日本から海外への旅行者を「アウトバウンド」、訪日する海外旅行者を「インバウンド」と呼ぶことが多くなり、みなさんも「アウトバウンド」という言葉を耳にされることがあるのではないでしょうか。
コールセンターにおいて「アウトバウンド」とは、コールセンターから電話を発信する「架電業務」のことで、いわゆる「電話営業」を意味します。
人海戦術でばらつきが多くなりがちな印象があるコールセンターのアウトバウンド。
本記事では、アウトバウンド業務を行うコールセンターに関する基本的な知識をおさらいします。アウトバウンド業務の効率化に必要なCTIシステムや管理のためのKPI、アウトバウンド業務で活躍する人材像などについて、3回の連載で詳しくご紹介します。
そもそも「アウトバウンド」の意味とは
マーケティングにおける「インバウンド」「アウトバウンド」
旅行業界で使われている「インバウンド」「アウトバウンド」と、コールセンターにおける「インバウンド」「アウトバウンド」は意味が異なります。
企業から消費者に向けたアプローチの違いを指す「インバウンド」「アウトバウンド」というマーケティング用語もあります。
「インバウンドマーケティング」とは、企業のウェブサイトやインスタグラムなどのSNS、動画などのコンテンツを介して消費者の流入を促し、購買に誘導する受動的な営業手法のことです。
これに対し「アウトバウンドマーケティング」とは、ダイレクトメールや電話営業、訪問営業など、企業側から消費者に直接アプローチする能動的な営業手法です。
コールセンターの「アウトバウンドコール」は電話営業のことを指しますが、営業社員が業務の片手間に各自で架電する方法ではなく、架電業務を集約して業務を行うのがアウトバウンドのコールセンターです。一元的に電話営業活動を行うことで、営業ノウハウだけでなく、顧客からの声を集約することが可能になるという大きなメリットがあるのです。
アウトバウンドコールの種類とは
電話を発信するアウトバウンドコールは、大きく2つに分けられます。
電話帳などを使用して、消費者に無作為に電話を発信する方法がひとつ。もう1つは既に商品やサービスに何かしらの契約をしている顧客リストをもとに電話を発信する方法です。
どちらも新規顧客の獲得や、契約の継続や売り上げ拡大を目的とするマーケティング活動です。これらB to Cのアウトバウンドコールだけではなく、お客様企業に電話をかけるB to Bのアウトバウンドコールも増えてきています。
このような種類を問わず、アウトバウンドコールを行うコールセンターの業務全体を「アウトバウンド業務」と呼ぶことが多い印象です。代表的なアウトバウンド業務としては以下のようなイメージがあるのではないでしょうか。
- 世論調査や選挙の投票調査
- クレジットカード会員向けの上位カードへの変更おすすめ
- 健康食品の定期購入者向け追加販売のおすすめ
- 携帯電話やひかり通信のキャンペーンのご案内
みなさんも、自宅でこのような電話がかかってきたご経験をお持ちなのではないでしょうか。
いかに効率よく「つながる電話」をかけられるか
アウトバウンド業務では、すべての架電がつながることはまずありません。今は在宅率も低く、電話をかけてもつながらないことが多い時代です。電話がつながったとしても、すぐに断られることの繰り返しになることがほとんどです。
なかなか成果に結びつかず、自信を喪失して退職していくオペレーターも少なくありません。退職補充の採用にはコストが必要な上に、教育も最初からやり直しとなります。
アウトバウンドコールを消費者側からみれば、予期しないタイミングでいきなり電話がかかってくるわけですから、「どうやって断ろうか」と考えるのは当然のこと。案内される商品やサービスがニーズに合っていなければますますその傾向は強まります。
アウトバウンドの業務効率は、架電相手のニーズとの架電先リストのマッチングに大きく左右されるのです。購買に結び付く架電先にたどり着くまで、いかに効率よく架電し続けられるかが重要なのです。
コンタクト率の向上はアウトバウンドに適したCTIで
アウトバウンド業務の重要なKPIのひとつに「コンタクト率」があります。架電してキーマンと話ができた割合を示す指標で、この「コンタクト率」の管理がアウトバウンド業務効率化の基本なのですが、単なる人海戦術に陥り、コンタクト率が上がらないままリストを消化してしまうという状況に陥りがちです。
しかし、この課題はアウトバウンド業務の効率化に適したCTIの導入で解決できることがあります。代表的な機能をご紹介します。
プレディクティブ・ダイヤラー(予測自動発信)
架電リストをシステムに登録し、システムが自動発信するシステムです。相手が電話に出ると、空いているオペレーターにつないで、パソコン画面に顧客情報をポップアップします。
しかし、システムの予測より多くの電話がつながってしまったり、オペレーターの通話時間が長引くなどして待機しているオペレーターの数が少なくなることがあります。この場合、顧客側は電話に出ても無言で切られる状態、いわゆる「ワン切り」が発生してしまうという問題があり、現在は「プログレッシブ・ダイヤラー」を利用するようになりました。
プログレッシブ・ダイヤラー(自動発信)
オペレーターの処理が終了した時点で空いているオペレーターの回線数だけ発信します。電話がつながった場合に、必ず対応できるオペレーターがいるため、プレディクティブ・ダイヤラーのような「ワン切り問題」は発生しません。
プレビュー・ダイヤラー(手動発信)
オペレーターが顧客情報をパソコン上で閲覧し、発信する顧客をオペレーターが選択することで自動的に発信します。過去の通話履歴などを確認してから発信できるので、より丁寧な対応が可能です。
架電先リスト管理
登録した架電先リストに一定の条件を設定し、発信の対象となる電話番号を抽出します。顧客の属性による抽出はもちろんのこと、特定の時間帯に在宅率が高い電話番号を抽出して集中的に発信するなどしてコンタクト率を向上させることができます。また、顧客の要望に合わせて再発信する日時や担当するオペレーターを指定することなども可能です。
レポーティング機能
不在・留守電・応答などの架電結果を集計し、レポート形式で提供します。発信を行う業務の進捗状況を分析することができ、戦略立案を可能にします。クライアントへの報告にも必須の機能といえます。
デジタルとの組み合わせが増えていく
今回はアウトバウンドシステム5つをご紹介しましたが、今後はさまざまなデジタルソリューションとの組み合わせによる効率化がさらに進んでいくといえるでしょう。
急な入電増加などによりインバウンドであふれたコールを、折り返しのアウトバウンドで対応することはよくあります。これを手動で行うと、入電が多い上にさらに管理工数が大幅に増え、現場の負担が増大します。
しかし最近は、IVRで折り返しコールの予約が行われたお客さまのデータをリスト化してダイヤラーに連携する流れをRPAで行うことで、管理工数を大幅に削減するだけでなく、機会損失の回避につなげた成功事例などもありました。
またアウトバウンドでは、ハイパフォーマーのトークをほかのオペレーターと共有することが重要ですが「音声認識」を活用してトークをテキスト化し、スピーディーに共有できるようになってきました。
「ハイパフォーマーの〇〇さんのトーク」と言われるより、AIのデータとして共有されるほうが心理的に受け入れやすいというオペレーターさんの声も少なくありません。
コロナ禍の影響もあり、インサイドセールスや非対面営業が増えてきています。アウトバウンド営業にデジタルソリューションを組み合わせることにより、今後もさまざまな可能性が増えていくと考えられます。楽しみですね。
まとめ
いかがでしたか。今回はコールセンターにおける「アウトバウンド」とその課題とは何か、また、それらの課題を解決するCTIシステムの機能についてご紹介しました。
次回は、コールセンターのアウトバウンド業務の管理に必要となる「KPI(Key Performance Indicator)」について詳しくご紹介します。
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