カスタマーサービスの効率化は顧客からの満足度や信頼を得るうえで欠かせません。ワークフローマネジメントは、仕事で発生するさまざまなタスクの流れを見える化・定型化して、電子システムを活用しながら業務効率化を図る方法です。そしてこの方法は、昨今のビジネスモデルが「売り切り型」から月額で定額利用料を徴収する「サブスクリプション型」へと変わったことに対応するための手法、カスタマーサクセスとも結びついています。ここでは、ワークフローマネジメントを始める上での課題を踏まえながら、実践的な方法を紹介していきます。
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ワークフローシステムの上手な選び方
ワークフローマネジメントを取り入れる際は、カスタマーサポートのプロセスを洗い出し、確認・分析することから始めましょう。スタッフへのヒアリングを通して課題を見つけ出し、ワークフローシステムを使って改善できそうな業務過程があるのか検討する必要があります。課題を発見できたら、ワークフローシステムの導入です。ここでは、ワークフローシステムの選び方を見ていきましょう。
搭載機能
自社の規模や環境に応じて適切な導入形態を選びましょう。大企業になればなるほど、申請・承認フローは複雑化する傾向が見られます。そのため、自社のフローに合わせられるような柔軟なワークフローシステムを選ぶ必要があります。セキュリティやコンプライアンスなどの統制機能が自社に沿っているかなども大切なポイントです。
予算とコストのバランス
初期費用や年間にかかる費用をシミュレーションし、自社の予算と照らし合わせて比較検討しましょう。またシステム導入前に見積もりを依頼し、紙代やプリント代、人件費などどれくらい削減できるコストがあるのか把握しておくことも大切です。
操作性・カスタマイズ性はどうか?
自社ですでに利用している会計システムや勤怠管理システムなどと連携できれば、業務効率はさらに上がり、ミス防止にもつながります。また導入前にスタッフが活用できる操作性を備えているか、自社の導入目的に沿った活用ができるか確認しましょう。ただし、システムの導入にあたって、申請書の書式を作り替えたい場合は、必ずしも現行の書式に対応しているシステムを選ぶ必要はありません。
それぞれの問題点を解決しよう
例えばコールセンター業務では、顧客からの問い合わせがあった際、その問題に対する解決策や知識・情報を的確に回答できる担当者へとつなぐことが求められます。しかしながら、電話での対応を得意とする人がチャットでの返信も得意とは限りません。そのため、人材の育成にも力を注ぐ必要があります。
業務の属人化
スキルの高い特定のスタッフしか対応できない業務がないか確認しましょう。業務の属人化を避けるためには、まずカスタマーサポートで働くスタッフの業務を細分化した上で、精度の高いマニュアルを作成することがおすすめです。属人化を解消することは、労働環境の改善、サービスの品質改善、生産性の向上にもつながります。
スタッフ間における情報の共有不足
「顧客からどのような問い合わせが多いのか」といった情報を収集し、管理、共有することでトラブルを未然に防ぐことができます。顧客が抱えている疑問や不満を受け止め、改善することはカスタマーサクセスの基本です。個人のノウハウを共有することで、作業スピードが上がり、業務やスタッフ育成にかかる時間を短縮できます。
スタッフのスキルに差がないか?
スタッフ全員に同じスキルレベルを求めることは難しいですが、どんな問い合わせにも臨機応変に対応できるよう、自社の商品やサービス、業務内容をしっかり把握させるようにしましょう。新人のオペレーターには、マニュアルの流れに沿って完結できる業務から始めてもらうなど、顧客にスキル格差を感じさせない工夫も大切です。
カスタマーサポートのワークフローは適切?
カスタマーサポートのワークフローが、組織内でどのようなものになっているか見直ししてみましょう。もしかしたらチーム内だけで完結させない方がいいこともあるかもしれません。例えばカスタマーサポートでシステムに障害が起きた時、マーケティングチームと連携してSI(システムインテグレーション)の対応方法をSNSで宣伝してもらうことも可能です。つまり、ワークフローマネジメントは縦割り組織の弊害を大きく改善するものでもあります。
トライアルでわかること
トライアル期間を利用して実際に使用してみましょう。作業をスムーズに管理できるようになるまで、修正と改善を繰り返していきます。しかしながら、トライアル期間中に全ての機能を試すことはできません。そのため、効率化したい業務と導入する目的を改めて明確にしましょう。目的を明確にすることは、自社に合わせた機能をピックアップするためのもっとも大切なステップです。チェックする際のポイントは次の3つです。
改めてフォームやフローについて見直しする
はじめに設計・設定したフォームやフローを使ってみて、「使いにくい」「分かりにくい」点がないか確認しましょう。はじめから完璧を目指すのではなく、見直しの機会を設けるという前提で進めていくのがおすすめです。また定期的にワークフローの監査を行い、現在のワークフローに必要な更新、変更、最適化について話し合うことで、良い目標を定めることができます。
運用サポートを活用してみる
トライアル期間中に疑問点が生じた場合、社内で解決しようとせず、システム運用サポートを積極的に活用しましょう。なぜなら「迅速に回答を得られるか」「初心者でもわかりやすい操作説明資料やQ&Aが整っているか」「サポート受付可能時間は」といった視点で、そのシステムのサポート体制を確認できるからです。
他社の導入例を参考にしてみる
他社のワークフローシステム導入事例は、検討する際の参考になります。自社と同じ規模、導入目的を参考に、運用が成功している事例がないか探してみるといいでしょう。例えば、大企業向けに設定されている細かな承認フローの機能が、中小規模の会社にはあまり必要ないケースが多く、シンプルな操作機能をおすすめしていたりするからです。
ワークフローマネジメントを成功させよう
繰り返し行われる日常業務こそ、ワークフローマネジメントが必要です。現状必要のない手続きの廃止、統合を行い、責任の所在を明確にする。この「業務の見直し」こそが、真の効率化をもたらします。ただし、それを成功させるためにはスモールスタートが基本です。小さく始めて、小さな範囲で出た課題をひとつずつ解決してから利用範囲を拡大しましょう。また導入前には必ずトライアルを活用し、自社に適したシステムなのか見極めることも大切です。