5Gで何が変わった?進化のポイントと6Gにむけて
~5Gの可能性と6Gの展望~

スマート家電やメタバースの出現により、私たちの生活は10年前と比べて大きく変わりましたが、具体的にはどう変わったのでしょうか。今はスマートフォン一つあれば、ドアのロックやエアコンのスイッチを入れるなど様々なことができる時代です。工場や医療の分野でも自動化や遠隔操作などが進んでおり、住んでいる地域に関わらず様々なサービスを受けられるようになりつつあります。これらを支えているのは5Gのサービスですが、世界はすでに6Gに向けて動き出しました。ここでは5Gの特徴と可能性、6Gの展望について見ていきましょう。

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5Gで暮らしがもっと快適に!

日本では2020年3月から5G(第5世代移動通信システム)のサービスが開始されました。5Gの特徴は「高速・大容量」「低遅延」「多接続」の3つです。これらの特徴により、どのようなことができるのか見ていきましょう。

IoT機器の普及

IoT(Internet of Things)とは、家電、医療機器、建物、工場の生産ライン設備など、今までインターネットに繋がれていなかったものをネットワーク接続して、データのやり取りや操作を行うことです。大容量のデータをやり取りすることになるため、4Gの約20倍という5Gの大容量通信技術が鍵となります。

スマートフォンでドアのカギを操作するスマートロックや、外出先から家電の操作をするスマート家電が普及し始めていますが、IoTは家電だけにとどまりません。医療の分野では、遠隔診療だけでなく、遠隔地から手術のサポートをすることもできます。これにより、地域間の医療格差がなくなっていくでしょう。また、遠隔操作やデータ分析など、工場の生産ラインや農業でもこの技術は発揮されています。特に、人員が減少傾向にある農業界では、IoTは期待されていると言えるでしょう。

自動運転の進化

5Gの特徴である「低遅延」「多接続」は自動運転の進化に大いに役立っています。自動運転はレベルが分れており、現在は条件付自動運転車にあたるレベル3です。これは、高速道路など限定的な場所で自動運転にできる段階ですが、ドライバーはいつでも運転に戻らなければなりません。

データのやり取りに遅延が起これば大事故になりかねないため、自動運転を可能にする重要条件は、通信速度にあります。5Gの通信遅延は1秒の1000分の1ほどと言われており、ほぼ遅延を感じないレベルです。また、5Gは1つの基地局で接続できるデバイス数が4Gの約10倍あり、首都圏などの交通量が多い場所でも通信障害が起こりにくく自動運転を普及させる後押しとなっています。

5Gとメタバース

昨今耳にするようになった「メタバース」は、3次元の仮想空間やその空間におけるサービスのことです。広く認知されている「あつまれどうぶつの森」や「FORTNITE」といったオンラインゲームもメタバースの一種と言えますが、今後はVR(仮想現実)やAR(拡張現実)などの技術と組み合わせたサービスが期待されています。没入感を向上させたり、より高精細な映像を提供するためには「大容量」「低遅延」の5G環境は欠かせません。

出典】5G通信 Vol.57  世界的に注目高まる「メタバース」

改善の余地あり!5Gの課題とは?

「高速・大容量」「低遅延」「多接続」を掲げる5Gですが、課題も残ります。現在の5Gに足りないものを見ていきましょう。

電波状況

現在の5Gでは、電波の直進性が強いため届く距離が1キロメートル程と短く、コンクリートの建物が乱立するエリアやトンネル内では電波が届きにくいという課題があります。これを解消するには、基地局の増設は必須です。総務省は2023年度末までに約21万局以上の基地局を整備することを目標としています。

【出典】総務省「ICTインフラ地域展開マスタープラン 2.0」

セキュリティ対策

5Gの普及に伴い、インターネットを活用した便利な生活が期待されています。スマート家電だけでなく、自動運転、遠隔医療、遠隔操作といった産業用途でのIoT普及が見込まれており、より一層の高いセキュリティ対策が急務です。

5Gのネットワークは構造などの点で従来のネットワークとは異なることが想定されており、その点を踏まえたセキュリティ対策の検討が必要と言われています。

【出典】総務省「IoT・5Gセキュリティ総合対策」

5Gの認知度

総務省によると、5Gの特徴について詳細を理解している人は2〜3割程度で、5Gを用いたサービスを有料でも利用したい人は2割にも満たない状態です。5Gの認知度や利用者が増えない理由は、通信料の高さに対する懸念や電波状況の問題から5Gの恩恵が十分に感じられないこと、そもそも対応エリアが限定的なことなどがあげられるでしょう。

【参考】総務省 5Gに対する個人利用者の意識

5Gの次に来る6G!その展望

2020年に5Gが世に出たばかりですが、世界中で6Gへの関心が高まっています。日本での6G実用化はいつごろになるのか、6Gの出現で何ができるようになるのか見ていきましょう。

6Gのお披露目は2030年?

NTTドコモは2020年1月にはすでに、「ドコモ6Gホワイトペーパー」の初版を発行しており、国内の他企業も続々と6Gに関する情報を打ち出しています。今後は2030年頃の実用化に向け、実証実験や国際標準化が進められる予定です。

6Gの要求条件は、5Gより高性能な「高速・大容量」「低遅延」「多接続」に、「超カバレッジ」「超低消費電力・低コスト化」「超高信頼通信」が加わり多岐にわたると見られています。

6Gでできること

6Gでは100Gビット/秒を超える通信速度、および100倍以上の超大容量化の実現を目指しています。この通信速度は人間の脳の情報処理速度に近づくため、視覚や聴覚だけでなく、五感の情報伝達や雰囲気の伝達までもが可能になるレベルと言われています。

新たに加わる特徴の1つである「超カバレッジ」では、今までカバーしきれなかった空や海、宇宙空間で繋がることが目標です。これが実現すると、ドローン宅配や空飛ぶ車、農業・林業・水産業などの第1次産業における無人化や高度化が期待できます。

6Gのセキュリティ

ドローン宅配や空飛ぶ車、医療分野での遠隔操作などが発達するとより高いセキュリティが求められます。どのサービスにおいても大容量のデータをやり取りするため、セキュリティを突破されると一大事です。ここに、量子コンピュータが出現すると現在広く使用されている暗号アルゴリズムを短時間で破られる可能性があります。そのため、量子コンピュータ対策として、安全性・高速性を兼ね備えた暗号技術の開発に期待がかかっています。

6Gの出現で夢に見た未来の世界に手が届く!

5Gの出現により、スマート家電を代表とした身近なところでも技術の進歩を目にするようになりましたが、まだその環境が整っていないのも事実です。今までの通信システムに比べると飛躍的な変化を遂げてきましたが、基地局不足による電波状況の弱さや認知度の低さなどの課題も残ります。

2030年には6Gの実用化が目標とされており、それにより様々な分野で無人化や自動化といった映画のような未来の世界がすぐそこまで来ていると言えるでしょう。AIテクノロジーがふんだんに使われた便利な社会を実現する、6Gの誕生を待つばかりです。

この記事を書いた人

ビジネス・テクノロジスト 貝田龍太