大注目!進化が止まらないXRの世界をご紹介
~第1部 XRとメタバース~

今やコミュニケーションを取る場所は対面やパソコンのチャット機能にとどまりません。メタバースを利用した仮想空間での交流も一般化されつつあり、バーチャルオフィスのようにアバターを置き、まるでオフィスにいるかのような感覚で気軽に社内でコミュニケーションをとることも可能です。しかし、メタバースは未だ発展途上にあり、より便利でリアルな仮想空間の実現に向けた研究が日々進められています。そこで重要となるのがXR技術です。現実世界と仮想世界を融合する技術、「XR」とはどのようなものか、またメタバースの未来について見ていきましょう。

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テクノロジーを新たな次元に導く「XR」とは

XRとは「Cross Reality」の略で現実世界と仮想世界を融合する技術の総称です。XRにはVRやAR、MR、DR、SR技術が含まれます。「Cross」の「C」を未知数の意味を持つ「X」に置き換えた、テクノロジー技術の可能性を表した言葉です。XRは徐々に社会に浸透し、今やエンターテイメントとしての利用だけでなく、あらゆる企業がXR技術を活用し、ビジネスの発展に役立てています。 

VR

VRは(Virtual Reality)の略で「仮想現実」を体験できる技術のことです。専用ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着することで、仮想世界が目の前に広がります。仮想世界は3DCGで作り上げられているため、あらゆる角度を自由自在に見ることができ、本当にその場所にいるかのような感覚を得ることが可能です。またフォトグラメトリーの技術によって、カメラで撮影された現実世界の景色を精緻な3DCGに変換することもできるため、実際にその場にいるかのような体験をすることができます。それらの特徴を活かし、シミュレーションが必要な教育現場や訓練などで多く取り入れられています。さらに、「Virtual City」では仮想空間とVRの仮想現実とを融合させ、アバターが仮想空間内を自由に行き来することが可能です。このように、メタバースとの融合も着々と進んでいます。

AR

ARは(Augmented Reality)の略で「拡張現実」を意味し、現実の空間に仮想世界を重ね合わせることができる技術を指します。スマートフォンなどのGPS機能を利用した道案内やQRコードからサイトへの誘導しプロモーション情報を確認できるのもAR機能です。また「ポケモン GO」などのARアプリを使ったゲームや家具の配置をシミュレーションできる機能など、個人向けの実用化も進んでおり、ARは人々にとって今や身近な存在です。また工場やオフィスではデジタルツインの活用が始まっていますが、デジタルツインを通して管理される設備の情報やシミュレーション結果をARによって従業員へ伝達する仕組みが試みられています。

MR

MR(Mixed Reality)は、現実世界と仮想世界を掛け合わせた「複合現実」を意味します。現実に仮想世界の映像を重ねるという点でMRはARと一見似ています。しかし、MRはCG等のデジタルデータを現実世界にフィットする形で重ね合わせることにより、現実と仮想世界がより親密に融合した新たな世界を作り出します。また、立体で映し出された3D映像に実際に手で触れ動かすことができるなど、現実に存在するもののように仮想の物体を動かすことができるのも大きな特徴です。MRは、自動車の修理や医療行為等の専門知識が必要な作業を遠隔的に支援する技術として活用されており、様々な分野に革新を引き起こす存在となっています。

DR

DRとは(Diminished Reality)の略で日本語では、「減損現実」または「隠消現実」と訳され、現実世界に存在する特定のものをリアルタイムに削除できる技術のことを言います。現実世界に仮想世界を加えるARとは真逆の機能です。部屋の特定の家具を消したり、風景から特定の建物を消したりといった景観シミュレーション分野での利用が期待されています。また視界の中に存在するすべてのディスプレイの映像を消し去る眼鏡型デバイスも開発されています。これは様々な情報が外部から一方的に押し付けられる現代社会において、それらを遮断する手段を提供するというユニークな取り組みです。

【参考】街から広告が消える「画面」を見えなくする眼鏡型デバイス 

SR

SRは(Substitutional Reality)の略で「代替現実」を意味します。これは現実ではないものを現実であるかのように認識させる技術全般のことを指します。現状、VRやAR等と比べると認知度が低く、商用化にも至ってはいませんが、脳科学分野での研究やデジタルアート等での活用が期待されています。例えば、心的外傷ストレスなどを患っている人が眠っている間に代替現実を脳に送り込み、脳が現実かどうか判断できなくなるよう誘導したうえで、過去の記憶などを別のものに置き換えることが今後可能になる見込みです。 

紆余曲折!VRの誕生からXRまでの道のり

XRという言葉が生まれたのはごく最近のことですが、VRやAR等の研究開発は半世紀以上も前から行われていました。そして、現在のように多くの人が利用するようになるまでには様々な困難がありました。VRの前身が登場してから、XRという言葉が生まれるまで、どのような歩みがあったのか見ていきましょう。 

VR黎明期

世界で初めてHMDが開発されたのは、今から約50年以上前の1968年です。アメリカの計算学者アイバン・サザランド氏により、HMDの先駆けとなった装置「ダモクレスの剣」が開発されました。天井から吊り下げて頭に装着するする様子が、剣が刺さっている様相だったことが名前の由来となっています。2つのブラウン管の3D映像が、ハーフミラーを介して現実世界に重なるこの技術こそがVR技術の前身でした。 

第1次VRブーム

1989年にアメリカのベンチャー企業VPLリサーチ社が発表した「The Eyephone」をきっかけに「VR」という言葉が世間に広がりました。その後、多くの企業がVR製品を販売し始め、テーマパークや家庭で使用されるようになったこの時期を第1次VRブームと呼びます。任天堂が発売した「バーチャルボーイ」やアップル社の「QuickTimeVR」などが当時注目を集めましたが、高額で大きな装備が必要だったことなどが原因でこの第1次VRブームは長く続きませんでした。 

第2次VRブーム

続いて再びVRが注目されたのは2012年です。当時20歳だったパルマー・ラッキー氏が「Oculus Rift」を開発したことがきっかけでした。しかし、技術的な欠陥があったため、ユーザーの定着には至りませんでしたが、2014年にオキュラス社がフェイスブック社に吸収されたことで、VRが再び脚光を浴びました。「Oculus Rift」に導入された湾曲系光学システム技術を多くの企業が利用し、商品を開発し始めたこの時期が、第2次VRブームです。特にマイクロソフト社が発売した「Kinect」は家庭への浸透も早く、ゲーム業界に激震が走りました。そして、2016年は「VR元年」と呼ばれるほど、「Oculus Rift」や「HTC Vive」などの家庭用のVRが多く出回り、人々にとって身近なものとなったのです。 

「XR」概念の登場

当初はVRやARなどは、それぞれ別々に開発されたバーチャル技術でしたが、技術の発展により、「VR」か「AR」であるのかなど明確に分けることが難しくなりました。そこで、生まれた言葉が「XR」です。XRはAR、MR、DR、SRそれぞれの技術の境界線を無くすことで、さらなる技術向上へ発展させ、未知なる可能性を広げています。今後も、さらなるXRの躍進が期待されています。 

まだまだ進化するXR

ほんの少し前までXRは「未来の技術」でしたが、今では多くの分野でXRが活用されており、社会に欠かせない存在となっています。働き方や生活スタイルが変化する中、コミュニケーション方法もメタバースを利用したバーチャル世界で行われることが一般化されるなど、活用シーンは徐々に拡大しています。ビジネスシーンにおいては、VRやMRなどの各機能により、製造業での疲労緩和を可能にするなど効果も絶大です。また、個人向けのコンテンツも充実しつつあり、様々な理由により遠隔地への移動が容易に行えない昨今、現在地にいながら好きなお店でのショッピングや旅行ができるXR技術は注目度が高まっています。まだまだ開発段階の技術も多く、課題も山積みですが、XRが持つ大きな可能性と未来に、今後も目が離せません。

この記事を書いた人

ビジネス・テクノロジスト 貝田龍太