チャットで変わる!コンタクトセンター業務
~チャットと人~

電話以外の問い合わせ方法が増えたことで、様々なチャネルで顧客応対ができる「コンタクトセンター」が生まれました。中でもチャットは、電話よりも気楽に問い合わせができ、メールよりもレスポンスが良いことから、多くの人に利用されています。また、コンタクトセンター業務の効率化という観点からも、チャットの活用で電話応対を減らし、オペレーターの負担を軽減できます。

一般的にコンタクトセンターが使用するチャットは、有人チャットかチャットボット、もしくはその併用タイプです。コンタクトセンターにおけるチャットの役割や、AI技術の躍進が続く今、有人チャットをあえて行うメリットについて見ていきましょう。

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応対手段の増加で生まれたコンタクトセンター

現在は電話やメール、チャットやSNSなど、様々な形でコミュニケーションをとることができます。こうした応対手段の増加に対応するため、複数チャネルを持つお客様窓口「コンタクトセンター」が生まれました。コンタクトセンターの役割とチャットを活用するメリットを確認しましょう。

コンタクトセンターの役割

コールセンターは基本的に電話対応のみを行いますが、コンタクトセンターは電話やメール、チャットなどの複数チャネルを通した幅広い応対が可能です。複数チャネルの対応を一か所で行うことで、お問い合わせ内容や顧客情報の一元管理、チャネルをまたぐ対応をスムーズに行えます。ただ、コンタクトセンターの機能を持っていてもコールセンターと呼ばれることがあるように明確に呼び分けられてはいません。

どちらにしても、お客様と直接やり取りを行う「企業の顔」としての役割があり、真摯な接客を通して良好な関係を築くことが求められます。

チャットが持つメリット

チャットは、メールよりもレスポンスが良く、電話をかけるよりも手軽にできます。例えば、契約内容や料金の問い合わせなど、電話で問い合わせるほどではないものの、メールの返事が待てない場合にチャットを使います。時間や場所を問わずにコンタクトが取れることも魅力です。Mobilus SupportTech Labが2021年に実施したお客さま窓口の利用実態調査でも、実際に問い合わせをした約6割のお客様がチャットを利用し、その8割以上が利便性を実感していることがわかります。

また、チャット対応なら複数のお問い合わせを同時進行で対応できるため、コンタクトセンターの業務効率向上にも期待できるでしょう。

【参考】【お客さま窓口の利用実態調査2021】消費者の6割がチャットでの問い合わせを経験、2年前の1.6倍に増加。 非接触・遠隔サポートができる、アバター接客に4割は抵抗なし。(Mobilus SupportTech Lab)

有人チャットについて

チャットでのコミュニケーションは、人が対応する「有人チャット」とAIを活用する「チャットボット」があります。この記事では、有人チャットについて紹介します。

有人チャットに最適な担当者とは

電話応対は並行して行えないため、オペレーターをチャット担当とコール担当に分ける必要があります。ただし、コミュニケーション手段がチャットに置き換わるだけなので、コール経験が全くない、商品やサービス知識が全くない新人オペレーターを配属させることは避けましょう。メールよりもレスポンスの良さを求められるため、応対にもたつくようではチャットを使う意味がありません。チャット担当者は、ベテランオペレーターが担うことが理想です。そうすることで、複数の問い合わせの同時対応が可能になります。

有人チャットシステムの導入とメリット

有人チャットツールには、チャットボットとの兼用タイプやSNSアカウントと連携可能なタイプ、有人チャット専用のタイプに分けられます。自社の要件に応じてタイプを選択し、受付時間や対応上限数、Webサイトへの設置場所などの運用方針を決めることが必要です。定型文や回答文のテンプレートを設置したり、既存の顧客管理システムと連動させるなど、システムの機能を活用することで、より細やかなで迅速な対応もできるようになります。こうしたサジェスト機能を使うことで、簡単な受け答えなら経験の浅いオペレーターでも対応できるようになるでしょう。

有人チャットにおける効果測定

チャットは、複数同時対応やお客様都合の長い待機時間などから、コール業務と同じ指標が使えません。測定方法は求める効果によっても変わりますが、目安として受電量の削減割合で見ることが可能です。事例として、PC関連機器を製造・販売する株式会社バッファローはLINEによる有人チャットを導入し、受電数を4割削減に成功しました。チャットの活用で、1対6での対応や画像による説明が可能となったからです。さらに、受電数を減らすことでコールの応対率を向上させています。

【参考】株式会社バッファロー|LINEの有人チャット導入で入電数40%減少。 “1対6”のオペレーションで効率的な運用を実現。

AIではなく人が対応するメリット

AI技術は日々向上しており、チャット対応もチャットボットが行うケースが増えています。簡単なお問い合わせはチャットボットで、難しいものは有人チャットでと分けているセンターも多いでしょう。あえて有人チャットを導入するメリットは何でしょうか。

きめ細やかな対応が可能

電話で直には言えないお客様が、チャットでクレームを入れることもあります。お客様の気持ちに寄り添い、不安を払拭させるような複雑な応対は、AIにはまだできません。AIは単語の繋がりから文章の意図を汲み取りますが、行間を読むことができないからです。また、有人チャットならお客様の困りごとに寄り添った柔軟な対応もできます。

専門性の高いやり取りをテキストで残すことができる

複雑な問い合わせは電話のほうが良さそうですが、録音していない限り内容を後で確認することができません。特に専門性の高いやり取りは、文字で残すことで事後の確認が容易になります。また、聞き間違いや言い間違い、言った言わないでトラブルになることがあるため、チャットによる文字ベースのやり取りが安心です。さらに、文字ベースで記録されることで検索性が上がり、問い合わせ業務の効率化にも役立ちます。

構築の手間が省ける

AIによるチャットボットの有用性は大きいものの、実際に運用に乗せるまではFAQの充実やシステム構築が必要不可欠です。定型の問い合わせがあまりない、チャットの利用が少ない、効果が上がる構築ができていないなどの場合、手間に見合う十分な効果が期待しにくい傾向があります。有人によるチャットは導入が比較的簡単で、SNSを利用すれば無料で使えるツールもあります。お試しで始める場合は、まずは有人チャットで様子を見るのも良いでしょう。

有人チャットはなくならない!

LINEなどのSNSツールの浸透でチャットの利用率が高まっています。コンタクトセンターにおいても、チャットを活用することで、時間のかかる電話対応を減らし、オペレーターの負担を減らすことが可能です。文字ベースでのコミュニケーションになるため、いずれAIになるかと思われがちですが、有人ならではの行間を読む能力、柔軟な対応力がある限り有人チャットがなくなることはないでしょう。もちろん、簡単な問い合わせはチャットボットで、対応が難しいものは有人チャットでという使い分けは進むと考えられます。チャットの活用でお客様の利便性が上がり、オペレーターの電話応対を減らすことができるため、まずはチャットをコンタクトセンター業務にどう組み込んでいくかをデザインしていきましょう。

この記事を書いた人

XIT編集部 スペシャリスト 塚越友貴