近年NFTが仮想通貨業界でブームになり、ブロックチェーン技術とNFTを活用したメタバースが注目されています。メタバース内ではインフラや経済基盤としてNFTの力が強くなり、NFTを利用してアバターやゲームのアイテム、バーチャル不動産などの土地売買も行われており、今後の発展に期待できるでしょう。しかしながら、急速に発展したメタバースに関する法整備が現状追いついておらず、今後の課題があることが懸念されています。
今回は新しいビジネス市場のメタバースでどのような経済活動が行われているかを見ていくとともに、今後の課題についても考えていきましょう。
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NFTを活用した経済活動
NFTは非代替性トークンのことで、アイテムや作品の所有権をデジタルデータ化し、所有権を証明する手段として用いられます。ブロックチェーン技術で識別情報を持たせているため、現実世界で実在しているものと同じように希少性を持たせることも可能です。
現在では様々なNFTが登場し、ゲームのアイテムのみならずバーチャル不動産なども生まれ、仮想空間で土地売買も行われています。そして、誰でもメタバース内の売買を行うことができるため、ゲーム業界だけでなく、いろいろな分野で活用され経済発展の大きな役割を果たしています。
それではNFTがどのような業界に活用されているのか、具体的に見ていきましょう。
ゲーム業界
メタバースのゲーム内では、入手したアイテムやアバターのファッションなどを所有することができ、そのまま売買取引や経済活動に利用することが可能です。また不動産を購入できるゲームプラットフォームもあり、譲渡証書代わりにNFTを使って仮想空間で土地を所有し、土地売買を行うことができます。ユーザーはゲーム内のアイテムなどを運営会社に手数料を支払うことなく売買することが可能です。また、企業にとっては獲得したユーザーを別のゲームに促すことができるため、自社の顧客生涯価値を高められると期待されています。
スポーツ業界
2021年8月にパリ・サンジェルマンとメッシ選手が契約した際、契約金の一部として相当額の「ファントークン」が支払われています。ファントークンはNFTの一種で、取引が可能な暗号資産です。チームの成績が良ければ価値が上がることが期待できるだけでなく、保有者にはクラブに関する決定事項の投票権が特典としてついています。
サッカーに限らず、メジャーリーグでもFTXと複数年にわたる公式スポンサー契約の締結を行っており、様々なスポーツでファントークンの発行やスポンサー契約締結を行う企業がさらに増えていくことでしょう。
クリエイティブ業界
コンテンツやIPを活用する分野でも、クリエイターを中心に経済が生まれています。
メタバースは音楽業界におけるCDや出版物を実際に作成する必要がないことから、生産コストをかけないで商品販売型のビジネスを実現することが可能です。また、仮想空間でコレクターズアイテムを作ることによって付加価値を上げるなどグローバルに展開していくことができるでしょう。
得意分野を活かした職業に就こう
いろいろな業界でメタバースの経済活動が活発になっています。経済が活発になれば実社会と同様にメタバース内でも様々な職業が生まれ、自分の得意分野を活かした職業に就くことも可能です。
実際にメタバースでどのような職業があるのか、具体的に確認していきましょう。
メタバースを充実させる職業
メタバースで経済が発展すると、実社会と同じように様々な職業も誕生しました。メタバースではアバターを利用する人が多いことから、アバターのキャラクターを作成するクリエイターやアバターのためのファッションデザイナーが活躍しています。また、メタバース内では2D・3D問わず建築を楽しむことができるので、ハイクオリティな建築物を制作する専門家も現れました。メタバース内で得意な分野を活かして成功すれば、利益が得られる可能性もあり、メタバースの経済はますます発展していくことでしょう。
実際にアバターで働くことができる職業
様々な職業が生まれるだけでなく、実際にメタバースでアバターになって働くことができる職業も増えています。
例えば、実在するホテルやお店などで接客するアバター店員やアバタータレントであるVTuber、メタバースに入ってきた人を案内するアバタースタッフなど、実際に働くことが可能です。特にコロナ禍で非接触が求められる世界で、注目されているビジネスと言えるでしょう。
メタバースの今後の課題
メタバースの関連市場や関連ビジネスはますます拡大し、2025年には国内市場が1兆円強に膨らむとも言われています。しかしながら、実際の法整備が追いついておらず、メタバースで発生した権利や税金についても国税庁から発表がありません。
そこで、メタバースの権利についての実情と、これから起こり得る税金制度について考えていきましょう。
メタバースでの権利
メタバースで考えられる権利は、著作権などや知的財産権、利用権などが考えられます。しかしながら、現在の民法では原則的に物理的なもの、つまりは現実世界に存在しているものに対してのみ所有権が認められています。
例えば、メタバースでアカウント停止などによって所有していたアイテムがなくなっても、運営者に返還を求めるのが難しいのが現状です。文化庁では著作権処理の議論が進められ、2022年2月に新しい権利処理を盛り込んだ検討案がまとまったところで、法制度の整備まではまだ時間を要することが見込まれるでしょう。
運営会社によって、ルールを規約や規程で定めているケースがあります。また、2021年11月に、KDDI株式会社や東急株式会社などが発足した「バーチャルシティコンソーシアム」は、まだ法整備がされていない都市連動型のメタバースを誰もが安心して利用できるように、メタバース運営に関するガイドラインを策定しています。ガイドラインの策定だけでなく、調査や研究、情報発信も行っているので参考にしてみるといいでしょう。
メタバースで得た収益の税金制度
メタバース内で契約や売買を行った投資収益に対しては、法律の整備が追いついていないのが現状です。暗号資産(仮想通貨)の取引が活発になった後に国税庁から税金の考え方が発表されたため、メタバースで得た収益についても同様に後から発表される可能性があり注意が必要になります。
メタバースの取引は暗号資産と同じ仮想空間に関するものですが、暗号資産と違って代替性や性質、特徴などが異なることから税金の取り扱いが同じになるとは限りません。売買時には事業所得や雑所得、譲渡所得に該当すると考えられ、ケースによってどこに該当するか変わってくる可能性があります。法整備がないからと知識不足のまま取引を行うのではなく、今後の税金制度の対象になるであろうという意識をもって取引を行うことが得策です。それとともに、暗号資産取引の税金について知っておくと良いでしょう。
メタバース内のNFTを活用しよう
メタバースの仮想空間は多くの業界から注目され、様々なビジネス目的で企業の参入が増加しています。ブロックチェーンを基盤にしたメタバースは次々と開発され、今後さらに発展が期待できる分野です。
それとともにゲーム内のアバターやアイテム、バーチャル不動産などいろいろなNFTも登場し、取引や土地売買もできることから投資するユーザも増えることでしょう。そして、経済が活発になればメタバース内での雇用も増加します。
これから整備される税金制度や法律に注意をしながら、新しいビジネス市場に参入してみてはいかがでしょうか。