製品と商品の違いって?B2Bマーケティング戦略における製品開発と商品開発

B2Bマーケティングにおいて、「製品」と「商品」の概念を正確に理解し、適切に活用することは効果的な戦略立案の基礎となります。本記事では、これらの違いを詳細に解説し、B2Bマーケティング戦略における役割や活用方法について探ります。

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製品と商品の基本的な定義と位置づけ

製品と商品は、ビジネスにおいて頻繁に使用される用語ですが、その定義と位置づけには重要な違いがあります。ここでは、製造業と卸売・小売業の視点から、B2BとB2Cの文脈で、製品と商品の違いを詳しく解説します。

製造業における製品と商品の定義

製造業において、「製品」とは自社の工場で製造・加工したものを指します。これは技術的な特徴や性能が重視される傾向にあり、まだ市場での販売準備が整っていない状態を表します。一方、「商品」は製品に価値や魅力が付加され、市場で取引される対象となったものを意味します。

例えば自動車メーカーの場合、製品は工場で組み立てられたばかりの自動車を指し、商品はディーラーで販売される、オプションや保証が付いた自動車を指します。同様に、電子機器メーカーでは、製品は製造ラインから出てきたばかりのスマートフォンであり、商品はパッケージング、付属品、保証書が付いた状態で店頭に並ぶスマートフォンとなります。

製造業では、自社製品を「商品化」するプロセスが重要です。これには、パッケージングデザイン、ブランディング、価格設定、販売チャネルの選択などが含まれます。このプロセスを通じて、製品に付加価値を与え、消費者にとって魅力的な商品へと変換していくのです。

卸売・小売業における製品と商品の位置づけ

卸売・小売業では、「製品」と「商品」の区別がより曖昧になる傾向があります。これらの業態では、外部の調達先から仕入れたものを主に扱うため、多くの場合「商品」という用語が使用されます。

しかし、いくつかの場合には「製品」という概念が適用されることがあります。例えば、小売業者が自社ブランドで販売する商品を開発・製造する場合、その過程で生み出されるものは「製品」と呼ぶことができます。また、仕入れた商品に対して、小売業者が独自の加工やカスタマイズを行う場合、その過程で生み出されるものは「製品」の性質を帯びます。

具体例を挙げると、スーパーマーケットチェーンの場合、自社ブランドの食品を開発・製造する過程にあるものが「製品」であり、店頭に並べられ、消費者が購入可能な状態のものが「商品」となります。同様に、アパレル小売業では、仕入れた衣類に自社でカスタマイズを加えている段階のものが「製品」であり、店頭やオンラインショップで販売される状態の衣類が「商品」となります。

このように、卸売・小売業においても、特定の状況下では「製品」と「商品」の概念が区別されることがあります。ただし、その境界線は製造業ほど明確ではなく、業態や取り扱う商品の特性によって異なる場合があります。

B2BとB2Cにおける製品・商品の違い

B2B(企業間取引)とB2C(企業対消費者取引)では、製品と商品の捉え方に違いがあります。

B2B市場

B2B市場における製品は、技術的特徴や性能が重視され、顧客企業の生産プロセスや業務効率化に直接影響を与えるものとして捉えられます。一方、商品は顧客企業の具体的な課題解決や価値提供に重点を置いた、総合的なソリューションとして提供されるものを指します。

B2C市場

B2C市場では、製品は消費者ニーズを満たすために開発・製造されたものを意味します。これに対し、商品は消費者に直接販売される、ブランディングやマーケティングが施された製品として定義されます。

例えば、B2B市場の工作機械メーカーの場合、製品は高精度の工作機械そのものを指し、商品は工作機械に加えて、導入支援、オペレーター研修、メンテナンスサービスなどを含めた総合的なソリューションとなります。一方、B2C市場のスマートフォンメーカーでは、製品は最新技術を搭載したスマートフォン本体を指し、商品は消費者向けにブランディングされ、アプリやクラウドサービスとセットで提供されるスマートフォンとなります。

製品と商品の区別は、企業の業態や市場によって異なる場合がありますが、基本的には「販売準備の段階」と「顧客に提供される価値」の違いに注目することで理解できます。B2B市場では特に、製品の技術的優位性と商品としての総合的な価値提案を両立させることが重要です。

企業は、自社の製品を効果的に商品化し、顧客に価値を提供することで競争力を高めることができます。そのためには、製品開発段階から市場ニーズを的確に捉え、商品化プロセスを戦略的に設計することが求められます。

B2B市場における製品戦略と商品戦略

B2B市場において成功を収めるためには、製品戦略と商品戦略を適切に組み合わせることが不可欠です。本稿では、これら二つの戦略の特徴と重要性について詳しく解説し、企業が効果的なアプローチを構築するための指針を提供します。

製品戦略

B2B市場における製品戦略は、主に技術開発や機能向上に焦点を当てます。この戦略では、製品の品質、耐久性、効率性などの技術的側面を強調し、競合他社との差別化を図ります。製品戦略の主な要素には以下が含まれます。

  1. 研究開発への投資
  2. 品質管理の徹底
  3. 製品ラインナップの拡充
  4. 技術革新の追求

商品戦略

一方、商品戦略は、製品に市場価値を付加し、顧客企業のニーズに合わせてカスタマイズすることに重点を置きます。この戦略では、製品の基本的な機能や性能に加えて、以下のような要素を考慮します。

  1. 顧客企業の業務プロセスへの適合性
  2. アフターサービスやサポート体制
  3. カスタマイズオプションの提供
  4. 総合的なソリューションとしての価値提案

B2B市場では、単なる製品販売ではなく、顧客企業の課題解決や業績向上に貢献する総合的なソリューションとして商品を位置づけることが重要です。

製品と商品の違いを活かしたB2Bマーケティング戦略

B2Bマーケティング戦略において、製品と商品の違いを理解し、それぞれの特性を活かした戦略を立案することは極めて重要です。以下に、効果的な戦略立案のためのポイントを挙げます。

顧客企業のニーズに基づく製品開発

製品開発の段階から顧客企業の具体的なニーズや課題を把握し、それらに対応する機能や性能を盛り込むことが重要です。これにより、製品から商品への転換がスムーズになります。

付加価値サービスの設計

製品の基本的な機能や性能に加えて、導入支援、トレーニング、カスタマイズサービスなどの付加価値サービスを設計し、総合的なソリューションとして商品化することで、顧客企業にとっての価値を高めることができます。

柔軟なカスタマイズ能力の確保

B2B市場では、顧客企業ごとに異なるニーズや要求があるため、製品を基盤としつつ、柔軟にカスタマイズできる能力を持つことが重要です。これにより、より多くの顧客企業のニーズに対応できる商品を提供できます。

製品ライフサイクル全体を通じたサポート体制の構築

製品の販売だけでなく、導入後のサポートや保守、アップグレードなど、製品ライフサイクル全体を通じたサポート体制を構築することで、継続的な顧客価値を創出し、長期的な関係性を構築できます。

マーケティングコミュニケーションの最適化

製品の技術的特徴や性能を訴求するコミュニケーションと、商品としての総合的な価値や課題解決能力を訴求するコミュニケーションを適切に使い分けることで、より効果的なマーケティング活動を展開できます。

B2Bマーケティング戦略において、製品と商品の違いを理解し、それぞれの特性を活かした戦略を立案することは極めて重要です。製品戦略では技術的優位性を追求し、商品戦略では顧客価値の最大化を目指します。両者を適切に組み合わせることで、競争力のある総合的なB2Bマーケティング戦略を構築できます。

B2Bマーケティングにおける製品戦略と商品戦略

B2Bマーケティングにおいて、製品戦略と商品戦略は企業の成功を左右する重要な要素です。これらの戦略を適切に組み合わせることで、競争力のある総合的なマーケティングアプローチを構築できます。ここでは、B2B市場における製品戦略と商品戦略の特徴、そしてこれらを統合的に活用する方法について詳しく解説します。

製品戦略の特徴と重要性

製品戦略は、企業が提供する製品やサービスの技術的側面に焦点を当てます。この戦略の主な目的は、高品質で革新的な製品を開発し、市場に投入することです。B2B市場における製品戦略の主な特徴は以下の通りです。

技術開発への注力

製品戦略では、最新の技術や革新的な機能の開発に重点を置きます。これにより、競合他社との差別化を図り、市場でのリーダーシップを確立することを目指します。

品質と耐久性の重視

B2B市場では、製品の品質と耐久性が特に重要です。顧客企業は長期的な使用を前提としているため、高い信頼性と安定性が求められます。

効率性の追求

製品の効率性向上は、顧客企業の生産性や業務効率の改善につながります。そのため、製品戦略では常に効率性の向上を目指します。

製品ラインナップの拡充

顧客企業の多様なニーズに対応するため、幅広い製品ラインナップを提供することも製品戦略の重要な要素です。

製品戦略の成功例として、ERPシステムの開発が挙げられます。ERPは企業の基幹業務を統合管理するシステムであり、その技術的な優位性が企業の競争力向上に直結します。例えば、SAP社のERPソリューションは、高度な機能性と柔軟性を備えており、多くの企業に採用されています。

商品戦略の特徴とその重要性

一方、商品戦略は製品に付加価値を加え、顧客企業のニーズに合わせてカスタマイズすることに重点を置きます。B2B市場における商品戦略の主な特徴は以下の通りです。

ソリューション提案

単なる製品販売ではなく、顧客企業の課題解決や業績向上に貢献する総合的なソリューションとして商品を位置づけます。

カスタマイズ

顧客企業の特定のニーズに合わせて製品をカスタマイズし、より高い価値を提供します。

アフターサービス

導入支援、トレーニング、保守サービスなど、製品導入後のサポートを重視します。

業界特化型アプローチ

特定の業界や業種に特化した商品開発を行い、より深い顧客理解と高度な問題解決能力を提供します。

商品戦略の成功例として、クラウドERP「ツバイソ」が挙げられます。このERPは、顧客管理や案件管理、会計管理などの機能を統合し、企業活動全体のデジタル化と自動化を支援します。さらに、企業ごとの特有のニーズに合わせて機能拡張が可能であり、既存システムとの連携も容易です。

【参考】RobotERP ツバイソ

製品戦略と商品戦略の統合的アプローチ

B2B市場で真の成功を収めるためには、製品戦略と商品戦略を統合的に活用することが重要です。この統合的アプローチの主なポイントは以下の通りです。

顧客中心の製品開発

製品開発の段階から顧客企業のニーズを深く理解し、それらに対応する機能や性能を盛り込みます。これにより、製品から商品への転換がスムーズになります。

柔軟なカスタマイズ能力

基本的な製品機能を維持しつつ、顧客企業の特定のニーズに合わせて柔軟にカスタマイズできる能力を持つことが重要です。

包括的なソリューション提供

製品の技術的優位性と、導入支援やアフターサービスなどの付加価値サービスを組み合わせ、総合的なソリューションとして提供します。

継続的な価値創造

製品の販売だけでなく、導入後のサポートやアップグレード、新機能の追加など、製品ライフサイクル全体を通じて継続的に価値を提供します。

この統合的アプローチの成功例として、製造業向けERPパッケージ「Ross ERP」が挙げられます。このERPは、製造業特有の要件に柔軟に対応し、生産管理や販売物流管理、原価管理などのシステムをシームレスに統合しています。さらに、全拠点の調達から製造、販売までを統合管理し、リアルタイムのデータ活用を可能にしています。

【参考】化学・食品向け基幹業務システム Ross ERP

B2Bマーケティング戦略においては、製品戦略と商品戦略を適切に組み合わせることが成功の鍵となります。技術的優位性を持つ製品を基盤としつつ、顧客企業の具体的なニーズに応える付加価値サービスを提供することで、競争力のある総合的なソリューションを市場に提供できます。企業は自社の強みと市場ニーズを見極め、これらの戦略を効果的に活用することで、B2B市場での持続的な成長を実現できるでしょう。

製品開発・商品開発の事例:調理器具メーカーの場合

A社は、家庭用および業務用調理器具の製造販売を手掛ける中堅企業です。近年の健康志向の高まりと、調理の効率化ニーズに対応するため、新しい多機能調理器の開発に着手しました。このケースを通じて、B2Cおよび B2Bマーケティングにおける製品開発と商品開発のプロセス、そしてその違いを具体的に見ていきましょう。

製品開発:革新的な多機能調理器の誕生

A社の研究開発チームは、市場調査と技術革新を組み合わせて、新しい多機能調理器の開発に取り組みました。この製品開発プロセスは以下のように進められました。

1. 市場ニーズの分析

研究開発チームは、消費者の食生活の変化や調理時間の短縮ニーズ、健康志向の高まりを詳細に分析しました。同時に、飲食店や給食施設などの業務用ニーズも調査しました。

2. 技術的特徴の決定

分析結果に基づき、以下の技術的特徴を持つ製品の開発を決定しました。

  • 多機能性:蒸す、煮る、炒める、焼くなど複数の調理方法に対応
  • IoT機能:スマートフォンと連携し、レシピ提案や遠隔操作が可能
  • 省エネ設計:従来の調理器具と比べて30%の省エネを実現
  • 安全機能:過熱防止や自動電源オフ機能を搭載

3. プロトタイプの作成と改良

初期プロトタイプを作成し、社内テストを実施しました。フィードバックを基に、操作性や清掃のしやすさなどを改良しました。

4. 製品仕様の確定

最終的な製品仕様を以下のように決定しました。

  • 7つの調理モードを搭載(蒸す、煮る、炒める、焼く、発酵、低温調理、保温)
  • 10インチのタッチパネルディスプレイ搭載
  • Wi-Fi接続によるスマートフォンアプリ連携
  • 容量:家庭用3L、業務用10L
  • 本体重量:家庭用5kg、業務用15kg

この製品開発プロセスにより、A社は技術的に優れた新製品を生み出すことに成功しました。しかし、これはあくまでも「製品」であり、まだ市場に出す準備が整っていない状態です。

商品開発:顧客ニーズに応えるトータルソリューションの創出

製品が完成した後、A社のマーケティングチームは、この製品を市場で価値のある「商品」として提供するための戦略を立案しました。このプロセスは以下のように進められました。

1. 顧客セグメントの明確化

マーケティングチームは、家庭用と業務用の2つの主要セグメントを特定し、それぞれのニーズを深掘りしました。

2. ソリューション提案の策定

調査結果に基づき、以下のようなカスタマイズオプションを含むトータルソリューションを企画しました。

家庭用

  • レシピ開発サービス:栄養士監修の健康レシピを毎週配信
  • オンラインクッキング教室:製品を使った調理テクニックを学べる
  • 保証期間の延長オプション:通常1年を3年に延長

業務用

  • メニュー開発コンサルティング:効率的な大量調理レシピの提案
  • カスタマイズ設定:店舗ごとの調理プログラムをカスタマイズ
  • 24時間サポート体制:故障時の迅速な対応を保証

3. 価格戦略の決定

製品単体での販売価格に加え、各種サービスを含めたパッケージ価格を設定しました。特に業務用では、初期導入コストを抑えつつ、継続的なサービス収入を見込むサブスクリプションモデルも導入しました。

4. マーケティングコミュニケーションの準備

製品の技術的特徴だけでなく、導入による具体的なメリット(時間節約、健康的な食生活、運営コスト削減など)を強調したプロモーション資料や事例集を作成しました。

5. 販売チャネルの整備

家庭用は直販サイトと家電量販店での販売、業務用は直販体制を強化するとともに、業務用厨房機器販売会社との協力関係を構築しました。

このプロセスを通じて、A社は単なる「製品」を、顧客の具体的な課題解決に貢献する「商品」へと進化させることに成功しました。

製品戦略と商品戦略の統合によるシナジー効果

A社は、製品開発と商品開発のプロセスを明確に区別しつつ、それぞれの強みを活かした統合的なアプローチを採用しました。この戦略には以下のようなメリットがあります。

技術的優位性の確保

製品開発段階で実現した多機能性やIoT機能は、競合他社との差別化要因となります。

顧客ニーズへの的確な対応

商品開発プロセスで付加したサービスやカスタマイズオプションにより、家庭用・業務用それぞれの顧客の具体的な課題解決を可能にします。

長期的な顧客関係の構築

レシピ配信やメニュー開発コンサルティングなどのサービス提供により、単発の製品販売を超えた継続的な関係性を築くことができます。

高付加価値ビジネスモデルの実現

製品単体の販売に比べ、ソリューションとしての提供により、より高い利益率を実現できる可能性があります。

このように、製品戦略と商品戦略を適切に組み合わせることで、B2CおよびB2B市場において競争力のある総合的なソリューションを提供することが可能になります。

まとめ

B2Bマーケティングにおける製品と商品の違いを理解し、戦略的に活用することが企業の成功につながる重要な要素となります。技術的な製品開発と顧客視点の商品開発を統合的に推進することで、競争力の高いソリューションを市場に提供できます。B2B企業は、自社の強みと市場ニーズを見極め、製品と商品の概念を戦略的に活用することで、市場での成功を実現できるでしょう。

参考資料

「製品」と「商品」はどう使い分ける? – ニュースイッチ

「製品」と「商品」の違い:販売準備の有無がポイント

この記事を書いた人

ビジネス・テクノロジスト 貝田龍太