ECサイトの作り方と選び方を徹底解説!自社に合うプラットフォームの見極め方

ネットショップを始めたいけれど、「どんなECサイトを作ればいいの?」「自社に合うプラットフォームはどう選ぶ?」と悩んでいませんか。
ECサイトにはモール型や自社型などさまざまな種類があり、それぞれ特徴やメリット・デメリットが異なります。
本記事では、主要なECサイトの種類とその特徴、選び方のポイントをわかりやすく整理。
自社の目的や事業規模、運用体制に合った最適なECサイトを構築するための基本知識と判断基準を、初心者にもやさしく解説します。
これからECサイトを作りたい方、リニューアルを検討している方はぜひ参考にしてください。

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ECサイトの4つのタイプ

ECサイト構築にはさまざまな手法があり、どのタイプを選ぶかによってコストや運用のしやすさ、拡張性、ブランド戦略が大きく変わります。2025年現在、主流となるのは「モール型」「ASP型」「オープンソース型」「パッケージ型」の4タイプです。それぞれの特徴や適した事業規模、運用体制を理解することが、最適な選択につながります。ここでは、4タイプの基本的な概要を整理します。

【参考】ECサイトの種類一覧

モール型ECサイト

モール型は、Amazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングなどの大手ECモール内に自社ショップを出店する方式です。最大の特徴は、モール自体が持つ圧倒的な集客力を活用できる点です。モール運営側が決済や物流、セキュリティなどのインフラを整備しているため、出店者は商品登録や販売、カスタマーサポートに集中できます。EC初心者や小規模事業者でも短期間でネット販売を開始できるのが魅力です。

一方で、デザインや機能面でのカスタマイズは制限され、ブランド独自の世界観を表現しにくいという課題もあります。また、売上に応じた手数料が発生し、モール内での競争も激しくなりがちです。短期間で集客したい場合や、販路を増やしたい場合に有効な選択肢ですが、長期的な利益率やブランド構築を重視する場合は慎重な検討が求められます。

ASP型ECサイト

ASP型(Application Service Provider型)は、ShopifyやBASE、カラーミーショップなどのクラウド型サービスを利用して自社ECサイトを構築する方式です。初期費用や月額料金が比較的安価で、テンプレートや管理ツールが充実しているため、専門知識がなくても運用しやすいのが特徴です。独自ドメインでの運用や、一定範囲でのデザイン・機能カスタマイズも可能です。

ただし、カスタマイズの自由度には限界があり、他社サービスへの乗り換えがしにくい場合もあります。低コストで自社ブランドのECを始めたい、運用負担を減らしたい事業者に適しています。

オープンソース型ECサイト

オープンソース型は、EC-CUBEやMagento、WooCommerceなど、ソースコードが公開されているプラットフォームを利用し、自社または外部開発会社と連携してECサイトを構築する方式です。最大の特徴は、ソースコードレベルでの自由なカスタマイズが可能な点です。独自の要件やデザイン、システム連携が求められる場合でも柔軟に対応できます。

一方、サーバーの用意やセキュリティ対策、保守運用も自社(または委託先)で担う必要があり、エンジニアリソースや開発・運用コストがかかります。自社独自の機能やデザインを追求したい、長期的に柔軟な運用を目指したい企業に向いています。

パッケージ型ECサイト

パッケージ型は、ecbeingやCommerce21、EC-ORANGEなどのベンダーが提供する高機能なパッケージソフトを導入し、自社要件に合わせてカスタマイズする方式です。大規模なECサイトやBtoB向けなど、複雑な業務要件や多機能を求められるケースに強みがあります。導入後もベンダーによるサポートやアップデートが受けられるため、安定した運用が可能です。

ただし、初期費用・運用コストともに高額になりやすく、他社サービスへの乗り換えも容易ではありません。大規模展開や独自業務フローが必要、長期的なサポートを重視したい企業に適しています。

4タイプの比較まとめ

  • モール型:モールの集客力や信頼性を活用できる一方、手数料や競争、独自性の制約がある。
  • ASP型:低コスト・簡単運用で自社ECを始めやすいが、カスタマイズや大規模運用には向かない。
  • オープンソース型:高い自由度と拡張性が魅力だが、専門知識や保守コストが必要。
  • パッケージ型:大規模・高機能サイトや独自要件に強くサポートも充実しているが、初期・運用費用が高い。

選び方のヒント

  • 事業規模や予算に合わせて、無理のない方式を選ぶ。
  • 自社のITリソースや運用体制を考慮し、専門知識の有無で選択肢を絞る。
  • 将来の拡張性やブランド戦略を見据え、成長に合わせて移行しやすい方式を検討する。
  • 必要な機能やサポート体制の充実度、セキュリティや運用負担も比較する。

自社の現状と目標を明確にし、こうした観点から最適な構築方式を選ぶことがEC事業成功の第一歩です。

ケーススタディ:持ち帰り弁当のチェーンの場合

企業がECサイトを開設する場合、どのようにして選べばいいでしょうか。ここでは持ち帰り弁当チェーンを運営する企業がECサイトを立ち上げた事例をもとに、ECサイト開設の進め方と選ぶ際のポイントについて考えます。

A社の現状とECサイト立ち上げの必要性

A社は地方都市で持ち帰り弁当のチェーンを経営する企業です。コロナ禍で来店客が大幅に減少し、売上の回復が大きな課題となっていました。新たな販路を開拓するため、宅食の定期購入サービスを中心としたECサイトの立ち上げを検討し始めました。

しかし、A社にはECサイト運営の経験もIT専任者もいません。どのような方法でサイトを構築すべきか、どんな機能や運用体制が必要か、判断材料が不足していました。「何から決めるべきか」「どのサービスを選べばよいか」といった根本的な疑問を抱えていたのです。

ECサイト構築のための要件整理と方向性の決定

A社ではまず、社内で「どんなECサービスなら自社の強みを活かせるか」について議論が行われました。
「お弁当の宅配だけでは大手に勝てないし利幅も薄い。在宅ワーク・育児・高齢世帯の手助けになる定期購入サービスを用意してはどうか」という意見が採用され、“地域の生活を支える宅食の定期便”という新たなサービスコンセプトが決まりました。

  • 取扱商品は「日替わり弁当」「健康志向弁当」「ファミリー向けセット」など
  • メインターゲットは「高齢者世帯」「共働き家庭」「健康志向層」
  • サービスの中心は「定期購入(週1回、月4回など)」と「単品注文」

この段階で、定期購入機能や顧客管理、決済の多様化、スマホ対応など、必要となる機能やサイトのイメージが具体的になりました。

プラットフォーム選定の検討ポイント

A社は、外部コンサルタントに意見を仰ぎ、ECプラットフォームの種類と市場状況についてのレポートを受け取りました。
コンサルタントは「ASP型」「オープンソース型」「パッケージ型」「モール型」などの特徴と、A社の現状との適合性を比較しながら説明しました。

  • ASP型は初期費用が安く、短期間でサイト開設が可能。定期購入やサブスク機能も標準搭載されているサービスが多い。
  • オープンソース型はカスタマイズ性が高いが、サーバー管理やシステム保守の負担が大きい。
  • パッケージ型は大規模向けでコストが高く、A社の規模では過剰。
  • モール型は集客力があるが、ブランド独自性や定期購入サービスの柔軟な設計には向かない。

A社は「ITリソースが限られている」「スピード重視」「初期投資を抑えたい」「定期購入サービスをすぐ始めたい」という条件から、ASP型が最も現実的だと判断しました。

ASP型サービス導入の実際

A社はASP型ECプラットフォームの中から、自社の要件に合うサービスを選定しました。
定期購入サービスへの対応や運用のしやすさ、サポート体制、コスト面などを総合的に評価し、導入を決定しました。

テンプレートを活用し、「週1回・月4回の定期便」「お試し1回コース」など複数プランを設計。商品写真や説明文も外注し、地元食材や手作り感が伝わるページ作りを意識しました。注文・決済・顧客管理まで一元化できる仕組みが整い、スタッフも短期間で操作に慣れることができました。

運用開始後の展開と次のステップ

運用開始後、積極的な広告や地道な営業活動によって認知度が拡大し、A社のECサイトは軌道に乗り始めました。
しかし、サービスを拡大する中で「独自の販促機能やデザイン」「より柔軟な定期購入システム」など、ASP型では対応が難しいカスタマイズの限界に直面します。

そこでA社は、さらなる成長と差別化を目指して、パッケージ型ECプラットフォームの導入を検討し始めました。今後は自社の運用ノウハウを活かしつつ、より高度な機能や独自サービスの実現に向けて、次のステップへ進もうとしています。

ケーススタディを踏まえたECサイト導入のポイントと選ぶときの注意事項

ケーススタディを踏まえ、これからECサイトを導入・選定する企業が失敗しないためのポイントと注意事項を、段落ごとに分かりやすく整理します。各段階で自社の状況を正しく見極め、現実的かつ柔軟な判断を重ねていくことが成功のカギです。

導入目的とターゲットの明確化

ECサイト導入の第一歩は、「なぜ始めるのか」「誰に何を届けたいのか」を明確にすることです。A社も「地域の生活を支える宅食の定期便」という独自の役割を定め、競合との差別化やブランド構築につなげました。

  • 目的の整理:自社の課題や将来像を言語化し、「なぜ今ECを始めるのか」を社内で共有する。
  • ターゲット設定:高齢者世帯、共働き家庭、健康志向層など、具体的な顧客像を明確にする。
  • 独自価値の定義:大手との差別化や地域密着など、自社ならではの強みをコンセプトに反映させる。

サービス・商品内容の設計

ターゲットのニーズと自社の強みを掛け合わせて、選ばれる理由となる商品・サービスを設計することが重要です。A社の「生活支援型の定期便」のように、単なる商品販売にとどまらない付加価値が鍵となります。

  • 主力商品の選定:ECで展開する商品やサービスを厳選し、ターゲットに刺さる内容にする。
  • 付加価値の創出:定期購入や限定セットなど、リピートや満足度を高める仕組みを用意する。
  • 競合との差別化:競合他社のサービスや価格帯を調査し、自社だけの特徴やメリットを明確にする。

必要機能と運用体制の整理

サービスを実現するために、必要な機能と現実的な運用体制を具体的に整理することが、無理なく持続可能なEC運営につながります。A社は定期購入や顧客管理など、必須要素を明確にしました。

  • 機能要件のリストアップ:定期購入、顧客管理、多様な決済、スマホ対応など、必要な機能を具体的に整理する。
  • 運用リソースの確認:社内のITスキルや運用担当者の配置を見直し、不足分は外部委託も検討する。
  • KPI・目標設定:初年度の売上や会員数など、具体的な数値目標を設定し、進捗管理や改善の指標にする。

プラットフォームの比較検討

自社の現状や将来像に合ったプラットフォームを選ぶことが、運用の安定と事業成長の土台となります。A社は外部コンサルタントの助言を受け、段階的な成長を見据えた選定を行いました。

  • 方式ごとの特徴把握:ASP型、オープンソース型、パッケージ型、モール型などのメリット・デメリットを整理する。
  • サポート体制の確認:導入後のトラブル対応や運用サポートの有無・内容(電話・メール・チャットなど)を必ずチェックする。
  • 拡張性・移行性の検討:事業拡大や機能追加、他システムとの連携、移行のしやすさも事前に確認しておく。

費用・リスクの現実的な見積もり

費用とリスクを現実的に見積もることで、無理のないスタートと持続的な成長が実現します。
初期費用・月額費用・運用コストなど、総合的な予算設計が重要です。A社も段階的な投資計画でリスクを抑えました。

  • 総コストの把握:システム利用料、決済手数料、外注費、広告宣伝費など、全体のコスト構造を明確にする。
  • 段階的な投資戦略:最初はASP型でコストを抑え、事業が拡大した段階でパッケージ型やフルスクラッチへの移行を検討する。
  • 補助金・助成金の活用:自治体や国の支援策を活用し、初期投資の負担を軽減する方法も検討する。

社内外の知見を活用する

専門家や現場の知見を活用することで、見落としやリスクを最小限に抑えた選択ができます。
A社もコンサルタントのレポートやアドバイスをもとに、選定プロセスを効率化しました。

  • 専門家の活用:外部コンサルタントやシステム会社の知見を活かし、最新の市場動向や技術トレンドを把握する。
  • 現場担当者の意見反映:実際に運用するスタッフの声をヒアリングし、現場目線での課題や使いやすさを事前に洗い出す。
  • 情報収集と比較検討:複数サービスの資料請求やデモ体験、他社事例の研究を通じて、納得感のある選択を目指す。

ECサイト導入は、各段階で「目的・ターゲットの明確化」「サービス設計」「必要機能と運用体制の整理」「プラットフォーム比較」「費用・リスクの見積もり」「知見の活用」を丁寧に検討することが不可欠です。
A社のように、段階的に始めてノウハウを蓄積し、成長に合わせて柔軟に見直していく姿勢が、長期的な競争力につながります。

ECサイトの種類と選び方のポイント

ECサイトにはモール型、自社型(ASP・パッケージ・オープンソース)、定期販売型などさまざまな種類があり、それぞれ特徴やメリット・デメリットが異なります。
自社の目的やターゲット、事業規模、運用体制、必要な機能、コスト、サポート体制、将来的な拡張性などを総合的に比較検討し、自社に最適なECサイトの種類とプラットフォームを選ぶことが重要です。
段階的に導入しながらノウハウを蓄積し、成長や環境変化に合わせて柔軟に見直していく姿勢が、長期的な競争力につながります。

この記事を書いた人

ビジネス・テクノロジスト 貝田龍太