5Gで何が変わった?進化のポイントと6Gにむけて
~4Gまでの歴史と5Gの特徴~

4Gが世界中で普及したことにより、通信の大容量化が進み、多くのユーザーにおけるニーズはすでに満たされたと言えます。しかし、5Gの普及によってさらに大容量で高速な通信インフラの構築が可能になり、私たちがまだ想像していない未来が期待できるでしょう。

今回は、1Gから3Gへ至る移動通信システムの進歩をたどりつつ、4Gや5Gでできるようになったこと、そしてこの先どのようなことが可能になっていくのか考察していきます。

関連記事:5Gで何が変わった?進化のポイントと6Gにむけて~5Gの可能性と6Gの展望~

「G」って何?携帯電話進化の歴史

携帯電話やスマホなどの通信規格を表す「G」は、「世代」を意味するGenerationの頭文字であり、「移動通信システム」つまり携帯キャリア(ドコモ、ソフトバンク、KDDIなど)が持つ無線データ通信網における技術の進歩を表しています。それぞれどのような技術であったか、1Gから順に見ていきましょう。

1G(第1世代)

1980年代に登場した1Gは、自動車電話やショルダーフォン用の通信規格として商用化されました。音声はアナログ通信でしたが、これは盗聴されやすいなどセキュリティに弱い側面があります。そのため、1990年代にはデジタル方式による通信規格に移行されました。

2G(第2世代)

1993年に第2世代移動通信システムとして登場した2Gは、デジタル方式の通信規格です。デジタル化されたことで携帯電話によるデータ通信が活発になると、1999年にNTTドコモが「iモード」のサービスを開始し、インターネットやメールが携帯電話でも可能になりました。

一方、2Gでは各国の通信規格に互換性がなかったため、通信サービス利用者が世界中で利用できるよう、次世代の通信システムでは統一規格の策定が目指されました。

3G(第3世代)

2000年頃に登場した3Gは、2Gと比べて通信速度が大幅に向上し、より高速なデータ通信を可能にしました。

また3GではITU(国際電気連合)によって定められた「IMT-2000」標準に準拠することで、1台の携帯電話を世界中で使うことができるようになり、同時に海外のデバイスが日本でも普及するようになりました。そしてついに現在主流である4Gの技術へとつながります。

【参考】総務省 移動通信システムの進化とその影響

そして現在の「4G」とは

「4G」はスマートフォンの利用者数が激増した2010年代にその流れを支え、現在も主流である通信速度50Mbps〜1Gbpsの通信規格です。正確には2010年に「LTE(Long Term Evolution)」が、4Gを先取りした3G技術「3.9世代」として発表されましたが、現在ではこれも4Gの一種として認識されています。スマートフォンのためのモバイルネットワーク技術である4Gは、通信速度が飛躍的に向上したことで、スムーズなインターネット利用だけでなく、モバイルゲームや動画など大容量コンテンツを楽しめるようになりました。

次世代「5G」で一体何が可能になるか?

5G、すなわち「第5世代移動通信システム」は、日本では2020年春から商用サービスがスタートし、次世代の通信インフラとして社会に大きな技術革新をもたらすと言われています。

5Gによってできることが大幅に増え、様々な企業が次世代通信環境を活用した新サービスに着手しています。具体的にどのような世界が広がっていくのでしょうか。

5Gの特長

5Gのコンセプトは2015年9月、国際連合の専門機関「国際電気通信連合」無線通信部門(ITU-R)が策定したレポート「IMTビジョン勧告」の中で初めて発表されました。

「高速大容量」「高信頼・低遅延通信」「多数同時接続」が大きな3つの特長です。

5Gの可能性

5Gの特長のひとつである「多接続」は、モノをインターネットにつなげるIoT機器の普及を促進させると考えられます。今までのような家電だけでなく、工場や店舗、学校などあらゆる場所でIoT化が進むでしょう。

また、AIの「ディープラーニング」の精度を高めるためには、膨大なデータが必要となります。こうしたビッグデータを収集する際に大きな鍵になるのもIoTです。

5Gが普及し膨大なデータ通信にも耐えられるようになれば、AI開発に必要なビッグデータを効率良く収集でき、AIモデルの精度向上が期待できます。

そして、高精細な映像を提供する「メタバース」には、膨大な通信容量に加え、低遅延の性能も求められます。5Gの通信環境が整うことによって「メタバース」関連サービスの普及が期待されます。

一方、4G/5G基地局は、複数の基地局間で調整すべき設定があり、この設定を最適化することで通信品質を向上させることができるものの、従来型のコンピューターでは膨大な時間がかかる計算になることがあります。今後、そこに量子コンピュータ技術を用いることで、ほんの数秒で最適解が得られることが期待されています。

5Gの現状

このようにメリットの多い5Gですが、日本ではまだまだ走り出したばかりです。大手通信3社(NTTドコモ、au、ソフトバンク)は2020年3月より5Gのサービスを開始しました。

ただ通信速度は当面4Gの2〜3倍速い程度にとどまるとされています。今後数年かけて5Gに対応した基地局を全国に増やし、普及を促していくようです。

満足のその先へ!5Gが見せてくれる新しい未来

2020年代はAI・IoT・ビッグデータの活用が加速し、社会全体のデジタル化が進められていくでしょう。4Gが「スマートフォンのための技術」だったとすると、5Gは多くの場面で多様なニーズに応えられる「2020年代の社会を支えるモバイルネットワーク」と言えます。

デジタル化が進んだ先の2030年代に想定される社会では「5Gの次」に続く新しいインフラが必要です。

6Gでは、5Gの各性能をさらに高めるとともに、「空・海・宇宙への通信エリア拡大」「超低消費電力・低コストの通信実現」「産業向け用途における超高信頼通信」など、移動通信システムにおける新たな技術領域へも挑戦していくことが考えられます。ますます目が離せない6Gへの進歩、次世代のインフラに引き続き注目していきましょう。

この記事を書いた人

ビジネス・テクノロジスト 貝田龍太