画像生成AIでマーケティングが進化する!
ディープラーニングによる画像生成の歴史と活用事例

画像生成AIの進化により、マーケティングが新たな段階に進んでいます。これはChatGPTなどの生成AI技術の進歩が影響を及ぼしています。デザインや芸術などの分野で深く活用されている「画像生成AI」は、高精度の画像を短時間で生成できるため、広告やマーケティングの領域での新たな可能性を示しています。画像編集の経験がない人や時間を節約したいクリエイターの間でも、画像生成AIツールは一般的に使用されています。 

今後の私たちの生活やビジネスに大きな影響を与える画像生成AIの概要とその歴史、具体的な活用事例について見ていきましょう。 

画像生成AIとは

イギリスのAI開発企業「Stability AI」が画像生成AI「Stable Diffusion」を一般向けに公開したことで、画像生成AIへの世間の関心が高まりました。ここでは、画像生成AIについて改めて解説します。 

画像生成AIとは 

テキストでイメージを伝えるだけで自動的に画像やイラストを生成するAI技術が「画像生成AI」です。写真に限らず、手書き風やアメコミ風など、多種多様なスタイルの表現が可能です。そのため、画像生成AIは広範な分野で、作業補助ツールとして活用されています。

ディープラーニングと画像生成AI

ディープラーニングは機械学習の一種で、ニューラルネットワークの進化形です。この技術により、AIは大量のデータを自己解析し学習することが可能になり、その結果を利用してテキストから画像の特徴を抽出し、それに対応する画像を生成することができるようになりました。 

【関連記事】第3次AIブームの火付け役!ディープラーニングの仕組みと活用事例、そして課題とは

画像生成AIの仕組み 

画像生成AIのプロセスは学習と生成の2つのフェーズに分けられます。まず、大量の画像データを学習し、その後、ユーザーが入力したテキストを分析して画像の特徴を抽出します。そして、その特徴に基づいて新たな画像を生成します。 

画像生成AIのメリットとデメリット

画像生成AIの最大のメリットは、欲しい画像の特徴をテキスト入力するだけで、ごく短時間で質の高い画像が生成される点です。また非常に多様な表現力と創造力を有し、芸術家が時間と労力をかけて作成するような画像を高速かつ大量に生み出すことができます。

一方、AIが生成した画像が既存の作品と似ている場合、それが著作権侵害になる可能性があります。また、写真の中の人物の顔を別の人物の顔に置き換えるディープフェイクの作成が容易になり、虚偽の情報が広まりやすくなるという問題もあります。

画像生成AIが実用化されるまで 

近年、画像生成AIが急速に注目されるようになりました。その背景にはどのような技術進歩があったのでしょうか。 

画像ラベリング技術の進歩

画像生成AIの根幹になるのが画像ラベリング技術です。画像生成AIはニューラルネットワークを用いた高精度のラベリング技術によって得られた学習データを基に、テキストから画像への変換を行います。この技術の中心を成す「生成モデル」は、ラベリングされたデータの特徴を学習し、与えられたキーワードから統計的に新たなデータを生成することが可能です。

ブレイクスルーとなった「GAN」の登場

生成モデルは統計学で数十年前から使用されてきましたが、2014年にモントリオール大学の学生が提唱した「敵対的生成ネットワーク(GAN)」が画像生成AI開発のブレイクスルーを引き起こしました。GANは2つのニューラルネットワークを競わせることで、より高精度の生成が可能になることを証明しました。 

DALL・E 2やCraiyonなどの高性能な画像生成AI 

初期のGANにはまだ十分な性能はありませんでしたが、それでも多くの関心を集めました。その後、2022年にはDALL・EやCrayonなどの高性能な画像生成AIが発表され、利用されるようになり、AIによる画像生成が急速に広がりました。そのため、2022年は画像生成AIの革新の年とも言われています。 

【参考】ジェネレーティブAIによる画像生成の急速な普及と、見えてきた進化の向かう先 

画像生成AIの活用事例

画像生成AIは芸術やデザインなど多様な分野で幅広く活用されています。ここでは、その具体的な活用事例をいくつか紹介します。

Webデザインや商品写真の自動生成 

以前は人の手で作成していたWebサイトのイメージ画像や大量の商品写真の制作をAIに任せることで、時間とコストを大幅に節約することが可能になりました。元となる商品の画像データがあれば、AIはユーザーの要望に応じて適切な背景を生成し、組み合わせることができます。 

アート作品の自動生成 

2023年、「ソニー・ワールド・フォトグラフィー・アワード」のクリエイティブ部門で受賞した「Pseudomnesia:The Electrician」は、AIにより制作された作品であることが大きな話題になりました。この事例はAIによる画像生成の芸術的可能性を具体的に示し、AI時代におけるアートのあり方について新たな議論を巻き起こしました。AIを利用することで、特別なクリエイティブスキルを持たない人でも芸術的な作品を作ることが可能となり、芸術はより多くの人々に身近なものとなりました。

【参考】 AI生成の写真がコンテストで受賞するも制作者は賞を辞退。その理由とは? 

医療の現場での画像生成AI活用 

医療分野でもAIの活用が進行中です。放射線科医が行う読影業務などで画像診断AIが医師の負担軽減や診断精度の向上に寄与しています。さらに、画像生成AIを用いて患者の医療データに基づいた病理の進行を映像化し、治療方針のシミュレーションを行うという試みも始まっています。また、画像生成AIを用いることで医師の研修用の病理データを容易に生成することも可能です。 

画像生成AIのビジネスへの応用

すでに画像生成AIはビジネスへの応用が進んでます。具体的なビジネスへの応用事例を見ていきましょう。 

広告用画像の自動生成

Webサイトや雑誌、チラシなどに掲載するイメージ画像の生成が非常に容易になります。元となる画像さえあれば、撮影物や機器の準備、現地に赴いての撮影が不要となり、撮影にかかる手間暇が削減できます。画像生成を利用することで、あたかも実際に行って写真を撮ったかのような画像が得られます。

ゲーム開発の高速化 

画像生成AIは、ゲーム内の背景作成やキャラクターデザインにも活用されています。アメリカのゲーム会社Blizzard Entertainmentでは、独自に開発した画像生成ツール 「Blizzard Diffusion」を利用してゲーム開発を行っています。

【参考】 Blizzard Entertainment、社内開発ツールに全面的にAIを取り入れる計画 

試着イメージの生成による購入の後押し 

Googleが開発した画像生成AIを搭載したショッピングツールを利用すれば、自分の体形に近いモデルにオンライン上で試着させフィット感を確認することが可能です。まだアメリカのユーザー、それも女性のトップスにしか対応していませんが、オンラインショッピングの利便性を高めるものとして注目を集めています。

【参考】グーグルが生成AIを活用した“バーチャル試着”画像でオンラインショッピングを楽にする 

インテリア配置のイメージ生成 

インテリア業界でも画像生成AIの活用が進んでいます。ツールの利用で、部屋の写真画像に好みの家具を、パースや光の加減を考慮しながら自然なイメージで配置することができます。ツール上で多数の部屋の模様替えシミュレーションが可能となり、より満足度の高い購入体験を得ることができるでしょう。

【参考】 AI画像生成でインテリアのイメージを作ってみる。【Photoshopジェネレーティブ塗りつぶし】 

画像生成AIで私たちの生活が変わる

インターネットの普及により、私たちがオンライン上で過ごす時間が大幅に増えています。オンラインマーケットの拡大に伴い、ユーザーの興味を引くための広告やコンテンツがより短いサイクルで求められるようになっています。画像生成AIは、こうしたデジタルコンテンツの作成を効率化するものとして注目を集めており、その活用範囲は日々広がっています。倫理的な問題、技術的な課題、著作権に関する法的な整備など、まだ解決すべき問題は多々ありますが、今後のビジネスにおける重要な要素になることは間違いありません。

この記事を書いた人

ビジネス・テクノロジスト 貝田龍太