キャッシュレス決済や仮想通貨が主流となり始めている昨今、企業だけではなく個人にとってもFinTechが重要な社会へと変化してきました。それでもFinTechについてまだ理解できていない人も多いのではないでしょうか。今後活用が広がるFinTechの進歩についていくため、FinTechのサービス内容や導入することで得られるメリットへの理解が必要です。この記事ではFinTechの基礎知識と導入事例、そしてAIテクノロジーやブロックチェーンによって進化するFinTechの未来について紹介していきます。
FinTechとは
キャッシュレス決済を多くの人が利用している昨今では、これまで以上にFinTechという言葉を耳にするようになりました。これからの時代に必要不可欠なFinTechの基礎知識をみていきましょう。
FinTechとは
FinTechとはFinace(金融)とTechnology(技術)を合わせて作られた言葉です。ITテクノロジーを活用して進化した金融サービスのことを指します。いわゆるITバブルを経た2000年頃に使われるようになりましたが、リーマンショック後に一般にも知られるようになりました。近年では、AIテクノロジーやブロックチェーンを活用したFinTechが注目されています。
FinTechのサービス
FinTechにはスマートペイメントのような送金サービスをはじめ、会計処理などの金銭管理、資金調達や資産運用といった金融に関するサービスがあります。また、金融システムへの不正アクセスや不正ログインを防ぐためのセキュリティサービスもFinTechの分野です。
【参考】第3-1-9図 FinTechサービスの概要と利用動向
FinTechの事例
私たちの暮らしの中でも様々な場面でFinTechの活用が進んでいます。どのような場面で使用されているのか具体的な事例をみていきましょう。
ネット銀行
ネット銀行は実店舗を持たず、インターネットのみで取引を行っている銀行です。店舗がないため、その分安い手数料で利用できるうえに預金金利も高く、従来の銀行からネット銀行へ乗り換える人も増えています。インターネットがあれば利用できるので24時間365日アクセス可能です。ネット銀行なら窓口対応の待ち時間の長さにうんざりすることもありません。
Web家計簿
Web家計簿は銀行口座やクレジットカード情報と連携させることで、お金の動きを把握することができるアプリです。自動でアプリ内に支出や収入を読み込むだけではなく、スマートフォンのカメラから読み取ったレシートで、品目まで仕分けることができます。
投資・資産運用アドバイザー
AIテクノロジーを駆使したロボアドバイザーによる投資や資産運用のサービスで、アルゴリズムが自動的にポートフォリオを作成してくれます。リスクを分析した上で最適な投資プランが提示されるため、初心者でも気軽に投資や資産運用を始めることが可能です。
モバイルPOS
スマートフォンやタブレット端末をPOSレジとして利用できるサービスがモバイルPOSです。モバイルPOSはクレジット決済機能がついている小型の端末と専用アプリがあれば決済サービスを利用できます。そのため、従来のレジのように専用のクレジットカードリーダーが不要なため、比較的手軽にカード決済を導入することが可能です。
スマートペイメント
現金や銀行での手続きを不要とした電子決済のことをスマートペイメントと呼びます。スマートペイメントは国内のFinTechでは主流と言える分野で、日常的に様々な場面で利用されているのを目にするようになりました。現金を管理する必要がなくなるためコストの削減に繋がり、また決済手数料が比較的低い点も魅力です。
セキュリティ
仮想通貨やキャッシュレス決済が主流になると心配になるのが安全面ではないでしょうか。FinTechは個人情報や資産そのものを守るセキュリティサービスも提供しています。生体認証技術を用いて不正ログイン防止やサイバー攻撃対策を行っています。
FinTechによるメリット
ここまで、FinTechが金融業界だけでなく社会全体にとって欠かせない存在になっていることを説明しました。では、FinTechによってどのようなメリットがもたらされるのか詳しくみていきましょう。
決済方法の選択肢が増える
FinTechのサービス拡大によって、私たちは電子マネーやスマートペイメントといった様々な決済方法が利用できるようになりました。FinTech事業に参入している企業は公共交通機関や通信事業者、小売業者など多岐にわたりますが、多くは利用額に応じて独自のポイントが付与されます。支払いに使った分だけ優待が受けられるため、利用者にとっては現金で決済するよりもお得です。
コストを抑えられる・処理の高速化
従来の金融サービスは人の手を介する必要がありましたが、そういった手続きの多くはFinTechによって自動化することができます。そのため、手数料や処理時間を大幅に削減することができます。
また、現在開発が進められている量子コンピュータは金融分野での活用も期待されています。量子コンピュータが実用化されれば、FinTech分野におけるAIも飛躍的に進化するでしょう。
【関連記事】実用化は2030年?量子コンピュータの可能性と今後の見通しを紹介~第2回 量子コンピュータの可能性~
資金調達の選択肢が増える
FinTechのサービスを利用することで資金調達の選択肢が増えました。オンライン上で多数のユーザーに出資を募ることができるクラウドファンディングや、融資したい人とされたい人をマッチングするソーシャルレンディングなどが挙げられます。これらの銀行融資や株式発行によらない資金調達方法から、様々な新規事業やプロジェクトが生まれています。
ブロックチェーンで進化する?FinTechの未来
FinTechが社会に浸透しつつある一方で、Web3時代の新たな金融システムとして仮想通貨・ブロックチェーンが注目されています。FinTechはブロックチェーンによってさらに進化を遂げるでしょう。今後のFinTechの進化に欠かせないブロックチェーン技術について紹介します。
【関連記事】仮想通貨に用いられるブロックチェーンとは?基礎知識と可能性を解説
スマートコントラクト
スマートコントラクトはブロックチェーン上のプログラムで、あらかじめ設定された条件がクリアした場合に自動的に実行される契約です。仮想通貨同士の交換やNFTの発行など、暗号資産を利用した様々なサービスに利用されています。スマートコントラクトは信頼性が高く、仮想通貨を安全に取引するためには欠かせない存在です。仮想通貨を利用したFinTechにおいて、スマートコントラクトは重要な役割を担うことになるでしょう。
ICO
ICOとはInitial Coin Offeringの略で仮想通貨を新規発行する資金調達方法です。これは株式を発行して資金を集めるIPO(新規株式公開)と似ています。株式の場合は発行の際に厳正な審査がありますが、ICOは審査機関がないためハードルが低く、また証券会社などの金融機関が間に入らないためコストを抑えることができます。仮想通貨への世界的な注目度が高まったこともあり、多くのプロジェクトがICOによって多額の資金を集めることに成功しました。一方、誰でも資金調達が行えるためにトラブルも多く、投資家から集めた資金を持ち逃げする悪質な詐欺も横行し問題となりました。
IEO
IEOはInitial Exchange Offeringの略で、仮想通貨取引所を介して行う資金調達のことです。仮想通貨を発行するにあたり取引所の審査があるため信頼度が高く、必ず仮想通貨取引所で上場されます。そのため、ICOとは違い安心して仮想通貨の取引ができることが特徴です。IEOは上場前の先行販売なので、抽選に当たれば通常価格より割安で購入することができますが、その分倍率も高く、ICOに比べると入手は難しくなります。またIEOはICOと比べて信頼性が高い点が魅力ですが、それでも事業が失敗するリスクを踏まえて投資判断をする必要がある点は変わりません。
今後も進化を遂げるFinTechに注目!
金融とテクノロジーを組み合わせたFinTechは、決済のスマート化や資産管理・資産運用、そして事業立ち上げのためのクラウドファンディング等、様々な形で活用されています。AIテクノロジーやスマートフォンの普及によって、私たちの暮らしの中でもFinTechを利用する場面は増加中です。これからのWeb3時代においては、仮想通貨・ブロックチェーン技術とFinTechの融合が期待されています。FinTechがこれから生み出していく新しいサービスと、それが金融業界に引き起こすイノベーションに期待しましょう。