や組織のみ参加を認めることができるため、パブリック型のように悪意のある参加者が紛れ込む心配もありません。

コンソーシアム型ならではの注意点は?

コンソーシアム型ブロックチェーンを運用する際は、許可されたすべての参加企業がセキュリティを万全にする必要があるでしょう。また、あらかじめ参加条件などを定めた規約も必要です。ある市場での事業活動のためにコンソーシアム型ブロックチェーンに参加する必要があるとして、もし一部の事業者の参加を拒否するようなことがあれば、競争法に抵触する可能性もでてきます。

【参考】損保総研レポート 第124号 コンソーシアム型ブロックチェーン技術の保険業務への活用と競争法上の留意事項

流通や医療の分野でも活躍するコンソーシアム型

ビジネスにブロックチェーンを適用するために、コンソーシアム型ブロックチェーン基盤を立ち上げる、という動きが広がっています。コンソーシアム型ブロックチェーンは、他社と協働することで付加価値の創出や効率化が期待できます。実際の活用事例を見ていきましょう。

NTTデータによるスマートフードチェーン

NTTデータでは、2018年に内閣府の研究開発モデル事業に採択された「スマートフードチェーンプラットフォームの構築」プロジェクトにおいて、2022年度から本格実証試験を開始しました。ブロックチェーンを活用したデータ連携によるスマートフードチェーンシステムにより、日本の生産者の情報や輸送中の温度管理を行うことで、日本の農林水産物や食品の価値を向上させ、輸出の拡大やフードロスの削減につなげることを目指しています。

【参考】ブロックチェーンを活用したスマートフードチェーンシステムの輸出実証試験を開始

エストニアの電子カルテ管理

エストニアの保険当局は、ブロックチェーン技術を支える同国のベンチャー企業と連携し、100万人以上に及ぶ国民の健康記録を電子カルテで管理しています。

また、2018年からブロックチェーンを活用し、フィンランドと国境を越えた医療データの共有プロジェクトも進行中です。

これが実現すると、両国の人々がどちらの国の医療機関で治療を受けても、患者の医療データに簡単にアクセスができ、迅速で的確な治療が可能になります。

【参考】エストニアとフィンランドがデータベース連携、両国間のデータのやり取りが可能に

日本でも始まるブロックチェーン活用

ブロックチェーン活用支援事業などを行う「canow株式会社」は2022年4月、医療機関・調剤薬局・配送会社間のシームレスな連携を目的とする「NFT処方箋」の実証実験を行いました。

事前に登録した基礎疾患や常備薬などの情報と合わせ、薬局へ処方箋が共有される仕組みで、情報の秘匿性を保ちつつ、複数の事業者間での情報共有の円滑化が可能です。

このように、信頼性を維持しながらデータを一元管理できるブロックチェーンは、医療現場が抱えるさまざまな課題の解決策としても期待されています。

【参考】GENie株式会社、セントラル薬局グループ、東京白金台クリニック、canow株式会社、ブロックチェーン技術のNFTを活用した処方箋の有用性に関する実証実験を開始

BaaS利用でブロックチェーンを効果的に活用

コンソーシアム型ブロックチェーンの利用にメリットが見い出せても、ブロックチェーンを構築するには多大な時間や労力がかかります。そこで活用したいのがBaaS(Blockchain as a Service)です。

BaaSの市場規模は、2021年から2027年の間に大きく成長し、2027年には179億米ドルに達すると予測されています。

【参考】BaaS(Blockchain as a Service)の市場規模、2027年に179億米ドル到達予測

Baasとはブロックチェーン開発サービス

BaaSとは、ブロックチェーンを活用したアプリやサービスなどを開発する際、その基盤をクラウド上で提供してくれるサービスです。BaaSを使用することで、ブロックチェーンアプリ開発が楽になります。

ブロックチェーン構築の負担が軽減される

ゼロからブロックチェーンアプリケーションを開発するためには、様々な作業や工程が必要です。ネットワークの構築などの作業ばかりに時間を取られていると、本質的なビジネスに費やす貴重な時間が削られることになります。

BaaSを利用することで、ブロックチェーンの構築に必要となる煩雑な作業が軽減され、より良いサービス展開のためのコアな部分に注力できるようになるでしょう。

BaaSによる提供サービス例

Amazonが提供する「Amazon Managed Blockchain」では、ブロックチェーンの作成や管理など、様々なニーズに対応するオプションを従量課金制で利用することができます。

日立ソリューションズによる、Consensys Quorum Supportでは、Consensys Quorumを用いた開発の導入支援を受けることができます。プライバシー設定や暗号化、監視ツール等を利用し、必要な信頼性を備えたブロックチェーンを迅速に開発できるでしょう。また24時間サポートサービスの利用も可能です。

ブロックチェーンの可能性は無限大

パブリック型に代表されるブロックチェーンは、開発当初は仮想通貨での利用について大きく話題になりましたが、現在ではプライベート型やコンソーシアム型などのエンタープライズ型ブロックチェーンも広く知られるようになり、医療や物流など様々なジャンルで開発・導入・活用が進んでいます。

さらに今後、新しいビジネスやマーケットを生み出す基盤として多くの企業が注目していくでしょう。ブロックチェーンは仮想通貨にとどまらない無限の可能性を秘めています。ぜひエンタープライズブロックチェーンを活用し、ビジネスをさらに発展させていきましょう。

この記事を書いた人

ビジネス・テクノロジスト 貝田龍太