ブロックチェーンを基盤とする次世代の分散型インターネット「Web3.0」が、近年ますます注目を浴びています。これに伴い、ブロックチェーン上でスマートコントラクトを活用した仮想通貨の取引やNFTの売買のような活動も増えてきました。このようなスマートコントラクトを用いたアプリケーションは「DApp(Decentralized Application)」と呼ばれ、その多様な可能性と社会への大きな影響力から注目を集めています。メタバースでの働き方から新たな金融サービスまで、DAppの可能性は広がっています。本記事では、将来性が期待されるDAppについて紹介し、具体的な活用例やそのメリット・デメリットを解説します。
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「DApp」とブロックチェーン
ブロックチェーンのスマートコントラクト機能を活用するDAppの登場で、これまでの企業や社会の在り方を変容させる可能性が高まりました。ここでは、ブロックチェーンの概要とDAppを実現するスマートコントラクトについて紹介します。
ブロックチェーンとは
ブロックチェーンは取引情報などを記録する分散型データベースの一種です。データはブロック単位にまとめられ、それらのブロックは一本の鎖のように連結され、分散ネットワーク内の各ノードで管理されます。全てのブロックが分散ネットワーク全体で同期されるため、悪意を持ったデータの書き換えは非常に困難です。以上の特性から、ブロックチェーンは「分散型台帳」とも呼ばれています。
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スマートコントラクトとは
ブロックチェーン上で動くスマートコントラクトは「あらかじめ設定された条件が満たされた場合に自動的に取引が実行される」プログラムです。自動販売機を例にあげると「購入者が欲しい商品を選択して代金を投入する」という設定された条件が満たされると、自動販売機が自動でその商品を払い出します。これをデジタルにプログラミングされたものがスマートコントラクトです。
スマートコントラクトは、プログラムされた条件に基づいて自動的に実行されるため、人間の操作ミスや不正な介入のリスクが軽減されます。これらの契約はブロックチェーン上に記録され、一度デプロイされると改ざんが非常に困難となります。さらに、スマートコントラクトのロジックは公開されており、それにより利用者は契約がどのように動作するかを事前に確認することができます。これらの特性により、スマートコントラクトはブロックチェーンの活用において非常に重要な機能となっています。
DAppとスマートコントラクト
DApp(Decentralized Application)は、ブロックチェーン上のスマートコントラクトとフロントエンドの組み合わせにより構築されるアプリケーションです。DAppは中央管理者が存在せず、複数のノードが分散的に管理します。また、基盤となる暗号資産を所有していれば、原則として誰でも利用することができます。ブロックチェーンの性質上、取引データの改ざんは非常に困難であり、ネットワーク参加者全員の合意を必要とします。スマートコントラクトを活用したDAppは、特定のルールのもとでゲームを開発するだけでなく、決済、貸出などの金融サービスにも広く利用されています。
活用が広がるDAppの事例
ブロックチェーンは「インターネット以来の発明」と言われるほど革命的な技術です。その中でもDAppは次世代のアプリケーションとして大きな役割を果たすとされています。
データ資産の価値を高める「NFTマーケットプレイス」
「トークン(暗号資産)」の中でも、ブロックチェーン上に作られ、それぞれのトークンが交換不可能な固有の特性を持つものを「NFT(Non-Fungible Token)」と呼びます。通常の仮想通貨とは異なり、これらはデジタルアート、音楽、映像などのデジタルコンテンツに独自の価値を与え、その所有権を証明することが可能です。デジタルアセットを売買できるオンラインプラットフォーム「NFTマーケットプレイス」を通じて、これらのNFTは急速に多様化し、広く取引されています。
分散型金融「DeFi」
DeFiとは「Decentralized Finance(分散型金融)」の略語で、中央集権的な管理者が不要な金融サービスです。 DeFiのサービス事例としてDEX(分散型取引所)やイールドファーミングがあります。DEXは一般的な取引所とは異なり、利用者の間で直接的に取引が行われます。第三者の仲介を必要としないため、取引手数料が大幅に削減されるのが特徴です。イールドファーミングは、ユーザーが自身の仮想通貨を特定のプロトコルに預けることで利息(リターン)を得るという投資手法です。これにより、仮想通貨をただ保有するだけではなく、積極的に運用して利益を出すことが可能になります。インターネットさえあれば誰でも金融サービスが利用できるようになるため、DeFiは金融の未来を大きく塗り替える可能性を秘めています。
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遊んで稼ぐ「GameFi」
「GameFi」はゲーム(Game)と金融(Finance)を組み合わせた新たな概念で、まだ明確な定義は存在しないものの、一般的にはブロックチェーン技術を用いたゲームと分散型金融(DeFi)の要素が融合したものを指すとされています。このようなGameFiの中では、プレイヤーがゲームを楽しむことで実際の価値を持つ仮想通貨やNFTを獲得し、それらを現実世界のお金に換えることが可能です。この新たなビジネスモデルの潜在性は大きく、その市場は今後も成長を続けると予想されています。
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分散型アプリ「DApp」のメリット
DAppはブロックチェーンをバックエンドとしているため、ブロックチェーンの強みはそのままDAppの強みとなります。ここではDAppの具体的なメリットを解説します。
システムダウンに強い
DAppはブロックチェーンを基盤としているため、一箇所のノードが停止したとしてもシステム全体が停止することはありません。これは、全てのノードが同じ情報を保持し分散管理されているからです。仮に一部のノードが故障したとしても、他のノードは引き続き正常に機能し、取引の実行を続けることができます。同様に、一部のネットワークに障害が発生した場合も、健全なノードが存在する限りはシステムは正常に動作します。
高セキュリティ、プライバシーが保護される
DAppを通じて行われる取引は、スマートコントラクトにより自動化されており、人の手が直接介在しないため、高度な透明性が保証されます。これにより、不正な処理を行う余地はほとんどありません。また、取引の履歴はブロックチェーンに記録され、その情報は全ての参加者に公開されています。これにより、取引データの改竄や捏造を行うことは極めて困難になっています。
また、DAppはブロックチェーンの性質上、通常はユーザーの本人確認資料を提示することなく本人証明が可能です。運営者がユーザーの個人情報を保持する必要がないため、ユーザーのプライバシー保護に寄与します。ただし、法規制等により一部のDAppでは本人確認が求められる場合もあります。
サービス終了に伴うデータ消失の恐れが無い
特定の管理者サーバーに依存したアプリケーションは、その管理者がサービスを終了もしくは管理を放棄した場合、利用者のデータも失われる可能性があります。これに対し、ブロックチェーン上に分散してデータを管理しているDAppなら、特定の管理者がサービスから離れても、他のネットワークノードが活動を続ける限り、サービスは持続し、データも保持され続けます。
分散型アプリ「DApp」の課題
DAppの利用には仮想通貨が必要とされるため、まだ一般には十分に浸透していません。さらに、ブロックチェーンの技術的な理解を要する点や、セキュリティに関する自己責任が求められることなどが、普及の足かせになっています。
処理速度の遅延
DAppの基盤であるブロックチェーンでは、ネットワークに参加する各ノードの処理能力が全体のパフォーマンスに影響します。特にブロックチェーンネットワークの処理能力は、その中で最も低スペックなノードに引きずられる傾向があります。そのため、取引量が増大すると低スペックなノードが原因で処理速度が低下する場合があります。
修正が困難
ブロックチェーンの性質上、DAppにバグが発生した場合、その修正は簡単ではありません。特に、一度デプロイされたスマートコントラクトの修正やアップデートは、ネットワークの参加者全体の合意が必要であるため、非常に困難です。したがって、リリース前のテストフェーズでは通常のアプリケーションよりも慎重に行う必要があり、この点がDApp開発における大きな負担となっています。
トラブル発生時の保護や補償が不十分
DAppでは管理者の判断によるデータの巻き戻しが困難です。したがって、予期せぬ問題によってユーザーに損失が発生した場合、迅速な修正や補償が難しくなる可能性があります。これらのリスクを十分に理解し、それを受け入れた上でDAppを利用することが求められます。
DAppの今後
現在のところ、DAppの利用は主にNFTアートやゲームなどが主流となっています。その利用者も多くは投資目的の事業家やブロックチェーンエンスージアスト(愛好家)で、まだ一般の消費者には十分に浸透していません。しかし、DAppはユーザーが求める取引の透明性や個人情報のプライバシーを保護する能力を有しているため、将来的には市場の拡大が見込まれます。研究と技術開発が進行し、さまざまな機能やサービスが開発され、より開発しやすい環境が整うと、DAppの存在感はさらに増していくでしょう。これからどのような新しいアプリケーションが出現するかに注目です。