どんなアウトバウンド業務にも必ず新規獲得件数や売上などの目標があり、これらの目標を達成するためにはKPIの設定が必要です。既存の業務を参考にするなどして「何となく」KPIを策定するのではなく、業務の目的や求められるゴールによって、適切なKPIを設定する必要があります。
本記事では、コールセンターのアウトバウンド業務における主要なKPIをご紹介するとともに、KPIから見える課題について詳しく解説します。
そもそもKPIを設定する意味とは?
KPI設定のメリット
KPI(Key Performance Indicator)は日本語では「重要業績評価指数」といいます。これに対し、企業や組織の年間売上目標などの最終ゴールをKGI(Key Goal Indicator)といい、こちらは日本語では「重要目標達成指標」と訳されています。
KPIは企業や組織がゴールとして設定する「最終目標」のKGIを達成するためのパラメーターとしての指標です。簡単にいうと、KGIは「ゴール」、KPIはKGIというゴール達成までの「過程」なのです。
見失いがちになるKGIという大きな目標に向かう道筋を見失わず、その達成度合いを定量的に評価できることがKPI設定の大きなメリットです。
KPIはオペレーターの生産性や品質の評価にも活用することができます。問い合わせなどを受け付けるインバウンド業務と比較して、個人のパフォーマンスが「売上金額」など明確な数字として表れてきます。これが時給に反映されることもあり、オペレーター個人のモチベーションに大きな影響を与える要素になるのです。
そしてもうひとつの重要なKPI設定のメリットは、業務の改善サイクルを回すことが可能になるという点です。月次や日時、時間帯での目標を達成できていない時、どこに課題があるのかを発見するためにも、KPIの設定は必須なのです。
アウトバウンドのKPI
アウトバウンド業務の主要なKPI
ここではアウトバウンド特有ともいえる主要なKPI指標のみに絞って5つご紹介します。実際のアウトバウンド業務の現場では、さらに多くのKPIを用いて管理をしています。
- コール数:発信した件数
- コンタクト率(接続率):留守電や不在ではなく、電話が対人でつながった割合
- SPC(Sales Per Contact):コンタクト数のうちで成約した割合
- SPL(Sales Per List):リストあたりの成約率
- CPC(Cost Per Call):1通話あたりのコスト
KPIからわかる「課題のありか」と活用のための視点
1、コール数
オペレーターが発信した件数を表すコール数は、1時間あたりの発信数をはかるDPH(Dial Per Hour)や、1日の総発信数で管理の大きく2種類があります。
オペレーター個人の生産性をはかるだけでなく、スクリプトやトークフローの問題や、マニュアルの使い勝手など、業務プロセスの課題が明らかになることもあります。多角的な視点で分析する必要があります。
2、コンタクト率(接続率)
発信した電話がすべてつながるということはありません。電話がつながって人が電話口に出てくれただけではなく、通話相手がいわゆる「ご本人様」や「決定権をもつ人」などのキーマンと話せた割合がコンタクト率です。したがって成約率を上げる前提となるコンタクト率を上げる管理が重要になってきます。
発信する曜日や時間帯によっても、コンタクト率は変わりますし、地域性なども影響を与える場合も考えられます。1時間当たりのコンタクト数をはかるCPH(Contact Per Hour)を併せて分析しましょう。
戦略なくやみくもにリストを消化してしまわないためにも、まずは無作為に抽出したリストから、曜日や時間帯を変えて発信してみるなどのテストをやってみることも有効な場合があります。
3、SPC(Sales Per Contact)
コンタクトしたお客様の中でどれだけ成約や承諾を獲得できたかを表すこの指標は、アウトバウンド業務の代表的な指標といえるでしょう。1時間あたりの成約数をはかるSPH(Sales Per Hour)という指標もあります。
オペレーターのトークスキルに依存する要素は少なくありませんが、トークスクリプトやトークフローに課題があることも考えられます。どのような理由で断られているか、断られるタイミングはどこかなどのチェックが必要かもしれません。
また、成約率が高くても販売単価が低いオペレーターより、成約率は低くても販売単価が高いオペレーターのほうがアウトバウンド業務としては高い成果といえる場合もあります。ほかの指標と併せて分析する必要があります。
4、SPL(Sales Per List)
使用しているリストの中で、成約がとれた割合をはかる指標です。成約率が高いリストはいわゆる「よいリスト」であり、成約率が低いリストはいわゆる「悪いリスト」という判断となります。
アウトバウンドで重要なのはリストの「鮮度」です。更新されていない古い情報が混在していると、電話番号がすでに変わっていたりすることもあり、リストの質を判断する材料にもなるでしょう。定期的なリストのクリーニングは重要です。
同じリストでも、オペレーターによって成約率は変わってきますが、前述したSPCの高いオペレーターに成約率が高いリストを発信してもらえばさらに成約率が高くなります。
新人オペレーターを成約率が低いリストで発信してもらい、業務になれていただくという教育的な視点での活用方法もありますね。
5、CPC(Cost Per Call)
平均架電単価であるCPCは、1通話当たりのコストをはかる指標です。コストにはオペレーターやSVの人件費やPCなどの設備管理費、消耗品費などを含みます。
地代家賃をCPCに含めるかなど、コストに含めるものは組織により異なるため一概に比較ができない指標ではありますが、
CPCが低いほど収益性が高いと判断ができます。
しかし、コストばかりを下げすぎるとオペレーターを含めた現場負担が増大し、通話品質が下がったり、離職が増えたりするなども考えられ、逆効果になることもあり得ます。
ゴールによってKPIは変わる
KPI策定のポイント
新商品のアウトバウンド営業であれば、まずは新規顧客の獲得数をいかに上げていくかに着目したKPIの策定が必要です。既に安定した顧客数を獲得しているけれども、販売単価を上げたい局面であれば、「アップセル率」「クロスセル率」などの指標を取り入れることが必要となります。
企業や組織のKGIにつながる指標の策定が最大のポイントです。しかし、企業視点だけでなく、顧客視点、従業員視点での指標管理がアウトバウンド業務管理の重要なポイントなのです。
電話を発信するオペレーター個人のスキルに依存するのではなく、業務全体のしくみの改善活動にKPIは必要なものです。健全な業務運営が可能となるよう、業務内容や特性にフィットするKPI策定が重要です。
改善活動にはオペレーターの意見を取り入れましょう
指標や数字にとらわれすぎない
業務の効率化を妨げている要素などを一番知っているのは、顧客対応の最前線であるオペレーターに他なりません。KPIの数値だけにとらわれることなく、業務の改善活動には積極的にオペレーターの意見を取り入れることが効果的です。
また、自分たちの意見が取り入れられることはモチベーションの向上にも直結する要素です。なかなか成果につながらないことも多いアウトバウンド業務だからこそ、気持ちよく働ける職場づくりが大切な要素であることを忘れないようにしたいものです。
まとめ
いかがでしたか。アウトバウンド業務の主要なKPIと、KPIを使用した業務の改善に必要な視点について解説しました。あらゆる活動が数値化されるコールセンターでは、データの分析がしやすい環境です。
しかし机上のデータばかりにとらわれていると、現場で起こっている変化を見逃し、手遅れになることが少なくありません。
アウトバウンド業務では、特に職場としての「やりがい」が成果に影響を与えます。働く人にしっかりと目と心を配りたいものですね。次回は、アウトバウンド業務で活躍する人材像についてご紹介いたします。
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