AI人材の育成は急務!
必要なスキルと教育プログラムについて解説

AIが進化するにつれて非常に重要な課題となってくるのが、AI人材の確保です。AIエンジニアを採用して人材を確保しようとしても、なかなか難しいのが現実で、多くの企業は社内でAI人材を育成することになります。その際に、企業はどのような教育を行う必要があるのでしょうか。AI人材に必要なスキルや育成のためのカリキュラム、企業におけるAI人材の重要性について解説します。

現代のAIシステム開発のトレンド

 現在AIシステム開発のトレンドとなっているのは、「画像認識」や「音声認識」「音声合成」「自然言語処理」といった技術です。それ以外にもデータの分析・予測や自然翻訳など、AIシステム開発に関わるさまざまな技術があります。企業のAI開発者は、これらの技術を駆使しながら、より効果的なPRや効率的な業務システムを考える必要があります。

【関連記事】
AI時代に求められるデジタル人材とは? プロンプトエンジニアリングの重要性と学習法、そしてこれからの活躍の場

画像認識

画像に映っている人やモノを認識する技術を「画像認識」といいますが、AIによる画像認識の活用は、いまさまざまな分野で進んでいます。たとえばよく知られているところでは、「顔認証システム」があります。施設の入退出時などに、カメラに映った顔と登録された顔が一致するかどうかをAIが判断し、ドアのロックを解除します。
工場の検品などにも、画像認識技術が使われています。これまで目視で行ってきた外観検査を、画像認識技術を使った画像処理システムを利用することによって、より確実にスピーディに異常を検知することができます。

音声認識

音声データを解析してテキストデータに変換する技術が、「音声認識」です。AI技術を活用した音声認識システムによって、マイクやスマートフォンなどから入力した音声を、自動的にテキストに変換することができます。
AIによる音声認識の代表的な事例としては、Googleアシスタントのようなスマートスピーカーがあります。「OK Google」と話しかけるだけで、スケジュール管理から動画再生、調べ物までさまざまな要望に対応してくれます。
 また、コールセンターの自動応答にも、音声認識技術が使われています。顧客の音声をリアルタイムで認識し、AIが問い合わせの内容を解析して、適切な対応を行います。人間が対応するよりも多くの問い合わせに対応でき、待ち時間を短縮するとともにコスト削減にもつながります。

音声合成

人間の声を組み合わせたり、人間の声のような人工的な音を作り上げてテキストの文字を読み上げる「音声合成」の技術は、最近は官庁や地方自治体のホームページなどでも活用されています。新聞読み上げアプリや、災害時のアナウンスにも、音声合成ソフトが使われています。

自然言語処理

人が書いたり話したりするときのように、自然な文章を解析する技術を「自然言語処理」と呼びます。たとえばカスタマーサポートに使われる「チャットボット」は、AI技術の進歩によって、人間同士の会話に近い自然なやり取りができるようになりました。

開発者に必要なスキルセットと知識

企業のAI開発者には、さまざまなスキルが求められます。機械学習やディープラーニングを活用して、数学・統計学の知識をもとにデータの学習や分析を行い、企業にとって最適なAIを構築していきます。プログラミング技術や、AIの専門知識も必要です。

機械学習やディープラーニングの専門的な知識

AIシステム開発者として仕事をするために、まず機械学習やディープラーニングの知識は必須といえます。膨大なデータの中から正解と一致するものを探したり、数値をもとに答えを導き出す方法などは、機械学習の基本です。ディープラーニングについても、画像認識や音声認識、自然言語処理などの分野に必要な知識として欠かせません。こうした機械学習やディープラーニングの知識は、社会人向けのAI教育講座「AIジョブキャンプ」などで学ぶことができます。

プログラミング技術

開発者として、プログラミングの技術も必要です。AIの開発によく用いられるプログラミング言語は「Python(パイソン)」です。Python にはAIの機械学習に使うライブラリが豊富に用意されており、データ解析などにも使うので、最低限学んでおく必要のあるスキルです。

数学・統計学の知識

AI開発者としてやっていく上で、数学や統計学の知識はマストといえます。AIのプログラムは数学の理論がベースとなっており、確率論や微分積分といった分野が必要になることもあります。
また、データサイエンティストや機械学習エンジニアなどの職種は、統計学を用いてデータを解析するため、統計に関する知識が必須となります。

データベースのスキル

機械学習を行う際に、ビッグデータをより効率的に活用するためには、データベースを設計・構築・運用できるスキルが求められます。データベース言語として代表的なものが「SQL」です。SQLなどの言語を活用できるスキルや、データベース管理システムに関する知見も必要です。

ライブラリやフレームワークの知識

AIの開発には、ライブラリやフレームワークの知識が必須です。ライブラリやフレームワークとは、AI開発に必要な基本機能をまとめたアプリケーションのことです。これらのアプリケーションを使えば、本格的なプログラミング言語を使わなくても、スムーズにシステム構築ができます。

AI人材育成のカリキュラム

AI人材を育成するためにはさまざまな方法がありますが、AI人材育成に必要なカリキュラムを提供するサービスを利用するのも、ひとつの選択肢です。短期間の基礎的な講座から、実践的なスキルを身につける研修までいろいろあるので、企業が求めるスキルに応じて選択するとよいでしょう。

AIエンジニア育成講座
3日間でAIに関することをトータルで学べる講座です。対面で学ぶ会場受講の他に、ライブウェビナー、eラーニングの3パターンから選べるので、場所を選ばずに自分のペースで学習することができます。

NECアカデミー for AI(オープンコース)
AIの基礎的な講座からシステム導入ができる実践的なものまで、幅広い選択肢から選べる講座です。1年間の「入学コース」と、1日から学べる「オープンコース」があり、入学コースを選ぶとAI人材として独り立ちできるレベルを目指すことができます。

AI人材育成パック
ビジネスで活用するための体系的なAI知識・実践的スキルを、オンラインで身につけられるAI研修サービスです。はじめての人からAI実務者まで、46コースがオンラインで学び放題です。

企業におけるAI人材育成の重要性

AI人材の育成には3年程度の時間がかかる

社内でAI人材を育成していくなら、できれば社員を3年ほど時間をかけて、社内研修をしながらじっくりと育てていくのが理想的です。即効性はありませんが、そうして丁寧に人材を育てていくことで着実にAI人材を定着させ、組織の競争力を高めることができます。

産学連携でAI人材を育成

教育機関と企業が、産学連携でAI人材の育成に取り組んでいるケースもあります。たとえば東京医科歯科大学は、2017年度に文部科学省の「データ関連人材育成プログラム(D-DRIVE)」に、代表機関として採択されました。
これを基盤として、「医療・創薬データサイエンスコンソーシアム」を組織し、「データサイエンス人材育成プログラム」を開講。大学院生や若手研究者、企業・医療機関等の人材育成に取り組んでいます。
【参考】産学連携によるリスキリング教育、医療・創薬分野におけるAI人材育成

社会全体でAIリテラシーの向上を

AI人材を育成するためには、社会全体がデジタルリテラシーを向上させることが大切です。まずは「AIとは何か」「ディープラーニングによって何ができるか」といったことについて、一人でも多くの人が理解する必要があるでしょう。

 そうすることによって、AIの技術を企業に導入することの大切さも認知され、企業のDX化が推進されるきっかけとなります。また、企業や教育機関だけでなく、個人がAI時代に生きていることの自覚を持ち、一人ひとりが意識的に自己啓発を行うことも大切です。

この記事を書いた人

ビジネス・テクノロジスト 貝田龍太