ディープラーニングによる画像処理技術の様々な可能性!
画像認識/画像生成AIの活用事例と課題 

AI技術は私たちの生活のあらゆる場面で活用されています。その中でも、スマートフォンのロック解除に使用される顔認証や、イラスト生成など画像に関するAI技術の利用は増えつつあります。AI技術を活用することで、テキストから画像を生成したり、画像から新たな画像を生成したりする作業が手軽に行えるようになります。さらに、画像から自動的にキャプションを生成する技術も利用が広がっています。これらを活用することで、Webサイト作成やアートなどのクリエイティブ分野の発展と作業効率化が期待されています。この記事では、画像認識/画像生成AIの概要と具体的な活用事例、そしてメリットと注意点について解説します。

画像認識AIと画像生成AI

ディープラーニング技術の進展により、AI技術の能力が大幅に進化しています。特にAIの画像生成技術は、近年その品質が飛躍的に向上したため、多くの注目を集めています。ここでは、画像に関連するAI技術として、画像認識と画像生成の概要と活用事例を紹介します。 

【関連記事】第3次AIブームの火付け役!ディープラーニングの仕組みと活用事例、そして課題とは

AIによる画像認識

AIの画像認識とは、画像に映るものを識別するAI技術の一つです。ディープラーニングとも呼ばれる深層学習の発展により、大量の画像データから形や色などの特徴を学習したAIの識別精度は格段に向上しました。 

画像認識技術による自動運転

自動車の自動運転技術にもAIの画像認識が使われています。車に搭載されたカメラやセンサーを用いて、信号機や標識の「物体検知」と他車や歩行者の「動体検知」を同時に行います。様々な状況の画像パターンを学習し、検知された情報を瞬時に判断する画像認識AIは、自動運転にとって欠かせない技術になっています。 

【参照】「自動運転のカギは画像認識にアリ。画像認識技術がもたらす安全便利な暮らし」 

画像認識技術による顔認識

AIが人の目・鼻・口などの位置や特徴を分析し、登録されたデータと一致するかを識別する技術が顔認識です。顔認識はスマートフォンなどの「顔認証ロック機能」で応用されています。画像だけではなく、ビデオ映像でも顔認識ができるため、不審者の侵入を防ぐ目的で建物の出入り口などで導入が進んでいます。 

【参照】「画像認識とは?AIを使った仕組みと最新の活用事例」 

AIによる画像生成

AIによる画像生成は、テキストによる指示を受けて画像や映像などを自動生成する技術です。AIは入力されたテキストとこれまでの学習データを参照し画像の特徴を検出します。そして、抽出した画像に求める特徴を取り入れて新たに画像を生成します。

【参照】「画像生成AIとは?|仕組みやおすすめサービスをわかりやすく解説」 

画像からのテキスト生成

最近では、画像からテキストを生成するソフトウェアの開発が進み、その応用が増えてきています。ここでは、AIによるテキスト生成の具体的な活用事例を見ていきましょう。 

画像の説明やキャプション生成

AIは入力された画像に基づいて説明文やキャプションを自動生成することが可能です。これは画像説明生成や画像キャプション生成とも呼ばれています。画像にキャプションを追加することにより、検索性を向上させるとともに、SEO対策の一環とすることも可能です。ただし、各画像に対して手動でキャプションを付けるのは手間がかかるため、AIによる自動生成が注目を集めています。 

【参照】 AIを使って画像にキャプションを付けてみよう 

画像の分類と整理

AIを活用した画像分類技術により、大量の画像データをカテゴリーに応じて自動的に分類・整理することができます。色や形状、その他の特徴を基に、AIは画像の分類を効率的に行います。 

【参照】「AI(ディープラーニング)による画像分類とその活用法【初級者向け】」 

画像ベースの情報検索

AIを用いて、入力された画像に関連する情報やデータを検索することも可能です。例えば、画像のメタデータや画像に映った地形などの地理的な情報、さらには人物や物体といった画像内の要素から、写真が撮影された時期や場所を推定することができます。 

【参照】「(画像検索)写真の人や場所が即座にわかるマル秘ワザ」 

文章画像の読み上げ

画像認識技術を活用すれば、画像内のテキストを読み取り、音声として読み上げることも可能です。この技術は、視覚障碍のある人々を支援するだけでなく、一般的な情報アクセスの便利さも向上させます。多くの企業がこの技術を用いたソフトウェアやサービスを提供しています。 

【参照】「【無料で画像を音声化】画像から文字を読み取り、音声を読み上げる機能の使い方【画像読み上げ】」 

画像から画像への変換

テキストから画像、画像からテキストだけではなく、画像から別の画像を生成するAIも増えています。ここでは、画像から画像を生成するAIの活用例を見ていきましょう。 

スタイル変換

AIを用いて、入力画像を異なるスタイルや画風で再描画する技術です。例えば、写真を油絵や水彩画風に変換したり、簡単なスケッチから詳細なイラストを生成したりすることができます。 

【参照】「Stable Diffusionで画像から画像を生成する方法」 

【参照】「簡単なスケッチから「Stable Diffusion」で思い通りの絵を描く手順を解説」 

画像修復

AIは、元データに損傷や欠損がある画像を修復することができます。AIは学習データと欠損部分の周囲の情報から補完を行います。欠損部分の大きさや内容によっては修復精度に差が出ますが、近年のAI技術の進化により、かなり自然な修復が可能になりました。

【参照】「AIによる画像修復」 

白黒画像のカラー化

白黒画像をカラーに変換する技術も、画像生成AIの活用例の一つです。AIは訓練データを基に、白黒画像の各ピクセルに対して適切な色を推測し付与します。これにより、古い写真や映像資料をカラー化し、現代の視覚体験に合わせて再現することができます。

画像の分析(セグメンテーション)

画像内の複数の要素をAIが個別に認識し、それぞれを分割する技術をセグメンテーション(領域分割)と呼びます。この技術によって、画像内の車や人などといった特定の物体の抽出が可能になりました。

【参照】「セマンティックセグメンテーションとは?AI開発におけるセグメンテーションの種類と活用事例」 

AIによる画像入力のメリットと注意点

AIによる画像入力を利用した画像生成やテキスト生成の活用領域は今後さらに広がると予想されていますが、それに伴って注意すべき点もあります。ここでは、画像AIのメリットと注意点を紹介します。 

効率化とコスト削減を実現

AIは適切な学習データが提供されることにより、画像のパターンを認識・分類し、情報の抽出や生成を行うことができます。一度指示を出せば、大量の画像データも自動的かつ効率的に処理します。学習を通じて人間と同等のレベルでの生成も可能で、その作業スピードは非常に高速です。AIを業務プロセスに組み込むことで、作業の効率化やコスト削減を実現できます。 

【参照】「AI導入のメリット、コスト、気にすべきデメリット」 

生成される画像の品質への課題

AIが生成する画像は、与えられた情報と学習データに基づいて推論されたものであり、必ずしも現実を忠実に再現するわけではありません。したがって、AIによって生成された画像を人間の作成した画像の代替として使用する際には、その内容が適切であるかどうかを確認する必要があります。また、AIに目指す通りの画像を生成させるためには、適切な指示やパラメータの設定が必要であり、これには経験や工夫が求められます。

【関連記事】AI時代に求められるデジタル人材とは?プロンプトエンジニアリングの重要性と学習法、そしてこれからの活躍の場

著作権や倫理的な問題

AIによる画像生成には著作権侵害や倫理的な問題も存在します。AIが生成した画像が著作権で保護されている画像に類似している場合、それは著作権侵害になる可能性があります。また、画像生成AIを悪用することでフェイク画像を生成することも可能になるため、ユーザーの倫理観が問われています。 

【参照】「「写真付きフェイクニュース」大量発生時代の幕開けか 静岡水害の“偽画像”問題を考える」 

画像認識/画像生成AIとの付き合い方

AIの画像認識や画像生成技術は、顔認証から写真データの加工まで、現在さまざまな場面で活用されています。これらの技術により、情報の検索性が高まり、画像から有用な情報を抽出することが可能になります。しかしながら、フェイク画像などの問題を引き起こす可能性のある画像生成の悪用や、生成画像による著作権侵害などの問題も存在します。そのため、すべてをAIに任せるのではなく、最終的には人の目で判断することが重要です。私たちは画像認識や画像生成技術のメリットだけでなく、問題点も理解した上で利用することが求められます。 

この記事を書いた人

ビジネス・テクノロジスト 貝田龍太