次世代のインターネットを担うとされるWeb3.0が急速に注目を集めています。仮想通貨のための技術として登場したブロックチェーンが今、インターネットに大変革を起こそうとしているのです。DeFiやメタバース、NFTなど、すでにブロックチェーンを活用したサービスも続々と誕生しています。こうしたビジネスシーンの盛り上がりもあり、Web3.0への注目度は加速度的に高まっています。このように、一種のバズワードとして目にする機会も多くなったWeb3.0ですが、その実態はわかりにくいと感じている人も多いでしょう。激しく変化する時代の流れに乗り遅れないためにも、Web3.0についての理解を深め、基礎知識を身につけることが大切です。この記事では、いまさら人に聞けないWeb3.0の基礎をわかりやすく解説していきます。
Web3.0とは?Web1.0、2.0との違い
Web3.0という言葉は、従来のWeb1.0やWeb2.0の次に来る存在として提唱されました。ここでは、インターネットの黎明期と呼ばれるWeb1.0や、ソーシャルメディアが発達したWeb2.0と比較しながらWeb3.0について詳しくみていきましょう。
Web1.0:一方向コミュニケーションからの始まり
1989年、ティム・バーナーズ・リー氏によってWWW(World Wide Web)の仕組みが考案されました。1991年には世界最初のホームページが公開され、現在に至るインターネットの歴史が始まりました。
WWWが画期的だったのは「ハイパーテキスト」と呼ばれる仕組みの存在です。これは表示されているテキストをクリックすることで、別のページへ移動することができる仕組みです。このハイパーテキストによって、様々なホームページが互いに関連づけられたことがインターネット普及のきっかけとなりました。リンクを辿ることで、インターネットの利用者は世界中のありとあらゆる情報へとアクセスできるようになったのです。
Web1.0は画期的な技術でしたが、当時は情報発信の敷居がまだまだ高く、多くの人々は一方的に情報を受け取る目的でインターネットを利用していました。また通信速度も限られていたため、音声や動画のないテキストベースのホームページが主流でした。
Web2.0:双方向コミュニケーションへと移行
2005年、ティム・オライリー氏が著書「What is Web 2.0」の中でWeb2.0の概念を提唱しました。Web2.0は、一方的に情報を受け取るだけではなく、自らも情報を発信する双方向のコミュニケーションが特徴です。
背景には、ブロードバンドの整備によってインターネットの通信速度が格段に速くなり、また定額で常時接続できるようになったことがあげられます。大容量のデータの送受信も容易になり、音声や動画を使ったコミュニケーションも行えるようになりました。
Web3.0:ブロックチェーンによる新しいシステムへ
Web2.0において、Facebook、Twitter、Instagram、YouTube などのSNSが誕生し、インターネット上でのコミュニケーションがごく身近な存在になりました。しかし、それに伴い様々なリスクや課題も浮き彫りになっています。
Web3.0はブロックチェーンによる分散型のデータ管理によって、これらの課題を解決することを目指しています。
Web2.0の課題とは?巨大IT企業による支配のリスク
中央集権型サービスの脆弱性やユーザーにとっての危険性が表面化されるようになった昨今、Google、Apple、Facebook、Amazonの米国大手IT企業ビッグテック(GAFA)が個人情報やデータを独占的に管理していることがWeb2.0の大きな問題になっています。ここではWeb2.0の問題点についてみていきましょう。
ビッグテックによって独占されている個人情報
ユーザー間による双方向コミュニケーションが可能になったWeb2.0ですが、情報交換する場、いわゆるプラットフォームが必要になりました。FacebookやInstagramなどのプラットフォームは利便性が高い反面、我々の個人情報を運営企業へ預ける必要があります。こうして渡された個人情報はAIによって分析され、ターゲット広告等に利用されています。しかし、こうした情報独占の問題点が指摘されています。
個人情報流出のリスク、そしてデータが悪用される危険性
2021年、5億人を超えるFacebookユーザーの個人情報流出が世間を騒がせました。名前、電話番号、メールアドレスなどのデータがインターネット上で公開され、ユーザーは、アカウント乗っ取りや不正アクセスなどのサイバー犯罪の危険に晒されることになりました。
また収集された個人情報がAIによって分析され、本人の望まない形で利用されたと思われる事例が度々発生しています。
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情報が操作される?プラットフォームのあるべき姿とは
情報を独占すると、それを検閲したり改ざんしたりすることも原理的に可能です。米前大統領が自らのアカウントを凍結されたことを不服としてGoogle、Facebook、Twitterに対して訴訟を起こしたというニュースは記憶に新しいですが、社会的な合意形成なしに一企業の判断で情報の良し悪しを決めることができるという事実は、プラットフォームのあり方について大きな議論を呼ぶこととなりました。
また独裁的な国家では国外からの情報を遮断したり、国内のIT企業に命令することで不都合な情報を削除したりといったことが行われています。このように、権力者が情報を都合のいいように操作できる状況を危惧する声は少なくありません。
Web3.0を支えるブロックチェーンの役割
Web2.0が抱える課題を改善していくために重要となるのが、「ブロックチェーン」技術による分散型システムです。Web3.0を支えるブロックチェーンについて説明していきます。
ブロックチェーンとは?
ブロックチェーンとは、暗号化技術を利用して取引履歴などのデータを分散して保持させる仕組みです。仮想通貨を管理するための技術として考案され、P2P(ピアツーピア)方式を用いてネットワーク参加者がデータを分散して管理しています。これによって不正や改ざんを防ぎ、透明性の高い安全な取引を行うことが可能です。
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Web3.0とブロックチェーン
ブロックチェーンは中央集権的な管理者が存在しないのが大きな特徴です。ブロックチェーンの技術によって、政府や特定の企業にデータを預けるのではなく、参加者同士が互いにデータを共有し共同で管理するような仕組みが作れます。Web3.0は、このブロックチェーンを基盤とした新しいインターネットの仕組みです。
Web3.0のメリットとは?
Web3.0の意義は、利用者の個人情報やプライバシーを守ることができるという点にとどまりません。ここではWeb3.0によって私達が感じることができるメリットについてみていきましょう。
高いセキュリティ
中央集権型のサーバーと異なり、Web3.0のデータは多数の端末に情報が保持されています。これらの情報を改ざんするためには膨大な計算が必要となるため、事実上改ざんは不可能です。
ユーザー間の直接取引により、手数料が軽減する
Web2.0では取引にプラットフォームや決済会社が介在するため、手数料などを一定の割合で支払う必要があります。しかし、Web3.0では暗号資産の利用により中間業者を介さない取引が可能なため、こうした手数料の支払いが不要です。
著作権が守られ、利益が還元される
ブロックチェーンを基盤とするNFTによって、デジタルデータのオリジナルとコピーを判別することができるようになります。これによって、アートや音楽などのデジタルデータに著作権や所有権といった資産価値を付与することが可能です。クリエイターたちは自身の創作物に対する権利を守ることができ、また正当な報酬を受取ることができるようになるでしょう。
Web3.0の今後に注目
Web3.0は次世代のインターネットとしてさらなる発展が期待されています。中央集権型から分散型に移行することで、より安全にインターネットを利用でき、今まで以上に便利で快適な生活が待っているはずです。ブロックチェーンによって価値を担保されたデータ資産を活用した新しいサービスも、ますます増えていくことでしょう。今後に注目しながら、Web3.0に対する理解を深めていきましょう。